神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

Wizardryのトゥルー・ワードの話

ウィザードリィの呪文名はトゥルー・ワードと呼ばれるもので構成されている、という話は聞いたことがあると思うが、この設定はオリジナルの作者の考えたものではなく、日本展開で創作されたものだと考えられている。

Wizardryの呪文名は確かに作者アンドリューらによって創作された一定の法則をもって構成されているが、本来はトゥルー・ワードとは呼ばれていなかった。ロバート・ウッドヘッドはこれを「偽ウェールズ語」だと呼んでいる。

>ウェールズ語を参考にしていたので、あれは偽ウェールズ語と言ってもいいかもしれません(笑)

>金山:日本ではトゥルーワードと呼ばれる、竹内誠さんという作家さんの考えた二次創作的な設定がよく知られています。

というわけでトゥルー・ワードは竹内誠の創作だった。

と、考えられている。

現在の扱い

日本で創作されたと思われる真言葉(トゥルー・ワード)については、現在ではWizダフネでもこれに基づいて新呪文が作られている。
たとえばバティルガレフ(行動速度低下)なら、BA-TIL-GREF(逆の-速やかな-体)といった感じ。(モグレフのGREFをなぜかガレフと読んでる)
また各語には読み方があり、HALITOはハリトと読むのだが、真言葉での正確な発音はHA(ヘーア)・LI(ラーイ)・TO(ターザンメ)となる。この発音法は小説『ブレイド&バスタード』でも採用されている。
このように、いまやトゥルー・ワードは公式級の設定となった。上記インタビューでも触れられているように、現状ではよく知られているものとなっている。

だが、僕の知る限りは90年代にそこまでの知名度はなかった。

トゥルー・ワードの初出は『ウィザードリィマガジン』という本らしい。MSXマガジン編集部によるムック本で、1991 WINTERと書いてあるが1冊目しか存在しない。
これに掲載の賢者ウラサムこと竹内誠の「ウィザードリィの達人」というコーナー。p90、91の2ページに渡り真言葉(トゥルー・ワード)の解説となっている。内容としてはWIZ4までの魔法単語45種類についてであり、「メイルストロームの時代に変化した呪文」については掲載していない。
(ちなみに真言葉を実際に発音するのは禁じられてる旨が書いてあり、ブレバスの表現とは異なるように思える)

で……
この本以外で使われてた実例を私は知らんのです。

情報源が謎

得物屋 - TRUE WORDS

得物屋24時間にトゥルー・ワードのリストが掲載されているが、ここにはウィザードリィマガジンに掲載されていないものも含まれる。
>「メイルストロームの彼方(アスキーコミックス)」で判明した4種類、更に外伝シリーズに対応した17種類を加えて掲載している。
って書いてある。『ウィザードリィV メイルストロームの彼方』は原作:竹内誠、作画:しのざき嶺による漫画だが、読んだことはない。
そして外伝シリーズのトゥルー・ワードについては、どこに掲載されていたものか書いてない。

竹内誠自身による一部作品では採用されていたことはわかった。もしかしたら他の媒体でも多少使われていたかもしれないが、メイルストロームの彼方以外の掲載情報は無し。

トゥルー・ワードの妥当性

「ウィザードリィのすべて」にも、BAは効果を逆転させる意であるというくらいは書いてあるが、別にそれは読者も言われなくても気づいてるだろう。
BAは逆転。MAとLAは強化。末尾TOは攻撃呪文が多い。ウィザードリィの独特な呪文名には一定の法則性が感じられる。

トゥルー・ワードではこれらはそれぞれBA(逆の)、MA(広く・遠く)、LA(大きい)、TO(風・嵐)となっている。
HALITOならば、HA(発動)-LI(火)-TO(風・嵐)で、ウラサムによれば「発動せよ火の風よ」となるという。
これはオリジナルの作者の創作とは違うのだと思うが、Wizardryとにあった呪文体系をきちんと解釈し説明を与えたものであり、無から創作したというふうには言えない。
だが、オリジナルの文法も解明されていない。
BAについては、まず間違いなくオリジナルの作者の意図と一致していると思うが、TOはKADORTOやLOKTOFEITにも使われてるからよくわかんないし、竹内誠の真言葉にはGREFやN(ジルワンの末尾)のように語の切り方が独特だなと思えるものもある。
やはり全体的には後付けであるとは思えるが…
かといって原作者の意図を激しく歪めるものということも言えなかろうと。作者の意図も想像しながら、よく考えられているものだと思う。

そうなるとここで疑問も出てくる。これが本当に竹内誠の創作であるかどうかだ。
この掲載記事「ウィザードリィの達人」はアイテム・モンスターについて実際のデータに基づいて攻略知識を賢者ウラサムの視点で紹介するというものだった。トゥルー・ワードについて、ウラサムが創作したという情報は当然なく、あたかも公式な情報であるかのように書かれている。これを後付けだと思う、というのは見立てにすぎない。
それは当時のウィザードリィの攻略本設定などだいたい同じ雰囲気で、日本版独自創作だということがわかりにくくなっていたのだが。
これも本当に竹内誠のオリジナルなのだろうか。たとえば、独特に見える音節の切り方、呪文の読み方など制作サイド、北米サーテックの誰かから教えてもらった情報は全く含まれていないのだろうか?
わからない。

今出ている限りの情報では、前述のインタビューで言及されている通りトゥルー・ワードの全ては竹内誠の独自の創作だろうと私も考えているが、現時点で確証は得られていない、ということでよろしくお願いします。

本当に有名だったか?

この話題の重要な疑問点は全く別のところある。「独特な呪文名」にトゥルー・ワードという設定が存在するという認識を、当時のユーザーが持っていたかどうかだ。
現在わかっているのは設定が掲載されたのは91年が初めてらしいということであって、トゥルーワードとは、ファミコン版3より後に出てきた設定なのだ
Apple2時代からファミコン版まで幅広く存在したウィザードリィの中心ユーザー層より、もう少し後。
知っていたとすれば、その中でもウィザードリィマガジンを読んだマニアックな層だ。
はっきり言うが、この本の知名度は現状たいしたことねえぞ。

2000年代になるとトゥルーワードについて誤った解説をしているサイトも幾つかあったようだ。
それらに加え、得物屋のリストこそがトゥルー・ワードを広めた重要な発信源ではないのか?

僕はリルガミンサーガやエンパイアをやってた頃はトゥルーワードの設定は知らなかった。
そして現時点でも「ウィザードリィマガジンに掲載された設定」だと正しく説明している人は多くはない。
ちゃんと原書の存在を認識しているかどうか。

現状「独特な呪文名」に対する呼び方は「トゥルー・ワード」しかないのだが、これは日本展開初期には存在せず、また設定成立後も知名度はかなり後の年代まで大したことなかった、という考えです。
これが公式な設定と認識・誤認されたのこそ、2010年代以降じゃなかろうかと。

偽ウェールズ語の謎

ロバート・ウッドヘッドは呪文を「偽ウェールズ語」だという。

私はウェールズ語は知らないが、見た限りはウェールズ語の単語とWizardryの呪文名は結びついていない。HALITOのどこがどうウェールズ語かというのは、全く見えてこない。(ウェールズ語は英語と系統が違うのだが英語由来の単語もあり、「炎」は英語と近いfflam、「火」はtânだとgoogle翻訳では出てくる)
思うに、偽ウェールズ語とは、ウェールズ語と単語が似てるとは限らないのだ。ウェールズ語詳しくないので、発音などを追えば別の類似点が出てくるかもしれないが。

Oublietteとの類似

Oublietteの呪文を参考にしたのではないか、というのは既に指摘されている話だ。

http://gabysoft.com/Oubliette/Help/VargetSpells.aspx

現スマホ版Oublietteの呪文は、明確な説明が公開されている。これがFIEがFire、SHEFがShieldというふうに、音節(語根)が単純に英単語に対応しているというものだ。
これは言うなれば偽英語とも言えるようなものであり、そこまで複雑じゃないのだ。このルールはもちろんPLATO時代に存在していたとして、広く公開されていたものかは、よく知らないけど。

Wizardryの呪文は、この呪文の影響は直接受けている可能性が高いが、やはり同様にそこまで複雑なことやってるとは思えないというのは率直な意見で、音節一つが一つの単語に対応、くらいじゃないかなあと思うのだが。

あらためてウェールズ語を考える。英語でもウェールズ語でも、単語をWizardry独自の音節や語根に置き換え置き換えていると仮定すれば、正直なところどちらの単語に対応させても呪文名に大差あると思えないというところであるが。
語感、文字の並びなどが似てる単語と対応してるのかもしれないが、ウェールズ語の知識が足りない僕には、そうだともそうじゃないとも判断がつかない。

無理やり考察する偽ウェールズ語

だがウェールズ語には英語と重要な差がある。語順が英語と違う。
ウェールズ語だと動詞・主語・目的語という順になり、形容詞が名詞の後につくのだという。
ウェールズ語ならではの部分が含まれるのだとすると、多くの呪文に動詞と目的語は入ってるんじゃないかと思うわけで。形容詞のつく位置が英語基準だと変になる、とか…

考察のとっかかりとして、音節ひとつで成立している呪文にDIがある。動詞ひとつだとすれば、「治す」とかそんな感じの?
DI-OSなら、「治す-傷を」ってところじゃないか?
いや「治す」だとKANDIが説明できないが。「もどす」とか?
トゥルーワードだとDIは名詞で、DI-OSは生命-力。名詞だけのつなぎのほうがそれっぽいか?だがKA-N-DIは気-死-生命…ちょっと無理やりな感じ。

HALITOの語根は、トゥルーワードのHAとLIとTOの3つなのか。
TOは使用頻度が多いので分かれてると思うが、偽ウェールズ語はトゥルーワードよりは複雑じゃないらしいので、HALIで炎なのかも…
しかしLITOを含むのは全部炎属性魔法なので、HAとは分かれる気がする。やっぱりHAとLIとTOじゃないのか?

TOは敵を対象とした魔法、特に攻撃魔法には必ず入っているが例外もある。
LIは炎属性の魔法すべてに共通。MALIKTOとMORLISに含まれるのは違う気がする。
HAはHALITO系とHAMAN系に使われている。
TOが目的語「敵」とかで、LIは名詞の「炎」か、動詞の「燃やす」か…
HAは炎とは直接関係ない。トゥルー・ワードの「発動」は近い気はする。
HA-LI-TOの3音節が動詞、主語、目的語で構成されてるとしたら、「発動する-炎が-敵を」とか?
リトカンがうまく説明できない。LIが動詞で主語は省略、HAが形容詞?KANがいまいちピンとこない。

やっぱり名詞とか動詞とか、語順は深く考えられていないのだろうか。
ウェールズ語だと、これらの単語はどう対応するんだ?ウェールズ語の辞書は近所の図書館にはなかった…

トゥルーワードないし「偽ウェールズ語」には使用回数の少ない語根も多く、規則性を見いだすのはやはり難しい。
またロバートの発言。

>ただ、容量の関係で彼らの考えた呪文名をそのまま反映させることはできず、プログラムの都合で僕が変えた部分もあります。

>ただ、一番大事なのは「声に出してカッコいいか」だと思います。

から、おそらく法則を無視して響きで決めている魔法もあるんじゃないかと。

それでも、もう少し想像できることは残ってる気はするんですよね…

呪文名を考案したのはロバートではないようだが、呪文の仕組みをプログラム化しようと試みて断念したのはロバートだ。
仕組みについてかなり記憶しているのではないかと思う。

HALITOのトゥルーワードについて聞かされたロバートの発言。

>私たちは、正直ここまでは考えていなかったと思います。私たちが考えたときよりも余程深く考え、時間をかけているんじゃないでしょうか?

やはりHAとLIとTOに分けるのは考えすぎなのだろうか。

MAELIFICは呪文?

MAELIFIC。日本版ではマイルフィック、マイルフィクなどと表記される、正体不明の魔物。

>「非常に悪い」ということを意味する英語“malefic(マレフィック)”が元だね。あれは邪悪を具現化した存在なんだ。

maleficという単語から変化したものがマイルフィックの由来だというのがロバートの発言だ。しかしそれだけだろうか。
どうも真ん中のELIの部分が変な変形だと個人的に思っていたのだが、これよく見るとMAPORFICの真ん中のPORを入れ替えた形だと気づいた。つまり、マイルフィックとは呪文名だったのではないか?
偽ウェールズ語の語根を集めて、英語の単語に似せて意味を持たせたものでは?
MAELIFICとは魔法そのもののような存在。MAPORFICはPORFICの強化…味方を守る(強)みたいなもので、ELIFICは味方をおびやかす魔法、みたいな?
モンスターの創作はロバートが担当していないものも多いようなので、由来を完全に把握してない可能性は十分ある。

本説に全く根拠はないです。

トゥルー・ワード成立へ

竹内誠氏が偽ウェールズ語の考案過程を少しでも聞いていたかは不明だが、音節ごとに意味があるという仮説には当然簡単に到達しており、対応する語を地道に考えていったのだと思われる。
サーテックから情報が得られていたかは定かでないが、あったとしてもそれほど大きな影響はないと思う。
たぶんだけど…

現在の扱い2

前出の得物屋のトゥルーワードの中にREI(消せ)というのがある。登場は外伝4以降、サイオニック呪文のレイマーにしか使われていない。使用者が隠れる効果。
REI-MA-Rで、消せ-広く-の?MARが別の意味とかじゃなくて?

