神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

ポケモンが出るまでのゲームボーイ覚書

ゲームボーイ持ってなかったのであまり思い入れがない。

スクウェアゲームボーイの発売を他社より早く知っていたらしい。FF2の完成後から発売前、1988年11月には既に魔界塔士サガの企画も始まっていたという話。

1989.4 ゲームボーイ発売

1989.6 テトリスゲームボーイ版が発売、大ヒットした。
テトリスのブーム自体は既に前年からファミコンとアーケードで始まっていた。

それからポケットモンスターまでの7年…
ポケモン登場前のゲームボーイ、ハードとしての寿命に向かい、少しずつ市場を縮小していく…というイメージではあるのだが、数字としては知ってるわけではない。

任天堂タイトルの発売数

発売数
1989 7
1990 5
1991 2
1992 6
1993 2
1994 3
1995 4
1996 7
1997 3
1998 5
1999 4
2000 12
2001 5

任天堂のサイトの表で数えた。
ゲームボーイカラーも含めた本数となるが、任天堂だけに限って数えた場合、ポケモンが出る前どころか91年の時点でも本数は妙に少ない。ゲームボーイウォーズヨッシーのたまごだけ。
ポケモン発売後もそれほど増やしてはいない。

他社の本数はちょっと調べる気がないが、こと任天堂に関しては売れ行きを見ているのかいないのか、マイペースに出していた。
新作を充実させるのは他社に任せれば十分であり、定番ソフトに注力していたのではないだろうかと想像している。
メトロイド2をかなり後に新品で買った記憶があり、任天堂は90年代後半くらいまで古いソフトも再販していたはずである。

1993 ゲームボーイの定価12500円→9800円に値下げ

1994 定価8000円に。

参考:N.O.Mのゲームボーイ特集(アーカイブ)

ゲームボーイ本体はずっとそのままだったわけではなく、値下げして売り続けていた。まだ後継機を考える時期ではなかったのだろうということになる。

1994.6 スーパーゲームボーイ発売

1994.11 ゲームボーイブロス発売。単なるカラバリであり値段は通常ゲームボーイと同じ。CMには木村拓哉を起用。

94年以後はゲームボーイの新作はスーパーファミコン向けの新作ということにもなる。もうプレイステーションセガサターンが見えている時期だったが、任天堂はまだまだゲームボーイをやっていくつもりだった。

1996.2 ポケットモンスター発売
スーパーゲームボーイからそれなりに期間が開いている。ここからゲームボーイは想定外の復活を遂げるわけだが、スーパーゲームボーイもまだ2年目だし、思ったよりは元気だった気もしてくるな?
通信機能を特徴としていたポケモンも、当然スーパーゲームボーイに対応したソフトだった。

1996.6 ゲームボーイポケット発売
対応ソフトは初期型と全く同じ仕様の白黒ゲームボーイだが、小型化し定価も下がった。

ゲームボーイポケット横井軍平氏が退社(8月)直前にわずか3ヵ月で開発したものだというが、生産は別で、それが96年のいつからいつなのかは明記がない。そしてゲームボーイポケモン発売直前には販売終了の判断間際までは行ってたらしい。
任天堂はリリース前のポケモンを結構推していたらしいという証言と共に、ここに書いてある。
たぶん、ゲームボーイポケットポケモンの発売が見えてきてる時期くらいに開発してる?
本当の発売直後はそれほどブームではなかったとも言われるポケモンだが、任天堂にとってはある程度の期待作だったようだ。狙ったように数か月後の盛り上がりに合わせて発売したゲームボーイポケットの開発スタート、因果関係がはっきりしないところである。タイミングが異様に合っていたことだけは確かだ…

その後は、まあいいや。
ゲームボーイライトスーパーゲームボーイ2、ゲームボーイカラーと次々とポケモンブームに合わせた新機種が登場していくのであり、特に難しいことはない。

