Wii『ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III』は2011年9月15日に発売した。
公式サイトまだあった。
FCのドラクエ1,2,3と、SFCのドラクエ1・2とドラクエ3の5タイトルのセット。一時期値上がりしていたが、今は普通くらいの値段で落ち着いている。
そりゃまあ、いまさらWiiでやるくらいなら当時のカセット買ってきたほうがいいかもね…
公式サイトにも書いてあるが、これら復刻作品は中断セーブの仕様がわかりにくく、うっかりデータの巻き戻りが起きてしまう問題あり。
またゲームには「ファミコン神拳奥義大全書復刻の巻」が同梱されている。堀井雄二の新しいインタビューと共に過去の書籍の一部が復刻されたものとなっている。
それと初回生産分には「実物大ちいさなメダル」が付属。箱には特に初回分と表記されていないので、欲しい人は注意。
だが今回注目したいのは、ゲーム部分でも同梱物でもない。
ゲームのディスクに「当時のお宝資料」という画像が収録されているのだ。
この中には制作資料として書かれた手書きのものが多く含まれており、どうもこれが他の書籍等に収録された様子がない。
思うに、当時やっていた25周年の「ドラゴンクエスト展」に同じものが展示されていたのではないかと個人的に推測している。
私はこの25周年のほうは見ていないのだが、5年後の30周年の「ドラゴンクエストミュージアム」で、たぶん同じものを一部見た記憶があるためだ…
ただ撮影禁止だったはずで、私も正確には記憶してないし、ネット上にもほとんど記録が残ってないのだが。だから、このWii版以外のどこにも公開されてないものも、あるかもしれない。
とにかく、このWii版に収録されているものは特別なイベントでもない限り見る機会はなく、非常に貴重な資料なのである。
本記事はその内容を一覧で記載する。全ページのレビューになりますが、中身を全部貼るわけにはいかないので、より詳細を知りたい方は、ソフトを実際に参照してみてください。
各資料には少々の解説が付属。資料の制作者、所有者は未記載。手書き資料は堀井雄二の手によるものが多いように見えるが、全部がそうでもないようだ。詳細は不明。
ドラクエI:全14ページ
01/14
1986年の発売当時に配布されたらしいパンフレットの表紙。堀井雄二ら主要スタッフの名が掲載されており、解説は「この頃はまだ ゲームに作家性を出すのは、珍しいことであった。」とのこと。
02/14
パンフレット中面。アレフガルド全図。
端っこに紫髪のローラ姫の顔が掲載されている。当時でもこのパンフレットくらいにしか掲載されていないはず。
03/14
パンフレット裏面。武器を買うとか、「地下迷宮(ダンジョン)」でたいまつを使うとか、ちょっとした攻略が掲載されている。
こっちにも同じローラ姫の顔。
あとラスボスの原画が載ってるぞ。
04/14
解説では堀井雄二が書いた「オープニングプロット」となっているが、説明書のストーリーとほぼ同一の文章。偉大なる予言者ムツヘタなどが既に書かれている。
少しだけ説明書と違い、「荒廃が地表に吹きあれ」という文があったり、アレフガルドという名前がなかったり、説明書ではラルス1世,16世になっているところが「サウト1世」「16世」になっているなど、ちょっとした変更が行われたことがわかる。
05/14
ワールドマップの草案。ほぼ製品と同じ配置の地形が描かれている。
06/14
堀井雄二の描いたスライムのラフ画像と、鳥山明デザインのスライム(Wii版発売当時のCG絵)の比較。
堀井スライム、今では紹介される機会も多く、すっかり有名ですね。
07/14
画面上でのモンスターの大きさの指定図。ただしスライムが6マスなど、実際のゲームと違うものもある。
ゲームと名前の違うモンスターもおり、比較的初期の資料だろうか。
おそらくドラキーと思われるモンスターの名前、判読が難しいが「吸血蛾」と書いてあるかと思う。ドラキーは蛾のモンスターだったという話は、何となく伝わってきてる。また「のろいの騎士」という名前もあるが鎧の騎士だろうか。
解説に「なんとあのキャラクターを大きさの参考例として書き込んでいる」とあるが、資料中にはモロに名前が書いてあるわよ。
余談だが本作の移植には任天堂も参加している。おそらくWii用のバーチャルコンソールと同じプログラムで動いてるのだろう。
08/14
手書きによる敵モンスターのパラメータ表。序盤範囲のもので、製品とは少し違うようだ。
重大な情報として、メイジドラキーの位置にいるモンスターが「タホドラキー」になっている。また製品版ではおおさそりがいそうな位置に「がいこつ」がリストアップされている。
なんでもドラクエ1の「がいこつ」は内部データと出現時期がズレてて妙に強いらしいのだが、この表はその経緯と関係があるかもしれない…