ダフネではレイリス(REI-LIS、消せ-脅え。恐怖などを回復)などでREIが使われている。外伝4以降のトゥルーワードも正式に採用されているということになるが…
これ本当にどこかに掲載されたことあったんでしょうか。知ってる方いたら教えてください。
5のトゥルーワードが判明しきっていないのに、外伝4のトゥルーワードが判明しているのはどういう経緯なのか、想像がつかない…ログアウトかファミ通にでも掲載された?
そういう文献の存在をまったく聞いた覚えがない。

ダフネの呪文については、既存のトゥルーワードだけで構成されているわけではないようです。どうやら新規のものもある。

竹内誠氏について

竹内誠氏は80年代から90年代にかけてウィザードリィ関連書籍を多く手掛けてきた人物であり、氏の創作した設定はかなり使われている、ということは何度か書いてきた。
だが近年の活動は不明だった。

消息もはっきりしていなかったようで、蓬萊学園の関係で氏を探していた方がいたのですが、連絡は取れたようです。

補足

ロルトは真空の刃だと日本版では説明されているが、オリジナルの説明では単にBLADES(刃)とされ、魔法の刃で切り裂く魔法である。日本版で意味が変わっている呪文も存在しているため、偽ウェールズ語の考察をやろうという方は英語版のマニュアルに沿って検討したほうがよいでしょう。
「ウィザードリィのすべて」に真空の刃と書いてあるのはバギのイメージが混ざったのだろうと思っていたが、ドラクエ2より古い「ウィザードリィプレイングマニュアル」(これも竹内誠の作)にも「真空状態を起こし」て攻撃するという説明があり、こっちのが古かった。もしかしてドラクエ2がこっちを参考にしたのかな。
ファミコン版の説明書では「鋭い刃を呼び出し」。真空じゃなかった。

Oublietteの呪文については、次の記事を参考にしました。

呪文名の話とはあまり関係ありませんが、D&D、AD&D、OublietteとWizardryの内容比較は以下の記事が参考になります。

なお、Wizardryが影響を受けた重要なゲームのひとつとしてはOublietteがありますが、他にもPLATO端末で動いていた複数のRPGの影響を受けていることはロバートも明言しています。
PLATOのRPGについては、何度も紹介していますが『ロールプレイングゲームサイド vol.1』掲載の「真説・コンピュータRPGの起源」という記事をお読みください。

世界樹1 HDリマスター 挑発/乱数/ターゲッティング関連(未完成)

(3/8)いろいろ考えがあるため、本記事は書きかけのまま公開していきます。

(3/28)ひっかきモグラの思考について結論。シザースクラブの調査を追加。初代パラディンの評価を記載。

(3/29)シンリンチョウと森ネズミを追加。

(4/4)HPを見る敵追加。挑発の内容を整理。
(4/5)カーマインビークに追記、バンパイアバットの事例に言及

(5/30)シザースクラブについて追記。
(6/4)シザースクラブから判明した乱数の話題について

(6/11)リマスター版は行動時にターゲットを決めることを追記

(6/14)ダメージ帯による乱数の変動理由がほぼ判明

(6/20)HP順位同着の判定を記述、シャドウエントリについて少し。

(7/2)ひっかきモグラ、森ネズミに対する人数差の影響を記述

(7/19)HD版シャドウエントリについて、ひと通り記述
(7/25)wiki情報などぼちぼち追記
(8/2)DS版挑発についての記述を修正。全体均等タイプにも有効。

(8/11)HD版挑発の実測値

↑ここに書いてない細かい追記・修正もちょくちょく行っています。

ここまでのあらすじ

ニンテンドーDS『世界樹の迷宮』初代は、パラディンの挑発はバグで効果がないと長いこと言われていた。
実際は、一定の効果がある。

このことは2017年に検証され、確認された。

乱数固定を用いた方法で、挑発を使用した場合に攻撃ターゲットが移動することは確認されている。素晴らしい検証でした。
(初代世界樹1は、エンカウント用乱数の初期値が起動時の本体時計の時刻で決まる。戦闘時の乱数は本体時計ではなく、ソフトリセットするだけで戻るとのこと)

ただし、この検証では挑発の効果が大きいのか小さいのかは、まだよくわからない。「少なくともアーマービーストの通常攻撃に対して無視できないほどの効果がある」ことだけが確認されている。
挑発が有効な敵がアーマービーストだけということは、ないと思うが。

さて挑発の効果が低い、バグってるのではないかという話は発売直後から言われていたようなのだが、実は発売1ヶ月後に既に検証は行われている。そして、挑発の効果は確認されなかった。

このときの条件を書き直すと、

  • パラディンLV45、バードLV43、メディックLV40の3人パーティ
  • B1のひっかきモグラ×3で行う
  • パラディンは毎ターン挑発
  • バードは開始直後に癒しの子守唄と安らぎの子守唄を使用
  • それ以外はDEFENCE
  • 500回試行して挑発のレベルごとの被弾数を計測する

条件を明確に記録している。この検証はかなり真剣にやられていたと評価していい。バグ・無効であるとの断定も避けられている。
しかし、現にこの実験では挑発の効果は認められなかった。

なぜ2007年2月の検証で挑発は機能しなかったのか?
不可解なのは、2007年の調査ではターゲッティングの偏りがまるでなかったことだ。
2017年の動画の通り、味方のHPはターゲッティングに影響すると考えられており、挑発を使わなくても被弾の偏りは生じる。これこそが挑発の効果が感じにくい理由ではないかと憶測も立てられる。

だが2007年の検証ではそのことは知られていなかったようだ。職業差がある条件だと、普通は何もしなくても偏るはずである。
こうした前提の知見がもっとあれば、挑発なしのデータが偏ってない時点で疑問に思えたはずだが、発売1ヶ月では知らなくても無理はないのであるが。(この性質は世界樹3の発売あたりでもまだ広まっていなかったようだ)
だがこの検証は開幕で癒しの子守唄を使用しており、図らずもHPは満タンで行われている。
挑発の効果が仮に低いとしても、多少の偏りは出てきそうなものであるが、出なかった。

2007年の実験では、なぜ挑発が機能しないだけでなく、本来起こるはずの偏りが生じていないのか?

僕は、以下のどちらかだろうと仮説を立てた。

  1. 検証自体にターゲッティングをキャンセル・均等化する行動が含まれていたのでは?
  2. 無難に思われたひっかきモグラは、実はターゲッティングする思考自体がないのでは?

いろいろ調査を進めた結果、仮説1ではないことは判明したが、仮説2の表現も正確ではなかった。要はひっかきモグラは挑発が効かないタイプだったのであるが、詳しくは以下に示していく。

書きかけのまま公開する経緯

とはいえ実験するだけの余裕もなかったし、DSの動画を撮る環境を用意するのも大変なので、仮説までは考えたが検証は行わなかった。

しかしよく考えてみるとリマスターなら検証はかなり手軽にできる。リマスター世界樹は中断・再開による乱数固定が非常にやりやすく、DSより扱いやすい。動画で撮らなくても何度も再現実験してメモを取る方法でいける。
やりやすい検証なら、避けたくはない。

リマスター版挑発は効果が変わっており、顕著な効果があること自体はわかっているが、そもそもひっかきモグラはどうなん?
ひっかきモグラの挙動もリマスターとDSと違う可能性はあるものの、リマスターで変な結果が出ればDSでも変だろうと見立てはできる。
とりあえず、やってみる。

今回の調査には明確な目的がない。挑発の効果を確かめることは目的ではないし、だからといって挑発が関わらないわけでもない。
検証すること自体が目的みたいな、曖昧なテンションで進めている。
だから書きかけのまま書いていきます。進展があれば記事の内容は随時更新されていきます。
増えていくだけでなく、書いたことを消すかもしれません。

なお、断りがない限り難易度EXPERT(ほぼDS版と同じ難易度)で調査しています。

ひっかきモグラの思考調査

パラディンのイシグレ。レベル65。

メディックのめんだあ。レベル65。

アルケミストのネイ。レベル65。

全員引退は不使用。断りがない場合は装備なし、スキルなしで実験を行う。
この3人を選んだのはAGIが同じだったからだ。攻撃を回避すると乱数がずれるため、乱数固定を用いる場合はAGIを揃えて回避する回数を合わせる必要がある。
また詳しくは省くが、本実験においてHP満タンを維持する必要はないと事前の調査で判断した。
対象は全てひっかきモグラ×3のパーティを探す。
この調査は乱数固定を使う。このレベル65のメンバーでB1のスタート地点で中断→タイトルに戻って再開。
再開後、つきあたりまで前進して、2歩うしろに下がると、ひっかきモグラ×3が確定で出現する。HD版でしか使えない、この「中断→再開1戦目の戦闘用の乱数固定技」を、今回は何度も利用する。
この条件において、ひたすらDEFENCEのみで50ターン耐えるという検証を実施。ひっかきモグラの行動順・攻撃ターゲットを毎ターン個別に記録していく。
結果、HPに大差ある条件にもかかわらず、被弾数が3人で大差ないことがわかった。ひっかきモグラの攻撃は偏らないという、DS版の報告と同じ結果。
しかも、メンバーの位置を入れ替えても、被弾回数もそのまま入れ替わる。

調査時の記録1 

ひっかきモグラの行動順も記録しているが、行動順、狙う位置は味方3人の並びと関係なく、完全に一致。撃破する51ターン目の結果はなぜか変わったが…(AUTO使用時に乱数の拾い方が変わることがあるのかもしれないが、詳しく調べる気がない)

試した隊列がちょっと少ないが、本条件、つまりレベル65でAGIが同値のメンバーに対し、ひっかきモグラは対象のパラメータによる区別をしていない可能性が高い

またアルケミストのHPだけ60にしても、倒れるまで被弾回数は全く変わらなかった。つまり、ひっかきモグラはメンバーの現在のHPを参照しない。ランダムで攻撃位置だけを選んでいると考えられる。

ひっかきモグラの思考タイプ

重要な補足情報。ひっかきモグラは前列しか狙わない。
詳しいことは本記事の後のほうに記すが、実は過去のDS版調査で挑発の効果が観測できなかったのは、この「前列しか狙わない」が挑発に反応しない設定だったからという可能性が高い。
HPを参照しない攻撃を使う敵は他にも何種類もいるが、その中でも「前列後列を均等に完全ランダムで狙う」タイプに関してはDS版でも挑発が効きます
これとひっかきモグラに格差があること、設定ミスとも受け取れるものですが、あくまでバグではないと仮定すると、何らかの基準で攻撃対象を絞り込む攻撃には挑発が効かない、ということなのかと…「全員を等しく狙う」と「前列のみに絞る」で格差を与えることが適切かは別として…

なお、上記はHP満タンのひっかきモグラという条件です。HPが減ったひっかきモグラは思考が変化し、こちらのHPを参照・低確率で後列も狙う攻撃が混ざるようです。B1でも既に2種類の思考の使い分けをする敵が存在するわけです。

乱数固定によるモンスター召喚

中断再開技でモンスターを呼び出す場合、中断時の条件によって、出現するまでの歩数は変動することがある。再開から1戦目で、同じ座標で遭遇すれば、同じ敵編成になる。もし会えない条件を引いた場合は中断する位置を変えたり、鈴などを使ってエンカウント調整して対処する。

この歩数の初期値の決定法は不明。再開時のHPは影響してるように思えたが、中断前の別の行動が反映されていたのかもしれない。「階段を下りた直後に中断」という条件を厳守しても歩数が変化することがあるので、1歩目の時点で差がついているようだ。
また階段を通過する、採取ポイントを調べる(採取スキル不要)など特定の行動で、遭遇する敵も変化する。ただ、この厳密な仕組みの調査は難しい。

いっぽう、戦闘用の乱数については、中断再開後の初期値はいつも固定のようです。

HD版で移動中に戦闘用の乱数を動かす方法は、今のところ見つかってない。DS版は「パスワードを見る」で動かせる。
逆に言うと、中断再開後にスキルや隊列変更、回復アイテムの使用などで、一戦目の乱数は揺るぐことはない。

挑発と乱数

まずパラディンに挑発1(前提にDEFブースト1)を習得させる。
そのまま挑発を行わずにさっきと同じ調査(50ターン)をして、結果が動いてないことを確認した。乱数固定は成立しており、DEFブーストの習得は乱数に影響を及ぼさない。

続いて挑発1を毎ターン使用し、同じ調査を実施。

挑発は効いているようなのだが、それだけでなく乱数を動かす。乱数固定で結果が確認できたDS版と効果そのものが違うことを示唆する。
DS版はおそらくターゲットの攻撃に判断する何かについて、定数か割合かで変動させており、乱数の消費量には影響しないのではないのかと予想されるのだが、どうもリマスターの挑発1は20%ほどの確率で「攻撃ターゲットを強制的に挑発使用者に動かす」効果であり、その際に乱数を消費している。
20%とはwikiに書いてある情報源不明の謎の確率。世界樹2と同じ効果っぽい。