ウィザードリィ版権問題・たぶん解決

2023年9月16日、突如としてSteamで『ウィザードリィ』1作目のリメイク『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』(日本版タイトル:ウィザードリィ 狂王の試練場)がアーリーアクセス版で配信された。

これまで、ウィザードリィには版権問題があることが知られていた。
現在ウィザードリィを販売している日本のドリコム社が所有しているのはWiz6以降の権利のみ。
5以前の権利は別の誰かが所有しており、この協力がなければ初期作品の移植やリメイク等は不可能と考えられていた。
だが、これが誰なのかは全くわかっていなかった。

Steamで配信されているリメイク版の権利表記はこう。

開発・販売を手掛けるDigital Eclipseと、版権を持つドリコム 。そしてもう一つ「SirTech Entertainment Corp.」から「狂王の試練場」のライセンスを与えられている、と書いてある。かつてWizardryを販売していたSir-Tech Software, Inc(サーテック)と関係がありそうだ。

mobbygamesによるとこのSirTech Entertainmentは2022年に設立されたもので、創業者はかつてのサーテック創業者のRobert Sirotek氏の会社とのことだ。
この会社がおそらくWiz1から5までの権利を所有しているのだろうと考えられた。これもドリコムの決算資料から確認が取れた。

決算説明資料 | 株式会社ドリコム

[PDF] 2023.10.26 2024年3月期 第2四半期 ファクトシート

17ページに「Wizardry1-5の著作権はSirtech Entertainment Corp.が保有しており許諾の元に開発されております」と書いてある。

いろいろあったけど、サーテック後継会社に権利は引き継がれたようで、連絡も取れる会社のようでリメイクも制作可能になった。めでたしめでたし。

ここに至るまでの経緯は多くが謎のままだ…

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うさこちゃん(ミッフィー)を発刊時期と合わせて語る

私はミッフィーが好きで、いつも身の回りの全てをミッフィーで固めたいと思っているのだが、ストーリー部分については私も最近までちゃんと追っていなかった。

世間ではミッフィーのグッズは知られていても、「うさこちゃん」と「ミッフィー」の関係さえあやふやだということも知っている。これは良くないと思う。

うさこちゃんミッフィーとナインチェ

ミッフィーの原作と言えるものは作者のディック・ブルーナによる絵本シリーズだ。これが福音館書店による日本展開ではうさこちゃんというタイトルになっている。
ミッフィー(miffy)というのは英語版の名前。
原語のオランダ語ではナインチェ(nijntje)で、これが現地で「ウサちゃん」みたいなニュアンスの名前らしい。

現在は多くの国でmiffyに翻訳された絵本が出版されており、以前は独自の訳をしていた国もmiffyに統一されていったらしいのだが、日本では「うさこちゃん」を維持している。
日本版と英語版は同年に翻訳が始まっているため、日本では英語版に合わせるという流れがなかったのだ。
しかし「ミッフィー」の絵本を見た記憶がある人も多いだろう。

ミッフィーと「うさこちゃん」の関係について、時系列順に起きたことを並べるとこう。(参考資料:国会図書館サーチなど)

だから「うさこちゃん」とミッフィーは同一人物だ。現在キャラクター名として使われているのは圧倒的にミッフィーなのだが、ミッフィーの絵本は現在は見かけることは少ない。よって絵本の内容について論じる場合は基本的に「うさこちゃん」になる。

真のミッフィーファンなどと大層な記事名が気になるが、miffyという英訳の経緯は、こちらの記事で講談社の担当から紹介してもらったという参考文献に詳しい。だがこれを読んでいるはずの講談社の担当だが詳細はわからない、と言っておる。
これはmiffyになった経緯自体はわかっているが、日本版までミッフィーになっていった経緯が講談社でも不明ということだろうかと。

というわけで本記事の参考文献:森本俊司『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』 (文春文庫)。
発刊順やメルシス社の設立経緯、森本さんがブルーナから聞いた制作秘話など、全面的に参考にしました。