09/14
ラダトーム城のマップ。堀井氏がtwitterで公開した資料と一致。
せっかくなので、はじめてドラゴンクエストを作ったときの資料を公開しますね。まずマップを描いて、その上にトレーシングペーパーを貼り、人を配置。台詞をあてていました。下手な字で、すいません💦 pic.twitter.com/lbvlOARBu1
— 堀井雄二 (@YujiHorii) 2016年1月15日
ツイートの2枚目、トレーシングペーパーを重ねた状態をスキャンしたものが収録されている。
10/14
ラダトーム玉座のマップ。カギ、宝箱、ドアは初回しか存在しない仕様が手書きの文で説明されている。
11/14
手書きによるラダトーム王様の初回のセリフ。
12/14
ローラ姫救出時のセリフ。「そんな ひどい……。」でループするフローチャートになっている。
13/14
「つかうカタカナ」。ドラクエ1に使えるカタカナは仕様書の段階で厳選されていたことがわかる。
なお解説は「ドラゴンクエストのカートリッジ容量は、わずか64キロバイト。」としているが、使える文字が増えたのはROM容量よりもファミコンのメモリの影響のほうが大きいようだ。
14/14
「復活の呪文システムの草案」。実装されたものと違う仕様で、1,2文字目がEXPなど単純に対応されている。
実際は「さらに複雑な仕組みで作られたが、」だそうだ。
ドラクエII:全14ページ
01/14
発売当時のパンフレット表紙。1とだいたい同じレイアウト。
02/14
パンフレット中面の世界地図。
03/14
パンフレット裏面。前作より増えたボリュームとか、序盤の進め方とかが書いてある。
04/14
主人公3人の「キャラクターデザイン草案」。堀井雄二が描いたものと思われる。
05/14
ドラクエ2の「モンスターデザインの草案」。
「バブルスライム」、「スラグ」(おおなめくじ)、「マミー」の3種。
これについては以前、アークデーモンの記事でも述べたが、同梱のファミコン神拳の記述、ラフの画風から推測して、ドラクエ2のモンスターラフは宮岡寛が描いたものと思われる(資料中に明記はない)。
ドラクエ2のモンスター原案は堀井雄二のものと画風、筆跡が違っている。そして、1のスライムと違い、かなり原型を残して鳥山デザインに受け継がれていることが確認できる。
06/14
やはり宮岡寛によると思われる「ミミック」(ドラクエ2未登場)、「ドラゴンフライ」、「オーク オークキング」のラフ。
オークは「イノシシとブタと人間をかけあわせたような悪魔。」との指定。悪魔系のつもりだったんだ…
07/14
「ジャイアントA」と「ジャイアントB」のラフ。
ジャイアントAはファイア、フロスト、ストーム、トルネードの4種族の精霊型巨人で、
製品ではフレイムとブリザードになったもの。
ジャイアントBはサイクロプス、ギガンテスで、その名前も既にラフに書いてある。
08/14
「グレーターデーモン」「レッサーデーモン」のラフ。アークデーモンとシルバーデビルの原型。
堀井雄二の描いたアークデーモンの原型とされる「グレターデーモン」とは異なるデザインで、明らかにドラクエ2のアークデーモンの原型になっているのはこいつだ。
「グレターデーモン」の絵は本作に収録されていないが、これが何なのかは実際わからない…
堀井さんか宮岡さんに聞ける機会がありましたら聞いてみてください。
09/14
ワールドマップ草案。地形までは詳しく描かれていない。
デルコンダルが「ガルニア」という名前になってる。
10/14
方眼紙に描かれた「コマンドウィンドウの仕様書」。ウインドウの大きさも文字の配置もマス目で厳密に指定されている。
11/14
ローレシア城のマップ。
12/14
武器屋のセリフのフローチャート。ゴールドカードの所持による分岐が書いてある。
13/14
教会のセリフのフローチャート。
14/14
サマルが病気になる没イベントのアイデア草案。SFCで追加されたやつがファミコン時代から原案があったことの証明となる資料。
ドラクエIII:全15ページ
01/15
パンフレット表紙。前2作よりスタッフの名前が小さくなってる。
02/15
パンフレット中面の世界地図。
03/15
パンフレット裏面。前2作と違いドラクエ3の画面写真や解説はなく、エニックスのロゴと他タイトルの宣伝、レコードの告知などが載ってるのみ。
04/15
なぜか北米版「DRAGON WARRIOR III」のパッケージイラストが収録されている。
05/15
企画書の表紙だけ。やはり手書き。
06/15
企画意図を記した企画書の序文。当時の堀井雄二の視点でRPGが受け入れられていった現状と、今後の高度化について書いている。
「完成・発売は、62年12月の予定です。」とのこと。実際は昭和63年2月発売ですね。