ちょっと気になったので、もう少し調査。
レベル65のパラディンひとりパーティにして、中断再開。同じパターンでひっかきモグラ×3が確定出現するので、挑発を使用しながら受けるダメージを10ターン計測する。

挑発の不使用と挑発1を比べると1ターン目の結果も既に変わっている。リマスター挑発が乱数を消費する行動であると断定していいだろう。(ついでにテリアカαは乱数をずらすことがわかったがこれは今は関係ない)
だが挑発のレベルを変えただけで乱数の消費量が変わるとは考えにくい。考えにくいのだが、挑発のレベルによって結果がだんだん変わっていく、途中までは同一の乱数なのに途中から変わるという、よくわかんない結果になった。

挑発7以上と挑発不使用は乱数が同じだ。

事実:挑発不使用時と、高レベルの挑発は乱数の消費量が同一である。

可能性が高いこと:挑発7以上の成功率は100%か、限りなくそれに近い。挑発6は、100に近いが100ではない。wikiにあった情報源不明の数値はおそらく正しい。

つまり…挑発が成功すると、乱数の消費量は挑発なしの通常ターゲッティングと同じになる。挑発が失敗すると、消費量が変わる。

仮説:ひっかきモグラのターゲッティング時に挑発が成功すると、通常のターゲッティングをキャンセルしている。このときの乱数消費量は通常のターゲッティングと一致する。挑発が失敗すると、通常のターゲッティングに処理が移るので、乱数の消費量が変わる。

その後判明したこと。ひっかきモグラの通常攻撃(前列から完全ランダム)の乱数消費量は、シンリンチョウや森ネズミ(HP順位・隊列で優先度を判断)と比べて、乱数消費回数が2回少ないようです。挑発成功時の乱数は、このひっかきモグラとは一致するが、シンリンチョウや森ネズミだと一致しない
例として、中断再開技でシンリンチョウ×3を呼び出し、挑発10を使った場合、1ターン目のダメージがひっかきモグラ×3と同じ乱数に変化していることを確認しました。(森ネズミ×2のように、出現数が違うものは違う乱数になります)

挑発成功時のターゲッティングは、シンリンチョウでもひっかきモグラと同じになる。このことから「挑発が成功すると、通常ターゲッティングをキャンセルするので乱数消費回数も変わる」という説の信憑性が高まった。

HD版挑発の実際の確率

HD版挑発について、レベル別の確率調査を行った。
条件はひっかきモグラ×3相手に、「後列のパラディンで挑発を使用する」だけ。
HP満タン時のひっかきモグラは通常は後列を攻撃しないが、HD版で挑発が成功した後列は後列を攻撃する。
この条件であれば、攻撃ごとの挑発の成否を確実に見分けることができる。HPの調整などは一切必要ない。

結果は以下の通り。

既に知られていることだが、HD版挑発の引き寄せ率はレベル7以上で100%に達する。またレベル4から6の伸び率が非常に高い。

ただし、この実測値はwikiに書いてある数字とは少々違っているようだ。wikiが正しいという保証もないのだが、試行回数は150回ぐらいだとそれなりの乱数の偏りは生じるようである。
だが正しい数値を求めたいわけでもないので、今回はこれで終わりにする。

HPを見る敵と見ない敵

世界樹シリーズ通して現在HPが多いキャラクターのほうが被弾しやすいらしいのですが、この1でそうなのかというのは個人的に確認したわけじゃなかった。
何種類か簡単な調査を行った。

ここでリマスター版とDS版で違う重要な点を述べる。挑発など一部スキルの効果が違うのはもちろんだが、注意が必要なのが敵のターゲット選定がターンの最初ではなく、行動時に決まることだ。
ひっかきモグラの場合は完全ランダムでターゲットを決めている可能性が高いが、こちらの現在HPを参照する敵の場合、DS版の初代はターンの最初のHPで決めているようなのだが、リマスター版1は敵の行動順が来た瞬間に決める。
つまり、直前の敵の攻撃などで残りHPが減るなどすると、次の対象が変わることがある。
また挑発も使用したそのターンから効果がある。(その他の行動にもターン中に変えるものがあるかもしれないが、よく知らない。途中では変わらない条件行動が存在することは確認済み)

特にターゲッティング関係の調査で重要なのは「攻撃を受けた瞬間のHP順位」で、これは戦闘開始時のHPだけでなく、回復のタイミング、防具の質、クリティカルなど、あらゆる要因で順位の変動は起こる。DS版では明快だった「毎ターンHPを回復する」という条件については、HD版では全ての瞬間に順位を維持できる方法とは限らない。ターン内に順位が変動していないか、常に観察の必要がある。

下記の調査では、各ターンのHP順位まで書いてない箇所が多いですが、書いてないだけで意識は持っているということでお願いします。追検証などをする場合は注意してください。

また、ひっかきモグラよりかなり強い敵が多いため、装備はしっかりつけるようにした。AGI上昇する装備品は使わないよう注意する。(耐性はつけてないつもりだったが、普通に見逃して耐性つきで調査していた)
思考がひっかきモグラと違うかを見たいだけなので、調査は短いターンで済ませた。
HPが減ると思考が変わる敵はひっかきモグラ以外にもかなりいるようですが、下記ではそこまでは調べておりません。

シンリンチョウ&森ネズミ

B1スタート地点で中断→再開。
ここで街に戻って迷宮に入りなおし、大部屋で右折すると、右の通路のつきあたりで森ネズミ・シンリンチョウ・森ネズミの編成と遭遇する。
階段を上下すると敵の編成が変わるのだが、理屈は一切不明…

森ネズミは仲間を呼ぶのと防御があり(逃げることもあるが、この実験では起きず)、シンリンチョウは「いらつく羽音」を使う。
いずれも物理だけではないタイプだが、構わず行動を記録した結果、明らかにHPの多いものを強く狙う。
B1でさえ「ひっかきモグラ型」と違う、攻撃対象の差を判断しているモンスターが存在することが確定。
しかも、「いらつく羽音」だけはひっかきモグラと同様で、隊列を変えても同じ位置が狙われる結果となった。ターゲット選びの思考はモンスターの種類ではなく、行動で決まっている、かも。

5人パーティでも簡単に調べたが、シンリンチョウの通常攻撃は前列を優先し、後列を狙うことはめったにない。いっぽう「いらつく羽音」については前列と後列どちらも狙う。また後列に対してもHPを参照していない可能性が高い。
シンリンチョウは、2つの行動で違う仕組みでターゲッティングをしているのは、まず間違いない。

はさみカブト

B1西側の伐採ポイント(毒アゲハの部屋)で中断・再開。部屋内でエンカウントするとはさみカブト×1が出現。
この乱数固定で20ターン調査。隊列を変えると狙われるキャラクターが変化、狙われる位置はそのまま。ひっかきモグラと同様、HPを見ないタイプと判断。
ただ位置によって狙われる確率に若干偏りあり。試行回数が少ないせいかもしれないので要検証。

こいつもHPが減ると思考が変わるそうです。

カーマインビーク

B18の下り階段前で中断・再開。右のワープに入って上り階段方面に突き進むとカーマインビーク×2が出現。
2種類の隊列で10ターン調査。位置を変えても各キャラクターの狙われる回数は同じで、パラディンが狙われやすい。
HPを見るタイプだろう。「普通のタイプ」とでも呼べばいいのか?

そう思っていたが、このカーマインビーク、基本的には装備などでHP順位が入れ替わるとターゲットも入れ替わる、みたいな動きなのだが、ちょっと説明がつかないパターンが混ざる。

メディックのHPを増やす、HP満タンを維持するなどして調べていたところ、HPと位置に関係なくパラディンが絶対に狙われるタイミングがある、ように見える結果が出た。しかし今回用意した3人パーティ、深堀りするだけの準備が十分でない。他のパラメータを見てるかもしれないし、これだけでは職業識別タイプとの断定はできない。
とはいえ、通常攻撃しかしないカーマインビークが、実は2種類のターゲッティングを使い分けている可能性は高い…

バンパイアバットの職業狙い

先の検証動画を作成した透明灯氏が発見していた事例なのだが、特定職業、具体的にソードマン、レンジャー、パラディン、ダークハンター、ブシドーを、隊列やHPと関係なく狙うパターンがあるのだという。(レンジャーを含む前衛職?)
そしてバンパイアバットもそのタイプだというのが、つい3月に判明していた。バンパイアバットには通常攻撃とブラッドサックの2種類の行動があるが、どちらもこの職業識別タイプであるとのこと。
これは私も実際に確認できた。B14のバンパイアバットに上記パラディン、メディック、アルケミストで挑むと、パラディンが倒れるまで150ターン以上もの間、絶対にパラディンしか攻撃してこなかった。
パラディンが倒れた後は、詳しく調べてないが、たぶんメディックとアルケミストでHPを比較せずランダムか。

こうしたモンスターが一種類でないとすれば、カーマインビークも職業狙いのルーチンを持っていて、ときどき切り替えるというのもありえない話ではない。

なおブラッドサックはバンパイアバットのHPが多い時は使用せず、HPが半分を切ったあたりから使い始める。このように残HPで技を解禁するモンスターは、過去にほとんど知られていないものも含めてよくいるようだ。

以上のような世界樹Iのモンスターの行動ルーチンについて、透明灯氏が独自調査してきたものをまとめられておりますので、紹介させていただきます。
まだ未完成の段階での公開となっているのですが、現状でも私がぜんぜん知らなかった行動分岐がかなり紹介されており、今後未知の敵のルーチンを予測するうえでも実用的な情報集となっております。
そして、基本形と思われる「前列偏重・残HP順位タイプ」から外れる敵、通常攻撃のターゲッティングを複数種持っている敵は、実のところかなりいるようです…
また均等に狙わず、不均等な確率でターゲットを選ぶのはこの「残HP順位タイプ」だけであり、しかもこのタイプは前列偏重のものしか見つかっていないとのこと。

シザースクラブが引き起こした問題

B15の南西の階段で中断→再開し、シザースクラブ×2を相手に、3人でDEFENCEし、被弾数を記録。

ひっかきモグラとは全く違う結果。HPの多いパラディンを極めて集中的に狙う。
だけではなく、順序を入れ替えると被弾位置もそっくり入れ替わり、どの順番にしても3人の被弾数は変動しなかった。
HPの多いキャラクターを狙うか狙わないかの判断がランダムで、こちらの位置は全く見ていない。
※シザースクラブが現在HPの低い相手を全く狙わないということはないが、この10ターンの調査では一度も狙われていない。
9ターン目はアルケミストが狙われるが、これはメディックの残HPが減っていたから。途中でHPを回復すると9ターン目には被弾しなくなる。

というふうに、シザースクラブは残HP型の一例だと思って、何気なく記録しただけだったのだが…
その後、透明灯氏のDS版での調査によると、シザースクラブの甲羅の守りの次のターンの攻撃は、前衛職狙いの可能性が高いとのこと。
こちらが調査した時点では、そういう敵がありふれている可能性にまだ思い至っていなかったが、この情報を受けて追調査したところ、HD版でもほぼ確認できました。甲羅の守りの次のターンは、パラディンのHPがかなり減っている状態でもパラディンを狙ってくるようです。
職業狙い型が何気ないザコ敵の中に混ざっているだけでなく、ターンによって同じ通常攻撃の質が変わるものさえいるというのは、調査時は全く想定外でした。

だがこのことを乱数固定で示そうとしたところ、新たな問題が……

防御力が乱数固定を乱すケース

これまで乱数固定でやってきた結果、カーマインビークで調べたときのように「HP順位が入れ替わるとターゲットが入れ替わる」という明快な挙動を示してきたのだが、シザースクラブ相手にメディックのHPを上げたところ、シザースクラブの行動順の変化、結果の変動が起き始めた。
では、条件を変えてメディックのHPそのままでパラディンの防御を下げると、4ターン目までは想定通りの結果だが、5ターン目から甲羅の守りを使うタイミングがずれるなど変化した。
どういうわけかシザースクラブに対して、条件によって乱数固定が崩壊することがわかった。

これは調査の結果、パラディンの防御力が原因と確定した。
過程を飛ばして結論だけ書くが、シザースクラブの物理攻撃に対して、「防御力が高すぎるパラディンと、それほどでもないメディックが混在していること」が原因だった。
この両者は、打撃を受けたときの乱数の進み方が異なる。だからメディックのHPを上げて被弾回数を増やせば結果が変わってしまうし、パラディンの防御力を下げることでも変わる。

3つの防御レベル

パラディンの防御力を3種類に調整して、被弾結果とダメージを記録した。

3つの防御レベル、すべて聖騎士の鎧(斬壊突の耐性10%)を装備した状態で調査。
当初の条件はパラディンの防御力が168(+聖騎士の鎧)だった。この状態でDEFENCEをするとシザースクラブの打撃は防御を突破できず、微小な乱数ぶんのダメージのみ(今回は1~5ダメージ)になるのだが、このときの乱数の進み方は普通にダメージを受ける防御131以下の状態と異なる。
異なるのだが、途中までは同じ乱数になっているように見える。

防御132~145の範囲にも注意したい。ここも乱数のみで決まると思われる小ダメージなのだが、完全にシャットアウトはできていない状態ということらしい。少しだけダメージが大きくなる。
ここの乱数は普通のダメージとも防御優位の微小ダメージとも異なり、第3のパターンになる。防御レベルによって3段階の乱数パターンに分岐することが確認できた。この3パターンで全部のようです。
この真ん中のパターンのことを現在「軽ダメージ」と呼んでいる。