発行順

うさこちゃんシリーズの本には巻数が書かれていない。翻訳順も発行順と一致していない。特に福音館書店のサイトについては何がなんだかわからない状態になっている。
これは図書館でも確実にぐちゃぐちゃの順番になっている。特に背表紙の色は発刊順と関係ないうえ、発行時期によって変わっているものもあるようだ。これが丁寧に色順に並べられていたりするのだが全然発行順と違うので惑わされないように。
また図書館は全巻揃っているものでも途中の巻が書庫に入っている確率がきわめて高く、講談社ミッフィーうさこちゃんが混在しているケースも多々見られる。

dickbruna.jpの絵本リストは原書の発行順のようだ。ここの並び順を参考にするといい。

多少は前後してもいいが、基本的に原語での発刊順に読んでいったほうがわかりやすいと思われる。「うさこちゃん」はどこから読んでもいいシリーズのように見えるが、半世紀も続いたシリーズなのだ。ストーリー性があり、時系列がある。
実は少しずつ時間経過も起きており、舞台も現代オランダだが、文明レベルも変わっている。初期は汽車に乗ったり父さんの手押し車(bolderkarっていうやつらしい)で移動したりしているが、やがてマイカーに乗り換え、最後のほうはコードレス電話も出てくるほどの時代になる。基本的に発行時期のオランダの暮らしを反映していると考えられる。

何よりミッフィーも成長している。

ミッフィーは、絵本の読者とおなじくらいの年齢、0才から6才くらいの女の子です。

と書いてある通り、最初の巻の「ちいさなうさこちゃん」では生まれた直後の0歳だが、やがて一人で着替えができるようになり、読み書きができるようになり、お出かけができるようになる。
ゆるやかだが発刊順に成長しているのであり、時系列がシャッフルされているということはない。シャッフルされているのは本棚のほうだ。登場人物も少しずつ増えていき人間関係も広がりを見せる。

1963年 初期4作

オランダ語版「ちいさなうさこちゃん」「うさこちゃんとどうぶつえん」の原書は1955年に発刊されたものだが、1963年に改訂されて現在のデザインになった。
日本で翻訳されているのもこれ以降の版。

1 ちいさな うさこちゃん 1963年(日本版1964年)

2 うさこちゃんと どうぶつえん 1963(1964)

3 ゆきのひの うさこちゃん 1963(1964)

4 うさこちゃんと うみ 1963(1964)

※絵本には巻数はついていないので、こちらで刊行順に振らせてもらった。

1963年の改訂に合わせて「ゆきのひのうさこちゃん」「うさこちゃんとうみ」の2冊が追加され、4冊合わせて発刊された。これが初期4作品。

絵柄も古く、この頃は耳がとんがってるのが特徴だ。

1955年版も近年は見かける機会が増えた。

どの巻のストーリーも福音館書店のサイトにだいたい6割くらい書いてあるのだが、この1冊目はミッフィー/うさこちゃんの誕生の話となっている。
かわいい家に住んでいた2匹のうさぎ、ふわふわさんとふわおくさん。ある晩、庭に天使が降りてきてふわおくさんが子を授かることを伝えられる。
あかちゃんは「うさこちゃん」と名付けられて、動物たちもお祝いに駆けつける。

受胎告知を経て誕生するうさこちゃん、そして祝福する動物たち。非常にキリスト教的な題材を描いており、内容もファンタジックで、牛もしゃべる。だがこの1冊目は、実はシリーズの中では異質な内容となっている
うさこちゃんシリーズの舞台となる世界、住人がウサギである以外はほとんど現代オランダと同じ国で、起きる出来事もひたすら現実的な題材を扱っている。うさこちゃんシリーズは、うさこちゃんの平凡な日常を淡々と描くものであり、このように天使が出てくるエピソードは他にない。
そして、この第1巻ではうさこちゃんは寝ただけだ。特に何もしていない。うさこちゃんはまだ幼い普通の女の子であり、特殊な能力は持っていない。クマのボリスであれば、ときには空を飛んだりパイロットになったりするが、うさこちゃんにはそこまでの力はない。後期の巻では魔法使いになったりお菓子の国に住んだり女王になっているが、これらは夢だったり想像の世界だったりということを作中ではっきり説明している。
うさこちゃんミッフィーは全て現実的なお話。
そのような平凡な日常の始まりと最もかけ離れているのがこの第1巻だ。この巻はミッフィーうさこちゃんの長い物語のプロローグに過ぎない。