07/15
「ドラゴンクエストIIIの世界観」。
魔王を倒した後でアレフガルドに行く具体的な展開が書いてある。
「闇につつまれていた頃のアレフガルド」「アレフガルドはまだできはじめたばかりで」、外側の大地はまだ存在しないイメージだったらしい。
08/15
「各種アイディアメモ」が箇条書きでたくさん書いてある。変身魔法、幽霊船など、多くのアイデアが採用されていることがわかるが、逃げると5歩下がるなど、たまに採用していない案もある。
09/15
マップパーツの図。
海岸線のパターンが前作より増えていて、河が表現できるようになることが書いてある。
10/15
アリアハン城下町のマップ。「ムー城」と書いてあり、完全にムー大陸モチーフだったことが伺える。
11/15
ダーマ神殿のセリフ。転職可能レベルが15となっている。
12/15
幽霊船のマップ。人物に世界全体での通し番号が振られていたようで、船内のガイコツたちに790から798まで与えられているのが確認できる。
13/15
一部のモンスターのパラメータ表。製品版とデータは異なるようだ。
載っているのはマタンゴ、ベホマスライム、バンパイア、ひとくいが、ハンターフライ(狩人バエ)、ヘルハウンド。
「ヘルハウンド」なるものはドラクエ3におらず、製品の何に対応しているかは不明。
記載順から判断するとバリイドドッグでもデスジャッカルでもなく、さまようよろいのようだが…
呪文耐性も書かれており、設定されているのはギラ、ヒャド、バギ、ライデイン、ザラキ、メガンテ、ラリホー、マホト、ルカナン、マヌーサ、マホトラ、メダパニ、ピオリム、ザメハとなっている。
「ピオリム」はボミオスの耐性として、「ザメハ」は製品版のニフラム?
メラギライオが全部炎属性なのは決まっていたのかな?
14/15
武器の仕様書の一部。手書きではあるが、「データの書き方もシステム化され」と解説されており、攻略本のようにアイテムの種別や装備可能職が見やすいようにレイアウトされていたことがわかる。
そして超レアアイテム「さざなみのつえ」がリストアップされている。効果は「カウンターマジック」となっており、マホカンタの名前がまだなかったようだ。
15/15
堀井雄二からスタッフに送られたメッセージ。「途中ですが、できてるぶんだけ送ります」とFAXに添えられていたものらしい。
堀井さんの自画像つきコメントも。
SFCドラクエI・II:全7ページ
SFC版については、手書き資料は収録されていない。もうこの頃は手書きで制作してないと思う。
01/07
店頭用ポスター。パッケージイラストと同じ絵。
02/07
斜め向きで剣を構えたI勇者のイラスト。「公式ガイドブック用に描き起こされた」とのこと。以下、I・IIのものは解説によると全て公式ガイド用の画像のようだ。
03/07
ローラ姫の正面立ち絵。
04/07
ローレシアの王子、サマルトリアの王子、ムーンブルクの王女の立ち絵。
05/07
ラルス16世と「サマルトリアの王子の妹君」。公式ガイド読んだことないから見た記憶がない絵だ…
06/07
「公式ガイドブックに掲載したドラゴンクエストIの世界地図」。
07/07
IIの世界地図。解説に書いてないけどこれも公式ガイド用だろう。
SFCドラクエIII:全11ページ
01/11
店頭ポスター。パッケージイラストに「SFC究極のドラクエ。」という強烈なキャッチコピー。
02/11
男女の勇者のイラスト。箱の裏などに掲載されている立ち絵の原画のスキャンと思われる。
03/11
戦士男女のイラスト。
04/11
武闘家男女のイラスト。
05/11
魔法使い男女のイラスト。
06/11
僧侶男女のイラスト。
07/11
商人男女のイラスト。
08/11
遊び人男女のイラスト。
09/11
盗賊男女のイラスト。
10/11
賢者男女のイラスト。
11/11
「公式ガイドブックに掲載された世界地図」。
「当時はアレフガルドの世界が明かされておらず」とあるが、SFC版の公式ガイドでも掲載してなかったのね。
その他
特典映像としてドラクエXの映像。Wiiでも動いたんだっけか…
あと本作にはゲームとは別のOP映像があり、神風動画の作らしい。
下記ツイートで紹介しているドムドーラの地図は収録されていなかった。
いよいよ発売が迫った #DQトレジャーズ 💎
— ドラゴンクエスト宣伝担当 (@DQ_PR) 2022年12月5日
発売を記念して本日から3日間、社内の宝物庫から「DQ」シリーズのリアルなお宝をご紹介していきます✨
本日はシリーズ生みの親・堀井雄二さんが作成した『DQI』のとある場所の仕様書📖
足下を調べると、そこには伝説のお宝が……⁉ pic.twitter.com/iDAxTe3wtA
まだこのような資料を公開する機会はあるのかもしれない。