ひとまず防御が根本原因だということは確認され、乱数固定を崩壊させない方法はわかった。

3人の防御を92に揃えたうえでHPを変動させ、甲羅の守りの次の行動がパラディン狙いであることが乱数固定で確認できた(この表で見たのは10ターンだけだが)。
これはダメージが通る防御力ならなんでもいいので、揃える必要はない。それが判明するより前に検証したものとなります。

シザースクラブを対象に選んだのは中盤の敵で会いやすいもの以上の意味はなかったのだが、結果思わぬ新情報が得られた。
これは違う防御レベルのキャラクターが混在していることが問題なので、もっと弱いひっかきモグラや、パラディンでも十分でないカーマインビークならこのような問題は起きていなかったが、1桁ダメージ(条件によっては2桁の場合もある)が出るような相手に対しては、乱数固定が乱れる可能性があるため、装備や行動に細心の注意を払う必要がある。
またDEFENCEや回復スキルは乱数を消費しないのだが、DEFENCEを使用するかどうかでダメージ帯が分岐することはある。つまり、DEFENCEも相手によっては乱数固定を乱すことがある
実際に防御168のパラディンでも、DEFENCEを止めるだけで普通に食らうようになり、シザースクラブの乱数が変化するのは確認した。
※防御92に揃えての調査も、DEFENCEをしたりしなかったりなので実質は揃ってないのと同じである。たまたま今回の条件では問題なかっただけ。

聖騎士の鎧の物理耐性も、このシザースクラブの条件では乱数分岐の原因として効いてくる。
中には耐性によって行動を変える敵もいるので、そもそも聖騎士の鎧をつけておくべきではなかったのだが。
考えなしにやったことで、結果的に新たな知見に到達できた。

微小ダメージ帯の乱数ずれ

B1で中断再開技を使い、ひっかきモグラ×3を召喚。
レベル1のレンジャーで、防御力を変更しながらダメージを記録した。DEFENCE不使用の場合、微小ダメージ帯への分岐は防御22以上で、クリティカル以外のダメージは全て1~5の範囲になる。
この表は軽ダメージの結果がかなり偏っているが、これは後回しにする。
まずシザースクラブで調べたときと異なり、「防御22以上」と「防御19以下」が同一乱数になっている。
この理由も調査でほぼ判明し、調査時のレベルが原因だった。レベル65のパラディンで調べたシザースクラブと、レベル1のレンジャーでは差がある。

まず「微小ダメージ」、つまり「防御過多のときの1~5ダメージ」には以下のような特徴がある。

  • 耐性、防御力をどれだけ過剰に上げても1~5ダメージの範囲である。DEFENCEの影響も受けない。
  • だがレベル補正の影響は受ける
  • 1~5で完全固定ではなく、味方のレベルがかなり低い場合は補正されて2~10ダメージになる。
  • だが味方のレベルがどれだけ高くても1~5ダメージの範囲は維持され、最大5ダメージが下がることはない

※敵と味方ではレベル差によるダメージ補正の効果が異なります。

乱数固定を用いることで、微小ダメージ帯でもレベル補正の効果は確認可能。ひっかきモグラからレベル1だと2ダメージ受ける状況を、レベル65で再現すると1ダメージになる。
だがこの状態だと5ダメージも3まで落ちるはずなのだが、なぜか最大5ダメージは維持される。
どうやらレベル補正で1ダメージが0になると乱数ダメージの振り直しを行っており、最大5ダメージが出るようにやり直しているようだ。
このときに乱数を余計に消費するのが乱数ずれの原因だった。推定1/5程度の確率でしか起きないので、途中までは同じ乱数になる。
(そしてレベル差が大きい状態だと4ダメージと5ダメージは振り直しでしか出ないため、その発生率は低くなるようだ)

対ひっかきモグラで、防御22以上で、レベルを変更したキャラクターで乱数固定して、ダメージ調査を行った。レベル6までは防御19以下と22以上で同じ乱数で動いている。だがレベル1・防御22以上で1ダメージだった箇所は、レベル7以上から違う数値になり、そこを境界に防御19と乱数自体が変動することが確認された。

つまり、ひっかきモグラの場合、味方レベル7以上からレベル補正による振り直しが発生するようになる。
ひっかきモグラはレベル3らしいが、わずか4レベル差でこの分岐を起こすということで、かなり多くの状況でこの乱数ずれは起きていると考えられる。

なお微小ダメージ帯だけではなく、軽ダメージ帯や、ごく限られた条件では一般ダメージ帯でも1ダメージが出る場合がある。このときレベル補正が重なると、同様の振り直しは行われます。
攻撃力の低い森ネズミは防御16以下で一般ダメージになるが、低レベルでのダメージ範囲は1~6となり、振り直しと思われる乱数変動は確認できた

軽ダメージ帯の謎

調査を飛ばした「軽ダメージ」について。

おおざっぱな特徴としては

  • 微小ダメージよりは少しだけ食らう、狭い防御範囲でのみ発生する。
  • 攻撃力が大きいほど発生範囲が広がる。
  • このダメージ帯に分岐すると、受ける側の防御力は最終ダメージに反映されない
  • だが耐性等によって発生する防御力の範囲は変わり、ダメージ範囲も変わる。
  • ダメージの乱数ぶれの範囲が普段と比べて妙に広い。
  • 0ダメージが出そうな条件になると、なぜかミス率が激増する。
  • このとき、単に「0ダメージがミスに変わる」では説明できないほど確率が高い。
  • 乱数の動きが普段と変わる。(必ず?)
  • レベル補正の影響は受ける。
  • 0ダメージの振り直しは起こすが、それ以外でも普段と乱数がずれる。

この謎の多い軽ダメージについて、今回同時に調査していた透明灯氏によって、ほぼ解明されました。

このリンク先のツリーに、研究結果が書かれています。まず軽ダメージ帯への分岐条件は既に解明されていたのですが(僕の表現で雑に言えば攻撃側の値が防御力で9割以上減らされそうな状態、という感じ。実際は防御力はその分岐判定に使うのみで防御力無視になる)、
このときのダメージ計算は「攻撃力に耐性等の補正をかけて計算した値に、微小な乱数を乗算する」+「微量のダメージ加算を行う」という2度にわたって乱数を使用している、と考えると説明がつくとのこと。
二度の計算をしているため、ダメージ範囲が広がるだけではなく、最低ダメージと最大ダメージの出る確率は低くなると予想される(乗算と加算の両方の最低値・最大値が合わないと出ない)わけですが、このことを何百回、何千回という地道な調査で確かめられております。

しかも乗算の段階で0ダメージになると、加算は中止してミスになる、という仮説も立証されております。

すごい。

シザースクラブで発見された乱数変動については、発生時点では原因がまったく思いつかず、完全にお手上げ状態だったのですが、防御力による乱数ずれの可能性に思い至ってくださったおかげで、すんなり調査を進めることができたうえ、さらなる詳細の解明までしていただきました。
その他、ダメージの確認、ダメージ分岐が起きる防御力の予想など、この節の調査には多くの助力をいただきました。ありがとうございました。

乗算で0ダメージ回避が起きた場合、さらに乱数がずれるようなので(同じ乱数でブレイバントなどを使ってダメージを動かすと比較できる)、加算の乱数自体を省略していると思われます。
そうした場合に、通常の攻撃回避と乱数の使用量が違うのか?などは未確認。
少々調査はしてみたところ、軽ダメージ帯での回避は、乗算による0ダメージ化(足切り)と、普通の回避の2種類で乱数の消費量が違うことを示唆する結果が得られたが、いまいちはっきりしておりません。
いちおうわかったこととしては、クリティカルの発生は軽ダメージ化より先に判定し、乱数消費数も一般ダメージと同じになるる可能性が高い。

HP順位の同着は許されない

いくつか見てきた限り、HPの大小で攻撃対象を選ぶタイプは、厳密にいえば現在HPの順位を参照している。仮に1位と2位、2位と3位の差が1しかない状態でも、3位を狙う頻度が特別上がったりはしない。今のところ「HP順位参照型」は全てこのタイプで、残量の割合などを考慮するものは見つかっていない。
※HP順位型とは別種で、残量の割合が少ないものを優先攻撃対象にするものもいるかもしれないとの情報をいただいていますが、こちらでは未調査です。

では同じHPのキャラクターが複数いる条件なら、どうなるのか?
結論を言うと、何らかの方法で順位は決定され、誰かが1位にされ、そちらに攻撃は偏るようだ。
同着は認められない。

一例として森ネズミ(HP満タン時)。
通常攻撃はひっかきモグラと違いHP順位参照型で、職業狙い行動もないことを確認した
また通常攻撃以外に逃げる、仲間を呼ぶ、防御と3種類の行動を持つが、4体以上いると逃走も仲間呼びもしなくなる(HP満タン時)。HP順位型の敵としては調査しやすい部類と言える。
乱数固定での召喚方法としては、スタート地点で中断再開、右の伐採ポイントで1回伐採(スキルなし)、東から2本目の通路まで到達、その1マス北へ歩けば森ネズミ2の編成と遭遇する。
通路に到達する前にエンカウントしてしまう場合は、獣避けの鈴を使って移動する。

レベル20パラディン3人を用意し、B1で森ネズミ2を召喚。HP差をつけた条件と、つけていない条件で被弾状況を記録した。2体編成はしばらくすると仲間を呼んで4体になる(回避などで乱数を変えれば5体になるパターンもある)。
※AGI調整のためドヴェルグの魔剣を装備している。ダークハンターレベル20と同じAGIになるが、あまり意味がなかった。

HP同値がいる場合、左のキャラクターを上位にする。「1位、2位、1位」の並びなら「1位、3位、2位」と読み替えられる。

この左優先システムは森ネズミで確認したのみで、絶対ルールかは不明です。DS版では右側や真ん中が上位になるパターンもあると情報をいただいたのですが、同じ条件でもHD版では左優先になったとのこと。移植の変更点の可能性があります。
僕がやったHD版森ネズミでの調査では左優先しか発見できておらず、職業やギルド登録順などのわかりにくい条件も参照していないようでした。
かくして現状でルールは完全解明されていないものの、いずれにしろ機種問わず、HPを同値にしても被弾数の偏りは消えない可能性が高いです。

ちなみにこの森ネズミ、入り組んだ行動選択ルールを持っており、ターン開始時の存在数だけでなく、各個体が出現してからのターン数瀕死の個体が存在するかという3つもの分岐条件があるそうです。瀕死のものが敵側にいると(同時に配置されている森ネズミ以外のモンスターでもいい)、4体以上でも逃げたり仲間を呼んだりするとのこと。

※HP満タン時のデスマンティスの通常攻撃は常にHPが1位の対象しか狙わない異例の特性を持つが、こいつの場合は同値の1位が複数いる場合にはランダムで対象を選ぶようです。つまりこいつの「1位狙い」は「HP順位型」とは異なる。

人数の影響

メンバーの人数が変わっても、乱数の消費量は変わらない。

ひっかきモグラ3匹の行動順はメンバーの人数によって変わるが、受けるダメージの順番は変化せず、全く同一の乱数で動いていることがわかる。表では省略しているが、ターゲット位置、行動選択なども同一になることを確認。
行動順を決める乱数はターンの最初などに生成・使用しているのだろうが、なぜかその消費量は人数に影響されず、ダメージを計算する段階になると同じ乱数になっている。行動順については余った乱数を捨てるような使い方をしている、のだと思う。隊列も関係なく、行動順の変化の要因は合計人数のみです。
※ただしこれは敵が同一種だけで編成されている場合。複数種のモンスターの共存編成だと、行動によって乱数消費が変わりそうなので、この法則は成立しないかもしれない。

また行動順に関わる乱数は、味方の前のメンバー→後ろのメンバー→敵の左から順、と決まった順番で引いていると思われる結果が出ている。
味方の5番が抜けると、元5番の乱数を敵の1番が取り、敵の元1番の乱数は2番にシフト…ということが起きるようです。
しかし元5番の乱数によってさらに敵1番の順序が変わるので、敵の行動順の完全な予想はちょっと難しいです。

ひっかきモグラでの被弾範囲拡縮

ひっかきモグラに対し、前3:後2の陣形と、前2:後3の陣形それぞれで、また被弾表を作成。メンバーはレベル20のダークハンター5人。

既に調査した通り、ひっかきモグラ(HP満タン時)は、前列からおそらく均等な確率のランダムで狙ってくる。
これを同一乱数の前列3人と2人で比較した場合、3人時に左を狙う手番は、2人でも左を狙う。右も同様で、3人の右を狙う手番は、2人でも右。
3人時に真ん中を狙う手番のみが、2人時に左右どちらかに変化する。

乱数による当たり判定の拡縮を図示するとこうなる。人数が減っても均等な狙い方は変わらない。これ自体は特に驚くべき結果ではないと言える。

森ネズミで見るHP順位判定の特徴

同じLv20ダークハンター5人で、森ネズミについても調査を行った。こいつはHP順位を参照するタイプだと既に判明していたが、より詳しく見ていく。

まずは前列からHP順位が高い条件にすると、当然前列1位がよく狙われた。
3:2編成と2:3編成で前列と後列の被弾数は変化せず、前列の人数が減ったぶんは、3位の被弾していたぶんが前列2位の被弾に移動する。
後列も同様である。人数をどのように変化させても、前列と後列に分かれている限り、それぞれの列の被弾回数は変化しなかった。