日常から外れた題材が出てくるのは初期シリーズでもこの1冊だけで、あとの3冊は日常作品のような題材になっている。父さんと動物園に行ったり、雪の日に遊んだり、父さんと海に行ったり。そこで大きな事件が起きることもなく、小さな出来事が起きていく。そしてうさこちゃんの絵がひたすらかわいい。
しかしこの初期4冊は、まだ動物がしゃべる場面が残っていて、完全な日常ものに振り切れていなかった。これより後の巻では人型の動物しかしゃべらなくなる。
また1冊の内容がだいたい1日で終わるスタイルが、この初期に完成している。

海では自分で水着に着替えるうさこちゃんに父さんが驚いている。最初は赤ちゃんだったのに、初期の段階でうさこちゃんも成長しているのだ。たぶんこの時期が2歳とか3歳とか、幼稚園にもいかないくらいの年代。
ところでパンツしかはいてないうさこちゃんという衝撃的なビジュアルだが、60年代のオランダで2歳とかの話だということでよろしくお願いします。

1970年代 シリーズ化の開始

63年に4冊出したのち、ミッフィーの絵本はしばし休眠していた。ブルーナも忙しかった時期があったり、またボリスやポピー(うたこさん)などの別の絵本を出していたりで、ミッフィーだけを追うと発刊までに年月が開いていることもよくある。
さらにこの70年代の作だが、日本版は全て80年代以降に発刊されており、結構空白期間が長い。「うさこちゃん」は幼年向け絵本の古典みたいに見えるが、日本では世代によっては全く見てない可能性もある。

なお、ブルーナ作品の権利を管理しているメルシス社が設立されたのは1971年。

5 うさこちゃん ひこうきにのる 1970(1982)

6 うさこちゃんの たんじょうび 1970(1982)

7 うさこちゃんと ゆうえんち 1975(1982)

8 うさこちゃんの にゅういん 1975(1982)

9 うさこちゃんの ゆめ 1979(2010)

※「ゆうえんち」、原語ではspeeltuinとなっており、アスレチックのようなものだ。出てくる遊具がブランコ、吊り輪、鉄棒、滑り台、トランポリンと、日本版のタイトルと印象が異なる内容になっている。

再始動第1作である「うさこちゃんひこうきにのる」は、庭で遊んでいたら突然やってきた「おじさん」(血縁ではないらしいが関係不明)の飛行機に乗って森や海を見に行く話だ。飛行機が着陸できる庭があるのか。そんな気軽に子供を乗せて大丈夫なのか。まあまあファンタジーな話かもしれない。
おじさんの乗ってる飛行機がほぼ全部同じ絵のコピーなのもちょっと気になる。

続く「うさこちゃんのたんじょうび」はおじいちゃんとおばあちゃんが初登場する重要なエピソードで、先に読んでおかないとストーリーの理解にやや問題を生じると言えるだろう。作品の長期化に伴い、人間関係の広がりも始まりつつある。プレゼントにもらったクマのぬいぐるみも後の巻で再登場する。

この時期には入院もしている。医者を呼んだらすぐ入院が決まり、注射を打つとすぐ眠りについて手術シーンのようなものはカットされているのだが、どうも結構深刻な状態だったのだろうか…?
生まれたときに足が悪く手術を行ったというブルーナの生い立ちと重なるエピソード。

うさこちゃんのゆめ」は一切の文字が存在しない異端作で、雲に乗って夜空を飛んでいるうさこちゃん。やがて茶色のうさぎが飛んできて、一緒に星や月で遊び、そして二人で寝てしまうという絵物語が展開する。
まだ耳が少し尖っているが、きわめて現在のバランスに近づいていることがわかるだろう。

上で書いた通り、「うさこちゃん」の翻訳は93年までは福音館書店が受け持っていたのだが、どういうわけかこの巻だけ81年に講談社から出ている。福音館書店から出たのは2010年。
講談社の「ミッフィーのゆめ」では舟崎靖子による文が追加されており、茶色いやつは「ぼく」と名乗っている。

この子は後の巻に出てくる茶色のうさぎの「メラニー」(にーなちゃん)ではないそうだ。森本俊司さんもブルーナに直接聞いたと著書で証言している。

こちら2022年の商品でも、メラニーではなく「おともだち」になっている。

星空とセットになってる茶色のうさぎは、メラニーではない。覚えておこう。

1980年代 うさこちゃん4歳くらいに成長

10 うさこちゃんとじてんしゃ 1982(1984)

11 うさこちゃん がっこうへいく 1984(1985)

12 うさこちゃん おとまりにいく 1988(1993)

13 うさこちゃんのおじいちゃんとおばあちゃん 1988(1993)

この84年の訳以降、福音館書店の訳が石井桃子さんから松岡享子さんに交代している。また70年代に比べれば日本版の発刊ラグが減っているが、それでも5年くらい空いていたりはする。

少し成長してきたうさこちゃんだが、自転車にはまだ乗ることができない。「うさこちゃんとじてんしゃ」は、うさこちゃんが大きくなったら自転車に乗りたいという想像だけで話が進む絵本になっている。「劇場版ミッフィー どうぶつえんで宝さがし」でも三輪車に乗っていて、自転車に乗るにはまだ早い年齢のようだ。
なお坂の上に住むおばさんの「ふんわりふわこさん」(ふわこおばさん)が初登場するのもこの巻。

学校にも通い始めるが、まだ字も書けないので線を書く練習からしている。
オランダの教育制度は日本と違い、4歳から小学校に入れるのだ。日本人の知識だけでは違和感のあるエピソードになっているが、こうやってちょっとした文化の違いを知るきっかけになるだろう。
次の「おとまりにいく」では手紙も読んでいるし、一人でバスにも乗る。
おばあちゃんに編み物を教わったりもするし、一人で家に帰れるようになっていた。見た目ではよくわからないが、うさこちゃんは確実に成長していることが順番に読むとわかってくる。

1990年代 講談社翻訳期

14 うさこちゃんのさがしもの 1991(2008)

15 うさこちゃんのおうち 1991(2010)

16 ふわこおばさんのぱーてぃー 1992(2011)

17 うさこちゃんのてんと 1995(2008)

18 うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん 1996(2008)

19 うさこちゃんびじゅつかんへいく 1997(2008)

20 うさこちゃんとにーなちゃん 1999(2010)

21 うさこちゃん おばけになる 2001(2010)

22 うさこちゃん まほうをつかう 2001(2011)

23 うさこちゃんのだんす 2002(2009)

24 うさこちゃんのてがみ 2003(2009)

この90年代の11冊は94年以降に講談社から出ていた時期で、福音館書店からは遅れて再翻訳されたものだ。講談社が「ミッフィー」を出している間は福音館書店からの「うさこちゃん」の翻訳は止まっていた。
また、原語の刊行数も80年代までと比べて多くなっている。

miffy.com(英語)に書いてところによると、フランス語、アフリカーンス語も違う名前だったのが96年にmiffyに統一されているんだそうだ。日本版もその流れにいたのだろうか?