また後列のHPのほうが高い条件にした場合も、後列の被弾回数はまったく変化しない。HP順位型が参照しているのはそれぞれの列内の順位だけであり、パーティ全体での順位は気にしていないのだ。

さらに人数を減らし、後列がいない編成になった場合は、「後列3位が狙われていた手番は前列3位に変わる」「後列2位は前列2位に」「1位は1位」と、列が変わっても狙う順位は変化しない。

2~5人パーティの全パターン確認した結果、最終的に以下のような汎用の被弾表ができた。

森ネズミ、すなわち「HP順位参照・前列をよく狙う」タイプは、「どっちの列を狙うか決める」「どっちの列かはともかく1位から3位の誰を狙うか決める」という2段階のターゲッティングをしているようだ。(この絡みで乱数の使用量がひっかきモグラより多いのだろう。2回多いっぽいのは謎だが)
また味方の人数によって敵が狙う位置・順序・ダメージの乱数には変化がなく、行動する順序だけ変化するということを既に説明したが、森ネズミの場合は防御を行う森ネズミの番号は固定されている。この順序は味方の人数によって変化する。
6ターン目の森ネズミの行動は5人パーティなら防御/攻撃/防御/攻撃となるが、4人だと防御防御/攻撃攻撃になる。これでも狙われる位置には影響していない。

森ネズミの場合は、人数が減った場合の各キャラの被弾数の増加がひっかきモグラと異なっており、3位がいなくなっても1位と2位が一様に増えるわけではなく、3位だったぶんは全て2位の被弾に切り替わるようだ。
人数が3人でも2人でも、1位の被弾数は全く変わらない。100ターンで295試行調査して確認した

図にするとこうなる↓

わかりやすいつもり。

3位が狙われる確率はもともと低く、前衛2人と前衛3人で死にやすさが大きく変わらないような仕組みになっているのかな、と思います。

HD版シャドウエントリ

シャドウエントリはHD版で効果が上がったと言われていたが、詳しく調査したものはこの記事を書き始めた時点では見当たらなかった。※あとで英語で見つけたものは後述。

簡単な調査で、以下の性質はすぐに判明した。

  • HD版シャドウエントリは乱数を動かす。
  • シャドウエントリで動く乱数は、レベルと関係なく一定。おそらく敵1回の行動につき乱数1回多く消費。
  • 後列を狙わないひっかきモグラに対して、シャドウエントリを後列で使っても乱数が動く。
  • 複数人がシャドウエントリを使うと、さらに乱数がずれる。

挑発と似た挙動だが、レベルを上げても乱数の動きが一定のため、レベル別の性能差を同一乱数で比較することが可能です。

具体的な調査結果。

HD版シャドウエントリの具体的な効果は、「敵が狙いを決める都度一定確率で発動し、成功するとその攻撃の対象に選ばれなくなる」である。断定する。
狙われてから発動するスキルではなく、常に計算される。
これは「ひっかきモグラに対する後列」のような、そもそも絶対に狙われない場合でも判定は行われ、乱数だけ消費される。だから、ひっかきモグラに対して後列シャドウエントリにより、効果は発揮されないが、乱数だけを合わせた状況を作り出し比較することが可能。

1番がシャドウエントリ成功していなくなった手番だと、2番と3番からランダムで選ばれる。これは「シャドウエントリなしなら1番が食らっていた乱数」は2番にシフトするし、本来2番が食らっていた乱数が2番のままになることもあれば、3番になることもある。

また、前列が二人以上いる状態でひとりがシャドウエントリを使っても、前列しか狙わないひっかきモグラが後列を狙うことはないのだが、

  • 前列が一人しかいない状態でシャドウエントリを使うと、ひっかきモグラも後列を狙い始める。
  • その条件だとシャドウエントリしている前列も狙われ、確率も高い。

つまり、シャドウエントリによって攻撃対象がひとりもいなくなったモンスターは、攻撃対象外のメンバー全員からランダムで選ぶようになるのだが、この中には対象から外れたシャドウエントリ成功者も含まれる
ひっかきモグラの場合は、「前列の対象がいないから、前列後列の全員からランダム」ということになるようだ。

HD版シャドウエントリの成功率

シャドウエントリは常に判定されており、成功と失敗を確実に見分けるのは手間がかかる。
ひっかきモグラの場合は前列の各メンバーひとりずつにシャドウエントリを使わせ、乱数固定で比較して1手ずつ成功したかどうか見極めていくという方法で判定はできたが、これでは手間が数倍になる。

そこでデスマンティスを使う方法が考案された。
デスマンティスは絶対にHP1位のターゲットしか狙わないのだが、1位がシャドウエントリ成功すると、この場合は2位のものを新たな1位と判定し、絶対に2位しか狙わない。これなら1パターン観測するだけで成否を確実に見分けられる。

やり方:
レベル20のダークハンター、レンジャーをそれぞれ複数人用意し、ひとりだけHPに差をつけ、難易度をPICNICにする(レベル20でも耐えられる)
B18で中断再開し、北のほうの採取ポイントの北西側(A-4の真ん中北側くらい)に向かい、1戦目でデスマンティス×2と遭遇させる。HPの高いひとりにシャドウエントリを維持させ、狙われた回数を記録する。

こうしてHD版シャドウエントリの性能を、レベル別に同一乱数で比較したものが以下の通り。

調査記録 

1レベル上昇ごとに、狙われ回数が確実に落ちていったのが確認できる。
試行回数100回と少ないため、狙われ回数が1回も変わらないレベルもあるが、同一乱数で比較したことで、乱数ぶれで効果が上下したりはしていない。試行回数を増やせばもっと正確な確率に近づいていくだろう。

そしてレンジャーとダークハンターでも性能差がある。全体的にレンジャーのほうが効果は高いが、レベル15だけダークハンターのほうが勝っている。
この確率は、DS版のシャドウエントリの成功率と同一の可能性が高い。使われている計算式、仕組みはHD版で変更されているのだが、パラメータ自体は変更せずに残したようだ。

※と言っても、そのパラメータを公開していた日本語サイトは現時点で失われており、存在しないのだが…
ファミ通の攻略本にも書いてあったと思いますが、今回発掘できておりません。

海外サイト、下記で紹介するwikiに確率が書かれているのを見つけたが、2026年7月現在レンジャー(レベル10で80%)の数値に対し、ダークハンターの数値はレンジャーのコピペになっており、不正確であることが確認できます。実際はこの両者は確率だけでなく速度補正も違うようです。

列そらし効果がない

森ネズミに対し、3:2陣形で前列のHP1位がシャドウエントリするパターンと、後列の2位がシャドウエントリするパターンそれぞれ比較した。やはり「使用したひとりがいないものとしてターゲッティングされる」という結果で、それぞれ前列2位3位、後列1位に攻撃を押し付ける結果になった。
そしていずれの場合も前列、後列の合計狙われ回数には変化がなかった。
HD版シャドウエントリには、DS版には存在した「列ごとターゲットをそらす効果」はない
一見してシャドウエントリの性能はオリジナルより向上しているのだが、少なくとも意味のある効果のひとつが失われていたのだ。
またDS版挑発にも同様の効果があるが、HD版にはないと思われる。

まあ、そんな効果の存在自体、最近聞いたばかりだったのだが…

DS版挑発・シャドウエントリと、突然の英語サイト情報

DS版の挑発には、使用者本人だけでなく、列ごと攻撃を引き付ける効果があるらしいことが、最近調査された結果で明らかになっていました。こちらのツイート参照。普段は前列9割くらい狙われるところ、挑発5を前列が使うと後列はさらに減少。
後列が使ったほうがわかりやすく、後列2人が挑発すると前列の狙われ率は7割くらいまで低下するという。
効果がない敵が結構いるという致命的な問題があるわけですが…

これを見て、あらためてDS版の挑発の確率値がどっかに書いてなかったかなあと海外サイトを探していたところ、不意に出てきたのが次のサイト。

https://www.etrianodyssey.wiki/wiki/EO1/Formulas

Etrian Odyssey Wiki。2018年から存在する英語wikiだが、去年あたりから計算式のページが作られており、英語でもあまり見かけない情報が書かれていた。
狙われ率についての記述があるのが、「Enemy Aggro」の部分。要出典となっており、どこから持ってきた情報なのか、wiki編者のオリジナルなのか定かでないが、DS版、HD版それぞれの挑発、シャドウエントリの効果がはっきり書かれている。

DS版の内容を要約すると以下のようになる。

  • 通常は前列が90%、後列が10%狙われる。
  • 各列はHPの高いキャラクターから順に、60%、30%、10%の確率で狙われる。

これはDS版の調査だけでなく、前述のHD版森ネズミで調べた結果とも整合する。

  • DS版は、列選択にスキルによる補正がかかる。Provoke(挑発)の5以上なら200%→×2。
    前列が挑発5をした場合に、前列が狙われる確率は、
    (90%×2)÷(90%×2+10%) = 180%÷190% = 94.7%
    と計算される。
  • DS版の場合、各列での挑発での狙われ率は、HP1位のキャラクターが挑発した場合は、
    (60%×2)÷(60%×2+30%+10%) = 120%÷160% = 75%

どうやら実測データとかなり近いようだ。ただし、情報が不足している点もある。これ以外のターゲッティング思考の存在にも言及してないし。
不足する内容のひとつに、同じ列のふたりが挑発した場合の列引き寄せ効果が明記されていない。どうやら、この場合は2回掛け算するということで良いらしいです。
後列2人が挑発5した場合の前列の狙われ率は、(90%)÷(90%+10%×2×2) = 90÷130 = 69.2%となる計算で、実測と近い数値になっている。
ふたりも挑発する陣形が現実的はともかく、列ごと引き寄せ効果はあなどれないものがあるようだ。

DS版挑発の評価

現実を想定すると、たいがいの場合は前列HP1位のパラディンが挑発をすると考えられる。
前列内での狙われ率については、通常でも6:3:1で6割はパラディンが狙われるのだが。
さきほどの計算をもっと単純に説明すると、200%の挑発を乗せると6割から倍増し、12:3:1になる。

つまり計算すると75%…挑発の効果200%とは、1位のキャラクターだと15%上がるという意味らしい。
パラディンが2位に転落した場合なら、6:6:1となり1位と同率の約46%になる計算。

もちろん15%も差があるのなら、丁寧に実測すれば効果はすぐ観測できただろうが、15%程度では丁寧に見てないと気づかないレベルだろう。この計算なら倍率400%くらいほしいところだ。
しかも使用1ターン目には効かない。(ターン中にキャラクターが倒れた場合の再ターゲッティングには効きそうとのこと)
もともと狙われやすいHP1位か2位のパラディンでないと大きな効果も期待できない。3位はほとんど狙われないという前提も知らなければ、正しく評価することさえできないだろう。
そして根本的に、DS版挑発が効かない敵がいること。挑発が有効なのは、HP順位型のほかに、「全体均等タイプ」には効くが、他のタイプでの効果は未確認。
全体均等とHP順位型以外、すなわち「何かの条件でターゲットを絞り込むもの」には挑発が効かないのではないかと予想している。
まだ他に効くタイプがいないか不明だが、ひっかきモグラ以外にもかなりのモンスターが効かないタイプに該当すると思う。こいつらは均等なターゲッティングをするため、HP1位を狙う確率も相対的に低めになる。

そしてこれだけの悪条件にもかかわらず、早期に取得できるスキル配置。パラディン=盾役という先入観からの採用率の高さ。

つまり、DS版の挑発は単純に効果の小さいスキルということではなく…最大条件でも十分な効果と言えないのが困るのだが…多数の理由により複雑な弱さを持った、かなり厄介なスキルだった

DS版挑発の挙動に、これまでバグと断定できるものは確認されておらず、明らかに機能自体は働いていた。ただ、ひっかきモグラ相手に効かないのはバグでないと仮定しても、調整ミス、設定ミスの範疇と言っていいと思う。
HD版で大幅テコ入れ、効果そのものを変更されたのは妥当な扱いだったと言えるだろう。

なお本節は私がwikiを見つけた2026年7月の時点で透明灯氏による実測データが既に存在したので、それを参考に式と比較させていただいたものであることを改めてここに記載します。全体均等型には挑発が効くことについても、先にシャドウエントリが有効だと発見されたことに基づき、私も検証を行って確認した情報になります。

DS版について、後で個人的にも実測してみるつもりですが、もう少し後になりそうなことをご了承ください。

DS版シャドウエントリは効く

DS版のCloak(シャドウエントリ)も同様に計算されるようです。レンジャーのシャドウエントリ10なら上記wikiでは80%となっているが(ダークハンターの数値は間違ってるがレンジャーは合ってるようだ)、倍率に変えると0.2。
HP1位がシャドウエントリ10を使えば(60×0.2)÷(60×0.2+30+10) = 23%まで低下する。
列ごとそらす効果のほうは、前列の狙われ率(90×0.2)÷(90×0.2+10) = 64%となるようだ。
1位の使用者個人の狙われ率なら、推定約14%。元が54%なので削減率80%には届かないが、7割以上は減らせている。
後列なら、ひとりが使うだけで後列全体の狙われ率が推定2.2%まで落ち込む。
これ、けっこう大きくないか。挑発と比べて顕著な効果があるように見えるが…