キャラクターはさらに増加。「うさこちゃんのさがしもの」では以前もらったクマのぬいぐるみがなくなり、おとうさん、ともだち、おじいちゃん、おばあちゃん、ふわこおばさんと多数のキャラクターが登場し、行動半径もどんどん広がっていることがわかる。
うさこちゃん おばけになる」では友達2人に「あーは」と「うぃるめいん」という名前がつけられた。どっちも女性の名前のようだ。

森本俊司さんによると「ふわこおばさんのぱーてぃー」はメルシス社の創立20周年のパーティに合わせて描いた1冊らしい。他作品のキャラクターのばーばら、ぼりす、うたこさん、ふがこさんがふわこおばさんの家に集結するクロスオーバーとなっている。絵の枚数も他の本より多い。

※今回読んだ福音館書店の版では、ふがこさん(グランティ)がうたこさん(ポピー)のいとこになっていたが、これはミスで、小さいふがこさんはうたこさんの姪。福音館書店の「うたこさん」シリーズの古い版でも「いとこ」になっているが、新しいものでは改版されていることを確認した。
「ふわこおばさんのぱーてぃー」も改版されているかは不明。

この後の「びじゅつかんへいく」でクマの石像を見て本物のクマだ!とうさこちゃんが騒いでいるのだが、住民の大半がうさぎの国でボリスは一体どういう存在なのだろう。

いなくなるキャラクターも出てくる。表紙がもうネタバレしているがおばあちゃんがある朝急に亡くなって、お葬式をするのだ。オランダは土葬があるということもわかる。
森にお墓参りに行くうさこちゃんで終わっている。

茶色いうさぎのにーなちゃん(メラニー)も初登場する。講談社の「メラニー」のほうが先に出た訳なので、にーなちゃんのほうが馴染みが薄い感じがする。
にーなちゃんは外国に住む文通相手。異国の友人というシチュエーションを空港にお迎えに行くところから丁寧に描いている。アニメ等ではボリスらと共に一緒に出てくるし、色違いのため商品展開には恵まれているが、実は絵本ではこの一冊にしか出ない。

うさこちゃんのだんす」もキャラクターがたくさん出てくるというか、ほぼ踊るキャラクターたちの絵だけで構成されている特殊な一冊。いろんなキャラクターを描きたかったのだろうという気がする。
先生、ふわとうさんと、ふわかあさん。ふわじいちゃんとふわばあちゃん。ふわこおばさん、30年ぶりに登場しレアキャラ扱いになってるパイロットのおじさん、ぼりすとばーばら、うたこさんとふがこさん、そして今まで見たことのない「ひつじさん」と、くんくん(スナッフィー)。
スナッフィーも元はブルーナの別の絵本のキャラクターで、アニメ等では見かけるが絵本ではこの話にしか出ない。
おばあちゃんが普通に生きてるのだが、時系列順ではなかったのだろうか。

ボリスなど他キャラクターの絵本も、この時期に講談社から出ていたようなのだが、いまだ全部は翻訳されないままになっている。近年ボリスの人気が高まっているせいか、一部作品はかなり最近になって福音館書店から翻訳されているが、講談社版(やはり絶版らしい)と合わせても未訳のものが残っている。

2000年代から晩年

2003年から日本版が福音館書店に戻る。

25 うさこちゃんとあかちゃん 2003(2005)

26 うさこちゃんのはたけ 2004(2005)

27 おかしのくにのうさこちゃん 2005(2007)

28 うさこちゃんとふえ 2005(2007)

29 うさこちゃんとたれみみくん 2006(2008)

30 うさこちゃんはじょおうさま 2007(2009)

31 うさこちゃんときゃらめる 2008(2009)

32 うさこちゃんのおじいちゃんへのおくりもの 2009(2009)

33 うさこちゃんとふがこちゃん 2011(2011)

うさこちゃんとあかちゃん」では、おかあさんに子供ができる。
この弟か妹か未確定の子、新展開かと思ったらこれっきり出てこないのだが…
このときは受胎告知がない。1冊目の内容についてはブルーナも思うところがあったということを森本俊司さんも聞いたそうで、その対称として描かれた本なのではないかと森本さんは考えているようだ。