こちらは式の発見後の7月に実測されたデータを見せていただきました。シャドウエントリ5でも予想通り十分な効果が観測されており、特に列そらし効果は500試行で明確に見えるほど大きく、さらに複数人で高レベルのものを使うと列の狙われ率を0%まで下げることができるとのこと。どうも確率計算時に途中で端数の切り捨てを行っており、2人以上の掛け算で0%になり得るようです。

もともとシャドウエントリの検証が少ない理由として、仮に効いてたとして使い道がはっきりしないというのがあり、これでも実戦で1ターン使うほどの価値があるかは微妙なところなのですが…
挑発と同様、使用ターンには効かない、効かないタイプの敵も多いという前提がありますが、ちょっと「実感できない」「大した効果がない」で済ませるには大きすぎる効果だと思えます。

英語wikiのその他の計算

上記wikiには他にも知らなかった情報が多数書かれていましたが、少なくとも「Boost Increments」についてはブースト上昇量にランダム要素はなく、明確に間違い。
他にも「ふたりが同列で挑発」など細かい条件での計算が書いてない箇所もあり、このページに書かれていることが正しいかは、やはり過信せずに確認を取っていくしかないようです。

クリティカルの発生率は常に一定だと書いてあり、LUCなどは影響しないようです。これが事実ならクリティカルによる乱数ズレは起きませんが、本当かどうかは気をつけておきます。

逃走二次判定と逃走準備

「Escape」節の記述について。
世界樹1の逃走には二次判定(secondary check)というのが存在しており、逃走失敗した場合にある条件で再度判定が行われるというのだ。
その判定が機能する条件は、「パーティ全員のLUCの合計値がレベルの合計値の3倍以上」であること。6倍、9倍だとさらに確率が上がるのだが、つまりレベルがとても低い状態でないと発生しない。レベルとLUCの上がる速度は同じくらいだから、あっというまに差は縮まっていく。レベルの3倍のLUCなど最序盤しか無理だ。

なんでそんな設定なのかわからないが、この二次判定はどうやら実在する。レベル1のレンジャーひとりパーティ(LUC10)は、LUCがレベルの9倍を超えているが、この条件だと絶対に逃走に成功することをHD版で確認した。

そして、問題はレンジャーのスキル「逃走準備」は、逃走の成功率を単純に上げるのではなく、この判定時にしか使われないらしいということ。
逃走準備はLUCに倍率をかけて、二次判定が起こる条件を緩和する、らしい。普通はレベル5くらいでほとんど二次判定は起きなくなるのだが、逃走準備を使えばそれをもう少し上のレベルまで引き上げ、逃走成功率を高める…
つまり高レベルだと逃走準備でも二次判定は起きず、効果がなくなる、ということのようなのだが、
→wikiの記述が間違っていたようです。wikiが情報源としているredditの記述には「逃走準備は二次判定にしか機能しない」と書いてあり、それがどのように機能するかの説明はありませんでした。redditになくwikiに足された記述だとLUCに倍率がかかるように書いてありますが、どうやらそういう効果ではない。

書きかけ要素

シンリンチョウは乱数固定の調査が難しい。一匹だけで10ターンくらいなら成立するが、試行回数が増えると「いらつく羽音」が問題を起こす。縛りが既にかかっていると羽音は強制ミスになるが、成功とミスで乱数の消費数が変わるようだ。縛り成功ターンがずれないよう調整する、必ず縛りを治療するなど合わせられなくもないと思うが、手順や記録が複雑になっていく。どうしてもシンリンチョウで調べたいのでなければ避けたほうがよさそうです。

消費アイテムの乱数変動をいくつか見たが、回復アイテムは固定回復ばかりであり、乱数を動かさない。テリアカβ、アクセラ、絶耐ミストも影響なし。
全アイテム見たわけじゃないが、たぶん乱数を動かすのはテリアカαだけと思われる。
効果は3箇所縛り回復100%で、普通に考えてランダム要素なし。縛り回復箇所がランダムの低レベルのバインドリカバリと同じルーチンを使っているのだろうが、乱数の使い方は不明です。
なおテリアカα(縛りなし時)での乱数ズレはたぶん2回で、通常攻撃の回避1回ぶんのズレを相殺できるっぽい結果が出ています。

AGIを揃えているのは、攻撃を回避すると乱数がずれる(ダメージ計算とクリティカル判定を省略する)のでは、と考えたため。2種類ほどの調査で確信が得られましたので、本記事では確定事項として進めることにします。調査1 調査2

初代の回避率はAGIとレベルの合計値が関わるとのこと。レベルが高いと回避率が上がりすぎるので、低レベル時はAGIを高くして調整する必要あり。ただし影響自体がさほど大きくないので、10ターンくらい回避回数を一致させるだけなら厳密に同じにする必要まではない。

シザースクラブで明らかになったようにDEFENCEも乱数に影響するケースはあるが、DEFENCE自体は乱数を消費しない。ではDEFENCEしているキャラクターを狙うような敵は存在するか?今のところそのようなものは発見されておらず、存在しないような気はするが、はっきりは言えない。だがひっかきモグラには関係ないだろう。

ところでオートガードが乱数を消費する行動なのはまず間違いなし。
→オートガードで乱数が動いたのは観測ミスの可能性が高い。要検証。
いやしかし、オートガードは乱数を消費せずにランダムで発動してるという不可解な話なのだが。

装備なしのアルケミストでも微小ダメージになるひっかきモグラだが、クリティカルだと微小ダメージではなくなるので、乱数消費が低確率で変わる可能性が……LUCなどでクリティカル率が変わらないという情報が本当なら、乱数ずれの心配はないが……これは今後は注意しておくしかない。上記での調査には問題は起きていないと思う。

ひっかきモグラの検証で、レベル65のメンバーだと何もしてないのに同じキャラクターが6回連続で狙われるパターンが50ターンの中に複数回現れており、何らかの攻撃集中ルーチンを実は持ってるのか?と考えたが、レベル20のダークハンターだとそういう傾向は見えなかった。どうやら乱数だけの問題のようだ。
50ターン程度の試行回数でも確率はかなり均等に出ているが、攻撃集中の偏りは起きている。乱数の変動だけなら10ターンくらいでも観測できるが、統計としては50ターンでもぜんぜん信用できない。
先人に倣うなら500回です。
レベル65と20の違いは、回避率の差にある。もしかしたら、回避することで乱数のリズムがズレてそういう偏りが出やすいパターンになるのかも…と可能性だけなら何とでも言えるが、ただの偶然でも説明はつくでしょう。

挑発ふたりいると乱数の動きが違うのではないか?と予想を立てているので軽くでいいから調べたい。

難易度によるダメージ差は少し調べたので一応書いておくと、1ダメージが0ダメージになることはないようです。難易度によるダメージ振り直しは起きない。
ただしPICNICだと回避率が上がるので、乱数固定は崩れます。

難易度PICNICを使えばレベル20くらいのキャラはすぐ作れる。だが乱数固定が崩れるので戻し忘れに注意。

2007年の検証

2007年の検証ブログには他にも気になる記述がありました。

ギルドTWINS 世界樹の迷宮探索記録:(その他)シャドウエントリに関する超簡易考察

ひっかきモグラに対しシャドウエントリは効果確認できず。
これはひっかきモグラが不適切な相手だったことを、今の僕はほとんど確信しているわけだが…

ギルドTWINS 世界樹の迷宮探索記録:(その他)シャドウエントリに関する超簡易考察 追試

シャドウエントリの使用者をレンジャーからレベル11のダークハンターに変更したところ結果に偏りが生じている。
シャドウエントリ不使用時のデータはない。

ギルドTWINS 世界樹の迷宮探索記録:(その他)シャドウエントリに関する超簡易考察 追試の追試

隊列を変えたら偏りが消えたという。
…果たしてそうなのだろうか。

→これは、この程度の乱数の偏りは生じるというだけの話だったのかな、と思いますが、まあはっきりはわかりません。偏り方のクセが出る条件なども無いとは言い切れませんし…

ギルドTWINS 世界樹の迷宮探索記録:(その他)特殊ターゲッティングロジックを持つ敵と挑発

ゴーレムは絶対に後列しか狙わない。前列の挑発も効かないと書いてある。

ギルドTWINS 世界樹の迷宮探索記録:(その他)挑発とシャドウエントリに関する簡易実験

デスマンティスは必ずHPが高いキャラクターを狙うと書いてある。2026年初頭の時点で、これを伝えているものはここだけだった。

DS版の挑発は、パラディンの狙われ率を(あまり強力ではないが)倍率強化するスキルであり、絶対に狙われない状態では機能しないのだ。

2007年に何度も検証をしているのは、やはり本当に効いてないのか?という引っかかりはあったことを感じるものの、どうせ効いてないだろうという先入観も同時に見える。検証も文章もだんたん適当になっているのが読み取れるから…
だがもっと続けていれば、ターゲッティングの仕組みや乱数固定の方法などの知見は集まったんじゃないか。
検証する相手さえ正しければ、乱数固定までしなくても差は生じたはずである。HPを見て対象を選ぶ敵がいることに気づいていたなら、他の事例もあることが予想できる。
その結論までたどり着けなかったことを、今まで何もしてこなかった僕も責めることはできないが。

この検証ブログは2007年4月を最後に動いておらず、世界樹2の発表を前にインターネットに埋もれていったようだ。

きっかけ

この検証のことを思い出したきっかけ

HDドラクエ1はソロで有効な行動を突き詰めていく結構マニアックな内容で、レベルを上げて殴るゲームではなくなってるぞ、というお話が盛り上がっていたのだけど、HDドラクエ1もレベル上げ自体は有効、最低限のレベルがないと進めないゲームであるというのはまずひとつ(これと同種の反論として某サイトの某ライターWがチート同様のMOD使用を公言するかなりのクソ記事をあげたのだが、一緒にしないでもらいたい)。
でヘイト管理システムの例として世界樹についても言及していたものがあったんですが、僕は世界樹は1作目に限らず全体的にレベルを上げて殴る側のゲームだと認識しており、いや100%そうでもないんだけど、85%くらいはそういうゲームじゃない?という感じで。そして世界樹1の挑発はバグってるとずっと言われてるくらいには頼られてなかったわけです。DS版は実際には機能してるのは間違いないとして、本当にバグはないのかということだってよくわからない。
また効果が実際には大きかったとして、初代のバランスで挑発は頼れるほど有用なスキルなのか?初代パラディンはタンク職として本当に有効なのか、という疑問もあり。

パラディンの評価

初代パラディンは、序盤は非常に強い職なのですが、それは防御だけでなくSTRが普通に高いことによります。足は遅いですが、1層では単純にソードマンより強いと思われます。
ソードマンのスキルが充実してくる2層あたりからはパラディンの攻撃力が見劣りしてくるという設計。
終盤においてもシールドスマイトはソードマンの斧技以上の高威力だが、燃費がよくない。だが通常攻撃も弱いというほどじゃなく、足手まといとはならない。なによりHPが多いキャラクターが前衛にひとりいるという、その状況自体がパーティを助けるわけです。
しかし2~5層では、属性ガード以外には際だった強さもないという感じに思ってる。それにザコ戦は速攻戦が通用するゲーム。
オリジナルの挑発がもっと有効だったとしても、あまり頼らなかったような気はする。個人的にもHDで実際まったく挑発を使わなかった。
とはいえHD版の後列挑発も引き寄せ率100%に達するわけで、使いどころを間違えなければ強力そうではある。
前列の役目を捨てるのはちょっともったいない気もするのだが。
このほかフロントガード、パリング、防御陣形はいずれもボス戦向きと思うのだが、ちゃんと使っていけばハマるときもあるだろうか。実際どうなんでしょう。

Wizardry版権が移動2026

今度はATARI

アタリ、伝説のRPG『ウィザードリィ』の権利を取得

ATARIがWizardry#1~5の著作権と、その他の権利を取得したとのニュースリリース。
ATARIはリメイク版Wizardryを制作したDigital Eclipseの親会社でもある。

↓こちらは日本語の同一リリースです。

ニュースリリースでも書いてある通り、678の権利は日本のドリコムにあります。Wizardryのタイトルの権利を持っているドリコムは、#1~5の権利はもともと所有していません。

ただし、このリリースは「そもそも『Wizardry』のタイトル自体の権利はドリコムにある」ということを書きそびれています。
海外の一部で誤報が出たようですが、ドリコムはタイトル自体の権利も持っており、それをアタリに売却する予定もありません。
このため、今後アタリがWizardryを販売する場合も、ドリコムからタイトルの使用の許諾を得る必要があります。

また、本件はドリコムはアタリから事前に連絡を受けていると声明を出しており、特に両社間のトラブル等は伝えられていません。

アタリが権利を取得した経路は明確にされていませんが、2025年の時点ではSirTech EntertainmentなどがWizardry#1~5の権利を所有していたことがわかっています。
おそらく、これらから購入したものと考えられます。

これは良いニュースですか

今回のニュースには、ウィザードリィの多くは長年触れることができなかったと書かれていますが、Wizardry1については、既にswitch、PS5などの新しいゲームプラットフォームへのリメイク移植が行われています。
リリースの通り、長年触れにくい状態にあった旧シリーズですが、その状態自体は2023年には既に解消されていたものです。
今回の発表は、ただ単にその権利の所在が移動したことを伝えているのみです。

>ゲームにとどまらず、マーチャンダイズ、カードゲーム・ボードゲーム、書籍・コミック、テレビ・映画プロジェクトの展開も予定されています。

とも書かれていますが、これは形式的に言っているだけとも受け取れるもので、アタリが実際にこうした計画を進めているものかどうか、わかりません。
2026年5月現在、リメイクの続編等の正式な発表はなく、現時点でこれは良いニュースとも悪いニュースとも評価できません。

しかし、アタリには意欲がある旨が書かれていることは事実ですので、まあ期待だけしておいても間違いではないと思います。

ドリコムも誤報の訂正を行ったのみで、権利の移動による変化は現時点で起きていません。
両社は連絡も取り合っており、互いに非協力的な立場であるようには受け取れません。

権利の移動が行われた理由は明確ではありません。リリースの通りアタリはWizardryを広く展開するために権利を取得したのかもしれませんが、前権利者(おそらくSirTech Entertainment Corp.)が事業を縮小するなどで積極的に手離したい理由があったのかもしれません。

なお5月時点で、配信中のWizardry: Proving Grounds of the Mad Overlordの権利表記はまだ変更されていないようです。

気になることは書いてある

ドリコムの権利について誤報が出た理由として、リリースの以下の記述から誤解した可能性もあります。

>なお今回の契約には、上記以外の『ウィザードリィ』関連のゲーム、契約上の権利、およびその他の知的財産も含まれています。

Wizardry#1~5のシナリオの権利だけではなく、関連する知的財産もアタリが取得したとあります。
タイトル自体の権利はここには含んでいないのですが、このリリースからそれを読み取るのは困難です。
また、具体的にアタリが所持している知的財産が何であるかは明確にされていません。

これは……なんなん?

アタリの声明2

ドリコムの訂正を受けて、アタリの新たな声明を一部メディアが伝えています。
「ドリコムがウィザードリィの商標を持っていること」がアタリの見解としても肯定されており、そこに対立は生じていません。

しかし、気になる内容が。

>This includes unique expressions and continuously named characters such as Werdna and Trebor, a constructed and unique spell language, the town of Llylgamyn itself, iconic items, distinctive and continuous monsters like the Creeping Coin, and unique components like the resurrection mechanic.

>ワードナやトレボーといった固有の表現や継続的に登場するキャラクター、独自に構築された呪文体系、リルガミンの街そのもの、象徴的なアイテム群、そして「しのびよるコイン」のような特徴的かつ継続して登場するモンスター、さらにはロスト・復活システムのような独自の要素が含まれるという。

これらの初期5作の“基盤IP”(The underlying [intellectual property])はATARIの手にあるということです。

この声明2は、ごく一部のメディアしか伝えていないようです。GAME Watchにはメールで送られてきたとのことですが、他社は受け取っていないのかもしれません。(他にはAnime News Networkが同内容の一部のみ伝えている)

復活システム(unique components like the resurrection mechanic)までも含むと……?

呪文名の権利の考察2026

ひとまず、アタリの声明のひとつである、「独自に構築された呪文体系」(a constructed and unique spell language)について。

当ブログでは、Wizardryの固有の呪文名に個別の権利まではないのではないか、という予想を何度か書いてきました。
今回の声明は、その反証となります。
実のところ、旧シリーズの呪文が、旧シリーズの著作権とともに国外の会社にあるという見解が明確に出されたのは、おそらく初めてです

※呪文名の権利が日本にないらしいという、曖昧な情報を伝えるインタビューが過去に4Gamerにありましたが、そのインタビューの版権解釈には現在振り返ると不審な点が複数あり、申し訳ないが「明確な見解」とは認められねえ。

今回、アタリが取得した権利は、過去に旧サーテック社および故アンドリュー・グリーンバーグのいずれか、あるいは両者が所有していたシナリオの権利を正当に受け継いだものと考えられます。
そしてこの呪文体系についても当時から同様の扱い、旧シリーズの権利とセットでいずれかに所持されているものだったと考えられます。

つまり、旧呪文名が使用できなかった平成ウィザードリィ(エンパイアからルネサンスまでのこと)については、当時からこの権利の存在を認識したうえで、それに触れないように制作されたものではないかと想像されます。

その仮定でも疑問は残るわけですな。

ドリコムはどうやったん

すっかり放置してしまってるダフネだが、久しぶりに見ても呪文名が変わってるということはもちろんなかった。
だがドリコムは、本作に自社以外の版権を一切表記していない。

ドリコムは今回の報道について誤報の訂正を行ったほか、自社の権利には変化がないこと、前権利者ともアタリともやり取りしていたことを明かしているが、声明2に対しては特に反応もしておらず、現状に何ら問題を感じさせない。

つまり……やっぱりドリコムは旧呪文名を問題なく使えているのだ。

うちのブログで書いてきたことだが、そもそも呪文名のような固有名詞だけで著作権が成立するのか、というのがひとつある。
アタリはこれらが通るか微妙なことを知ってか知らずか、とりあえず主張しているだけという可能性だってある。
まあしかし、そうした主張はおそらく前からされてきたものであり、そしてドリコムもそれを無視して話を進めてきたとは考えられない。
もちろんアタリにしろ、ドリコムが無法を働けば黙っているとは考えられない。連絡が取り合えている現在、権利が書いてなかろうとノーチェックで通してはおらんだろう。

ありそうな仮定としては、もちろん単に呪文名の使用に許可を与えているという可能性だ。ライセンス料みたいなものを払ってるかもしれない。
ただ、それなら権利表記をしてない理由が不明だ。呪文の権利はサーテック→アタリにあれど、その権利を表記しない形でも貸し借りするものだろうか?
表記を避けたい理由もお互いにないと思うのだが。
あるいは、ウィザードリィ同士で権利を貸し借りくら構わんだろという、ゆるい関係かもしれないし、ドリコムは旧作側の権利者から見ても、タイトルを貸してくれている重要なビジネスパートナーである。特別扱いで権利なしで許可してもおかしくないか。

もうひとつ、単純な呪文名で著作権が成立しているわけではないという可能性もある。
アタリの今回の声明を見ても「呪文名」じゃなくて「a constructed and unique spell language(構築された独自の呪文言語)」という回りくどい表現を使っている。
呪文名だけではなく、構築、体系そのものと組み合わせて著作物として主張しているのでは?
ダフネは呪文名をそのまま使っているとはいえ、効果はアレンジされ、不一致である(呪文の威力・範囲・ターン数・習得順序・MP制など)。
ゲームシステムが根底から違うダフネは、うわべの固有名詞を使用しても旧ウィザードリィの権利の対象に含まないのかも。そのことをお互いに合意した結果、権利を表記しないことを選んでるということかも?

このことは、旧呪文名を使用していない五つの試練についても考えられる。こちらは呪文の効果がほとんど旧作同様で、呪文名だけが変えてある。これは、呪文名と効果を組み合わせると権利に明確に引っかかる、だから今でも回避してる、と考えることもできる。
表面的な呪文名だけの使用は許されても、総合点でラインを越えると旧ウィザードリィの権利を侵すという考え方だ。
これは、ありえなくはない気はする。

以上は憶測です。本当は何もわかりません。
しかし、あるのかないのかも曖昧だった呪文の権利が実在のものであると、権利者が明確に表明したのは確かである。
そして、ドリコムは何か問題ない方法でこれを使用しているのだ。
そう考えるしかない。

呪文名だけではないんだと

今回の声明で気になる点はまだある。対象が呪文名に留まらないことだ。

ひとつは固有名詞。これはわかる。
リルガミンと世界が異なるダフネにはあまり関係ないが。(イアルマスの登場イベントでリルガミンの名前が出たらしいが未確認)

問題は「distinctive and continuous monsters like the Creeping Coin」(特徴的で継続的に登場するクリーピングコインのようなモンスター)。
サイデルやマーフィーズゴーストなどと違い、クリーピングコインは旧ウィザードリィ固有のモンスターだとは考えられておらず、権利があるという考えそのものが従来なかった。
ダフネにも出るし、五つの試練にもいるみたいだし、他社のカルドセプトにも出る。
だいたい普通の動詞と普通名詞の組合せだけのものに著作権を主張できるのか?
クリーピングコインは個性的だが、無個性なモンスターだ。

そして、「unique components like the resurrection mechanic」というのは、復活の仕組みのような独自要素だろうか。
旧ウィザードリィは死からの蘇生に失敗すると灰になり、さらに失敗するとロストになる。このルール自体はTRPGのゲームルールから着想したものだろうが、灰→消失と死亡段階を明確に区分しているのは、「灰」という表現を選んだことも含めて個性なのかなという気はする。
他に同一表現の元ネタあったら知らん。

この2点については。
オリジナルとして権利を主張するのはちょっと難しい気がするよね?という感じがするのだが。
しかし一方でWizardryの個性として認識されている要素だとは認められる。

線画ダンジョンの件

以前の記事で言及した通り、五つの試練の線画ダンジョンについて、権利上の問題が過去に指摘された可能性が高い。

改めて経緯を書くと、2021年に起きた『五つの試練』の発売延期と合わせて、iOS版の『戦闘の監獄』と『慈悲の不在』から線画ダンジョンが削除されるということがあった。
おそらくは、旧シリーズの権利を持っていた旧サーテックの後継会社から何らかの申し立てがあったのだろう、と想像できる。

が、結局これは問題がなかったようで、しばらくして線画は復活した。

線画ダンジョンは1970年代のコンピュータゲームに存在した表現だ。「市販されたコンピュータRPG」という条件まで絞り込んでも『Akalabeth』というめちゃくちゃ古いRPGで使われており、後発のWizardryがその権利を持っているはずがない。
そんなことは誰でもわかってるはずであり、旧サーテック方面の権利者が、線画ダンジョンの権利を主張したとは考えにくかったのだが…

今回の蘇生システムなどの主張を読んで気づいたことは、ひとつひとつはWizardyのオリジナルと言い切れないが、要素が集まるとWizardryとしか言いようがないものを構成することは起こりうるということだ。
灰とロストのある蘇生システム。線画ダンジョン。ダイス計算の呪文。クリーピングコインなどの特定モンスター。それらのひとつひとつはありふれたものだったり、Wizardryのオリジナルですらないかもしれない要素だが。
このコンボパーツが複数組み合わさると、ウィザードリィだと判断できる状態まで持っていくことは実際に可能だろう。
それは、良くない気がする。

アタリの声明2は広範な主張のようで、どこからどこまでアウトとはっきり示していないが、本質的にはこのことを言ってるのかもしれない。
かなり勘を含む予想だが。
そういうことであれば、荒唐無稽な主張とも言いにくい、ようではある。

五つの試練の線画ダンジョンは、結局は許されたが、これを含む多数のWizardryっぽい要素を導入しておいて旧ウィザードリィとは無関係ですよと本当に言い張れるのか。そうした事態の確認期間として、一時的にも線画ダンジョンの削除を行う必要があったのではないかなと…
これは以前書いた憶測とほとんど同じですが。

今が大丈夫なので?

本質はともかく、アタリの主張する権利が今までの想定よりかなり広いことは確かで、本当に書いてある各要素ひとつだけで権利が認められるなら現在販売されている作品も余裕で抵触する
蘇生システム、すなわち死→灰→ロストの仕組みについては、現に同じゲームはダフネも含めて複数ある。旧ウィザードリィの権利を明らかに取ってないものばかりか、ウィザードリィというタイトルがついてないものさえ対象となるだろう。
アタリが書いてないだけで、他のゲームシステムについても主張はあるかも。

ただまあ、このシステムひとつでアウトになるよという主張をアタリ側がしてくるともちょっと思えないけどな、と。
五つの試練が発売延期された時点で、おそらくそういう話はしている。その時の権利者は、その頃もうDigital Eclipseと組んでいたと思われ、アタリに変わったことで急に態度が変わるとも思えぬ。
しかし当時何があったのか、正確な経緯は明かされていない。本当はどうなのかわからない。

蘇生システムを旧作版権なしで採用したゲームは、90年代末には既にあった。それが問題だと思ってる人は皆無であり、いまさら言われても困る。言うのが30年遅いのだ。

ただね…個人的な意見を言わせてもらえば、旧作の権利を使わずに旧作のゲームシステムを再現したウィザードリィエンパイアについて、なんだかなという感想は持っていた。

こうして関わってくるとは思わずに書いた記事だ。
わざわざ書かなかったが、エンパイアも死→灰→ロストのシステムは旧作同様、そのままである。

このゲームシステムの権利、アタリは持っていると主張しているだけで、裁判等に持ち込んだときに本当にアタリに認められるものかは、厳しい気がするが。
それはそうと、これは旧Wizardryの個性だ。元ネタが他にあったとしてもだ。
それを日本のゲーム、平成ウィザードリィとそのフォロワーたちは権利を確認することなく26年前から使用してきたと言われたら……
それは反論は難しい気はする。

蘇生システムの権利、声明を読んでも実際に権利が認められるか微妙なように思うが、旧Wizardry特有のものだというのは全く否定できない。Wiz6やドラゴンクエストなどでは実際こんなものは採用していない。
ここの権利を主張されると苦しい立場のゲームが現に何本も存在するのだが、むしろそっちのほうが問題なのでは?