もうひとり1回しか出てこないキャラクターが「うさこちゃんとたれみみくん」の「だーん」。耳が垂れている男の子で、学校でうさこちゃんの隣の席になる。
たれみみくんと呼ばれるのは嫌だけど慣れてる、ということを聞き出したうさこちゃんが、名前で呼ぼうとみんなに呼びかけるという良い話。
でもこれ以降出てこない。たくさんのキャラクターに何度も出番を与えるほど巻数がなかった。

こうしたゲストキャラクターとは違い、シリーズ通して比較的出番が多いのがおじいちゃんなのだが、この末期にもおじいちゃんが話の中心にいる話が2冊ある。「うさこちゃんとふえ」は、おじいちゃんが笛を作ってくれる話だ。

実質最後の作となっているのが「うさこちゃんのおじいちゃんへのおくりもの」で、おばあちゃんに教えてもらった編み物をプレゼントする。一人で暮らしているおじいちゃんに、お互いに贈り物をする関係性。
著者の年齢も影響していると思う。もうブルーナも80歳を過ぎていた。

順番に並べるとミッフィーの出てくる最後の絵本は「うさこちゃんとふがこちゃん」なのだが、これはどっちかというと「うたこさん」のほうのシリーズだ。原題『knorretje en de oren van nijntje』(ふがこちゃんとうさこちゃんの耳)からもわかる通り、ふがこちゃんのほうが主人公で、うさこちゃんの長い耳に憧れてうたこさんにウサギの耳を作ってもらうという話になっている。
森本俊司さんも、メルシス社で本作がうさこちゃんの絵本ではないと聞いているそうだ。
そしてこれはディック・ブルーナの引退作でもあったようだ。1963年から約50年続いたうさこちゃんはシリーズ32冊+1冊で終了し、ディック・ブルーナは2014年に高齢による引退を発表したが、実際はこの2011年ごろから活動を停止していたとのこと。このとき84歳。
このあと別の本(ezelsoor)が2012年に出版されているが、これは2000年に描かれたものだそうだ。

ディック・ブルーナは2017年に老衰で亡くなった。享年89歳。ブルーナによる絵本シリーズはこれ以上描かれることはない。

感想

絵本については私は「にわか」であったが、50年分のうさこちゃんを通しで読むとさすがに感慨がわいてくるものはあって、自由に動き回り何でも学習していくミッフィーの子供らしい姿と、それを親の目線でよく観察したものを絵本にしていると思った。
そして70を過ぎたブルーナが描いた2000年代以降の作。新しい展開を起こしてみたり、キャラクターが増えたり、一部のキャラクターを優遇してみたりと、いろいろ変化をつけながらも、その楽しさとかわいさが劣ることは全くなかった。
84歳になっても0歳から読める絵本を創作していたブルーナは半世紀前の作家であると同時に、21世紀を生きた作家でもあった。

私はミッフィーのグッズも好きだけど、グッズだけで満足してしまうのではもったいない。さまざまなミッフィーの姿が見られる「うさこちゃん」シリーズ、読めるなら読みましょうということで締めくくる。

……アニメとか映像類も見れるだけ見なきゃダメでしょうか。

FF2の開発資料を追う・フリオニールとは何者なのか

FF2の話をしたい。

いつにも増して、関係者に失礼な記述が含まれているという自覚があります。
あらゆる資料を精査して書いていますが、その結果憶測も非常に多い記事となっております。
事実誤認などがありましたら伝えてください…

これまで書いてきた4つの記事と関連はあるが、とりあえずひとつ。

読まなくても大丈夫ですが、このFF1の開発経緯を調べた記事は、FF2の補足情報としても役立つ可能性はあります。

そして今回FF2本編、および小説ファイナルファンタジーII 夢魔の迷宮』のネタバレも最後のほうまで書いてます。ご了承ください。
ラスボスが誰かくらいは、まあ知ってるでしょうが。

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