五つの試練は、実際は発売当時に旧サーテック自身が許諾したゲームだ。その当時まともに内容チェックされてない懸念はあるものの、今さら言っても遅いので通されるのが当然と言えるだろう。
ただ、これの新バージョンが発売延期を経て今も許諾され売られてるのは、歴史的背景から特別に許可されてるだけかもしれない……

エンパイアや五つの試練のようなゲーム、つまり旧作の権利や固有名詞なしにタイトルの権利だけで旧作のゲームシステムを再現というやつ。既存作なら認められてても、今後新作として同じようなゲームを作るのは、案外無理ということも、ありえなくもないのかなと。

いや、どうだろうな。

悪いニュースということはないと思う

良いニュースとも悪いニュースとも取れない中で、実際にアタリが権利を振りかざしてる動きは確認できない。これからそういうことをするという気配も、あるならアタリに移る前からやってるだろうし。
現時点で個人的に不安に思うことはあるかもしれないが、他人にまで不安を煽るようなことは、書けるだけの背景はないと思う。
アタリの声明2で「うちの権利はタイトルにはとどまらないぜ!」と言ってるのは、純粋に権利を主張してるものだろう。
だがこの程度の表現でも、一部に対しては牽制としての効果を持ってしまってるのは、そのようだった。

間違いなく言えるのは、この権利が少なくとも正当なルートで取引されアタリのもとに移動したということである。
過去に、Wizardryの権利は版権ゴロに買われたんじゃないかという疑念を持たれたことはあったのだが、実際は初代の権利者のもとにずっと保持されていただけだった。
それが時を経て、きちんとリメイクを制作したDigital Eclipseの親会社であるATARIに集約された。何の脈絡もない相手に売り飛ばされたわけではない。

そんな彼らがもし今後、権利を主張して何かを妨げるようなことが実際に起きたとしたら。
それは彼らが持っている権利を正当に行使したものだろうということであって、それは正しいことであろうということで、いままでウィザードリィエンパイアのようなものが見過ごされてきたことのほうが間違ってるという可能性も出てくるわけで。

以上は全くの仮定なので、実際にそういうことが起きてから考えればいいと思いますがね。
この数年の動きを見ても、当面そのようなことは起きないとは思うが。
旧エンパイアのようなもの、すなわち「旧ウィザードリィの権利を使わずに旧ウィザードリィを再現した感じのもの」は、新規で作りにくい状況が既にできあがっている、ということは、ないとは言い切れないのかも…

アタリもわかってない?

むしろ心配なのはアタリ側がよくわかってるのかということで、GAME Watchの記事はこう書いてる。

>そして「しのびよるコイン」のような特徴的かつ継続して登場するモンスター

英語の声明と合わせてクリーピングコインのことと確認できるが、そんな訳は僕の記憶にない。ファミコン版以前の文献にもないと断言はできないが、「しのびよる」なんてファミコンみたいなひらがな表記、まずありえないと思う。
アタリのメールは英語でGAME Watchに届いたのだろうか?それをライターが誤って訳したのか?
いや、アタリの担当者が日本語版ウィザードリィを知らないでそれっぽい訳にしたものでは?

あらためて、最初のニュースリリースのほうを読むと、内容の正確性に気になる点もいくつかある。
>オリジナル『ウィザードリィ』の世界観を構成する知的財産は、25年以上にわたって開発者やファンの手の届かない状態にありました。
とあるが、ニューエイジオブリルガミンのWin版は2002年まで売ってる。日本ではまだ25年経ってない。
アタリのCEO兼会長であるウェイド・ローゼン氏の発言だと「more than two decades(20年以上)」となってて、こっちならおかしくないが、日本語リリースだと会長の発言も25年に補正されてる。どっちよ。
>あるいは「リルガミン・サーガ」とも称される多大な影響力を持つこのIP
リルガミンサーガは日本でのみ発売されたPS版の固有タイトルであり、海外も含めて初期5作の通称という認識ではないと思うのだが…

訳したのがアタリの担当者なのかは不明なのだが、チェックが行き届いてないことは確かである。なんとなく、担当者が日本展開をよく知らないのでは、という点では不安は感じる。
だいたい、重要な主張をニュースリリースでなく、一部サイトへのメールだけで知らせるか?という根本的な疑問がある。広く周知する意図が感じられない。
やけに広範囲の権利を主張してるように見えるの、それ自体が日本の作品を視野に入れてなかったり、何らかの誤解に基づいてる可能性だって…

本当に心配してること

かように、権利が認められるか現時点でも疑われるゲームシステムと違い、明らかに旧作に属する固有名詞は、ブレイド&バスタードには言い訳不能に絡んでくる
呪文名だけではない。リルガミン、ワードナ、ダバルプス、エル・ケブレスと強力な固有名詞を引用するだけにとどまらず、ストーリーは明らかに旧作の延長上のストーリーとして構成されている。
え、これどうやってんの。
ドリコムはこれを何とかしたんだろうか。アニメもやるのに。

何とかしてると考えるしかない。何とかしてると僕は思っていたが。

アニメ化でいろいろ消されるということはあるかもしんないが、続報がなかなか来ないのでこれも何とも言えない。

心配はしなくてもいい件

ドリコムとアタリは今も連絡を取り合ってる関係なわけですから、もし万が一なんかを踏み越えていたら、ドリコムが改めてライセンスを取って許してもらうだけであろう。お金はかかるかもしれないけど、アタリの権利表記が増えたとして困ることも不審に思われることも別にないでしょう。

旧作の権利者が許せない描写がある、お金の問題じゃない事態に当たれば問題だが……そこは大丈夫だと思うが。

Wizardry版権絡みの話題2026

前回の記事。なんか最近になってたくさん読まれたみたいだけど、長いので読まなくてもいいよ。

憶測の多い記事だけど、そして一部メーカーの行動に疑いをかけるなどしているが、今のところ重要なツッコミはもらっていない。
なんか間違ってたら教えてください。

この前回の記事を書いたあとにも少し動きはあって。
ひとつはAC-MALLにあったWizardry Legacyの販売ページがなくなった。販売ページを開いたときのニュースだけ残ってる。消えた時期は不明で、今年の1月ごろにはなくなっていた。
ただ、こちらの版権は今回のアタリの件とは無関係だと思いますけどね。AC-MALLは販売終了したタイトルを商品リストに残しているものもあるが、消すこともあるようで、……よくわからん。
とにかく消えたのだ。

アタリの権利移行のニュースが流れる直前、Kindleで配信されていたベニー松山の作品が4月30日をもって配信終了となった。
これは、今回の件と無関係と断定はできない。3作品は明らかにアタリが権利を持っている旧シリーズの関連作品。

が、関係があるという根拠も乏しい。『墜ちて修羅、鋼刃舞うは極夜の空』はWizardryとは何の関係もない、『剣の街の異邦人』のノベライズであり、今回の件と直接関係あるとは考えられない。版権サイドではなくベニ松側の事情ではないのか?
1作だけ残しておくのに何か抵抗があって、他の3作品といっしょくたに配信止めたいということは、あったかもしれない…

ベニ松氏は、今回の配信停止の理由を表明していない。

3作の版権については、以前対談で言及していた。

重要な情報

  • リイド社から『隣り合わせの灰と青春』のコミカライズを提案されたが、ウィザードリィ1の版権について相談する先が不明だった。
  • 原作の電子書籍化については、以前に小説化の契約を締結していた。

ということだそうで。
コミカライズで固有名詞が変わったのは版権会社からNGを出されたわけではなく、そもそも版権元が不明であったためだ。ベニー松山も知らなかった。
当時の日本版の権利者(GMO)に聞いても教えてくれなかったか、マジでわかってなかったか。

これらの底本は旧サーテックが存在していた時代に書かれたものだ。そのとき契約したということだろうが、電子化(2016年)に際して表紙とか変わってるけど、再契約しないで大丈夫だったんでしょうか。
わからん。大丈夫だから配信されていたのだと信じるしかない。

この3作は旧作のノベライズとはいうものの、ストーリーほとんどオリジナル作品のようなものであり、固有名詞を差し替えればベニー松山のオリジナル作品に生まれ変わるというのは、妥当な話でしょう。
ただまあ、固有名詞はモロに使ってるし、ストーリーはオリジナルと言ってもその背景設定、文章から読み取れる迷宮の構造など明らかにウィザードリィとして書かれたものに違いはない。アタリへの権利移動に際してあらためてチェックされたかもしれないし、文句を言われたなかったとしても自発的に見直す機会などもあったのかなあと、ありえない話ではない気はする。
しかしベニー氏が説明しないなら、何も断定できるものはない。勘ぐっても仕方ないタイミングだということは言える。

ドリコムはこう言う

アタリの声明2より後で、ドリコム社長内藤氏がこう言ってた。

>また、誰がどういった権利を持っているのか細かく知りたいというコメントもありますが、基本的に商標権が何か、著作権が何か、を、ゲームビジネスにおいてAIで聞いてもらえれば概ね合ってる内容が返ってくるんじゃないかなと思います
>最近のAIは賢いですね

だそうです。とりあえず心配してる様子はないが。
これで私が思うのは、ドリコムの立場からあんまり明言したくない話もあるのかなあというのと、この件はAIに聞いた程度の憶測でだいたいあってる、ということじゃねえかということで。

だから今回の記事、呪文名の使用についての解釈はAIに聞いてみた。
呪文名そのものに独占権があるとは考えにくい、だがゲームシステムも組みわせれば荒唐無稽な主張ではない、みたいなことは言われた。
カタカナで表記すれば大丈夫という主張は難しいという話も聞いた。

こうしたAI知識を今回の記事には反映してるものの、聞き方を変えたり違うAIなら違う答えになるかもしれないし、AI自体も僕が書いた記事など普通に学習して意見をゆがめられてる可能性もあるわけで。
この記事をこうして書けば、またAIの意見も変わるかもしれないし。

確かなことは言えないけど、ここで起きているものはそんなきっちりしたもんではなく、だいたいあってるくらいの認識でいいのかなあと思ったわけです。

PSウィザードリィエンパイアなどの話

スターフィッシュのプレイステーション『ウィザードリィエンパイア 古の王女』は2000年12月に発売されていて、アスキー以外から発売された国産ウィザードリィとしては初期の作品だ。
僕の理解として、このゲームは現在のダンジョンRPG情勢に影響を与えたかなり重要なタイトルなのだが、その割に現在のそちら界隈で話題になることがほとんどない。

その重要性を説明するため、Gジェネ様式の開発ツリーで書くとこうなる。

エンパイア2の次から、約3つの系統に分岐する。
ひとつは、エンパイアの発売元スターフィッシュ。エンパイア最終作の3に続き、DSでもウィザードリィアスタリスクを展開。
そして、エンパイアシリーズの明らかな後継作『エルミナージュ』シリーズへとつながった。
※エンパイアシリーズは1作ごとにスタッフが大部分入れ替わってたようです。

ふたつめがエンパイア1と2の開発に参加したスタッフの一部。
エンパイア2の開発中に立ち上がったマイケルソフトという新会社に、エンパイアの重要スタッフだった千頭元、安宅元也らが合流し、エンパイア3には参加しなかった。
数年後マイケルソフトはウィザードリィエクスを制作。エクス2の完成後、開発チーム「チームムラマサ」が独立しエクスペリエンスを設立。
その後現在に至るまで、ウィザードリィの影響の色濃いダンジョンRPGを多数制作し続けている。つまりエクスペリエンスのルーツはエクスより前のウィザードリィエンパイアにある。

そして3つめがエクス2から分岐しているアクワイアの『剣と魔法と学園モノ』。
この1作目は、エクス2のゲーム内容の多くそのままに、グラフィックの変更などを行ったもので、そのままシリーズ化。
ここからアクワイア製ウィザードリィにも派生したと考えられる。

僕は2007年から10年間ほどの状況を「ダンジョンRPGブーム」だったと考えているが、その中でも知名度が高く2026年現在も生き残っている3系統、『エルミナージュ』、『剣と魔法と学園モノ』、そしてエクスペリエンスの全般が、いずれもPSエンパイアの直系の派生作と考えられる。

それほど重要なタイトルの割に、2026年現在、古の王女に言及される頻度は少ない。
なぜだろう。
そうなっている理由は、今回つきとめたわけではないのだが、ただこのタイトルについて言及しようと思った。

おことわり:
今回、ずいぶん前にエンパイア1をひととおり遊んだ記憶で書いており、ちゃんと再プレイはしてない。
またやったことがあるのは1だけで、王女の遺産以降はプレイしてない。
上の開発ツリーのゲームについても、エクスペリエンスのゲームを若干数やったくらいで、ほぼ聞いた話だけで書いてるのでご了承ください。

  • どんなゲームか
  • 伝統的ゲームシステム
  • 同じような呪文
  • 権利とそうじゃないこと
  • マイケルソフトについて
  • 呪文名のその後
  • エクスの後
  • それから
続きを読む