神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

宇宙世紀公式年表、それは

宇宙世紀の年表はいろんな本に載っているが、ときどき宇宙世紀公式年表」という名前を聞くことがある。しかし、「公式」の年表なんてあるのか?というふうに疑問に思われることもあるようだ。
結論を言うと「公式年表」は、ある。
ブックオフに並んでいる電撃コミックスのガンダム漫画をあさってみよう。2冊に1冊くらいの割合で、年表が収録されているのが見つかるはずだ。
その別に珍しくもない年表ページについているタイトルこそが宇宙世紀公式年表」だ!

公式年表というタイトルである以上、公式年表であることは明白である。けど本当にサンライズ公式設定と考えていいのか?
適当な調査によると、「公式年表」とは以下のような感じ。

・94年くらいから存在するらしい
・少なくとも2バージョン存在する
・電撃のコミック以外での収録は知らない。たぶんない
・電撃のガンダム漫画全てに収録されているわけではない
・収録されている本の傾向が謎。近藤和久の単行本に収録されている確率が高い
・これ以外に「公式」とついている年表は知らない
・97年より後にアップデートされた形跡は見当たらない
・2005年くらいまでは掲載されていることを確認
コメントで頂いた情報によると、「宇宙世紀公式年表」の初出は少なくとも91年まではさかのぼれるようです。

まず2種類のバージョンの違いについて。バージョン1(仮)はVガンダムの内容が一部しか書かれておらず、0149年までしか書いてない。
バージョン2(仮)は
・0152~0153年のことが追加されている。
が主な違いだが、
他に
ロンド・ベルの設立日が0090年3月→0093年3月に変化している。(0092年にロンド・ベルの記述が続くので明らかに誤植である)。
閃光のハサウェイの0105年4月以降の記述が0104年に変化している。
……閃ハサの日付変わってるの気付かなかった。電撃コミックスからガンダム漫画が出始めるのが94年なので、バージョン1はその頃書かれたものと推測される。手元の本だと、近藤版Zガンダムの3巻(1994年初版、2002年18版)がバージョン1で、F90(1997年初版)とサイドストーリーオブZ(97年初版)はバージョン2だった。
自分の手持ちの中ではバージョン1のほうが新しいので、これは「修正されたバージョン1改」である可能性は否定できない。機会があれば調べてみたいが、今回はVガンダム関係以外は手持ちのバージョン1の日付のほうを優先して考える。

年表で扱っている作品は以下の通り
映像シリーズ:
機動戦士ガンダム』『Zガンダム』『ガンダムZZ』『逆襲のシャア』『F91』『Vガンダム』『0083』
※たまたまだと思うが、『0080』の内容が年表に見当たらない。

それ以外:
閃光のハサウェイ』『F90(漫画版冒頭のコバヤシ丸襲撃のことだけ)』『シルエットフォーミュラー

また、あえて説明するまでもないが、年表には作中に出てこない具体的な日付や、設定だけの出来事なども載っている。
これらの日付、この年表で初出のものがあるのか、以前からある設定のみなのかは知らないが、いくつかの作品は弾いているようなので、そこらへんが「公式年表」ということなんだと思う。
特に、バンダイ発刊の資料(ENTERTAINMENT BIBLEアクシズ戦争編)にも載っていた0088年の『ガンダム・センチネル』の内容や、0090年の「エグム、NSPなど、反連邦組織の活動活発化」という内容(『ハイストリーマー』と『ダブルフェイク』のことらしい)は公式年表では削られている。
でもパラレル要素のある閃光のハサウェイがなぜ年表に入っているのかは知らない。また、「公式年表」が最初に閃ハサを入れた年表かも知らない。
ただし「公式年表」を目にする機会は、それまでにあった年表よりかなり多そうなので、閃光のハサウェイ知名度を高めた一因としては十分考えられる。

閃光のハサウェイの内容は、これ以降に出たほとんどの年表に載ってると思う。パラレル設定である問題に関しては、『年表にある内容の閃光のハサウェイ』は正史であると解釈する人もいる。年表の出来事だけが確定しているルールだとすれば、マフティーは現れるが、それはハサウェイである必要はないことになる、らしい。
(個人的にはこうした解釈は同意しかねるのだが、理由の説明が面倒なので本記事ではパスする)

公式年表で注意すべき記述として、西暦のことが書いてあるというのが上げられる。
>1999 地球連邦政府樹立。人類宇宙移民計画発表
>2009 地球連邦軍設立
>2045 第1号コロニーの建造開始。

>U・C0001宇宙移民開始をもって宇宙世紀に移行。地球総人口90億突破

94年ごろ作られた年表のはずなのに99年のことが書いてある…しかも世紀末を越えた2000年以降も「公式年表」では修正していない模様。
この年表だと政府の樹立から宇宙世紀移行まで最低46年かかっているが、ガンダムUCあたりの設定とたぶん矛盾する。そうでなくても、このあたりの記述は現在生きている設定ではないだろう。当然ながら、後発の年表でも完全無視している。
それにしても、冷静に考えてもうちょっと未来に設定するべきじゃないのと思うけど、機動戦士ガンダムは現実の未来じゃありませんよという意味でこういう設定を載せてたのかもしれない。1999年が何かの節目になるという思想、こういうのもノストラダムスの大予言北斗の拳やらがガンダムにまで影響してたってことじゃなかろうか。

他に気になる記述
・ガルマが戦死した場所の地名が「ニューヨーク」表記
・「星1号作戦」がソロモン攻略より前の12月14日になっている(本来の「星一号作戦」はソロモンより後、ア・バオア・クー以降の攻略作戦のことである。他の年表では12月29日)
そういえば、この2点については初代ギレンの野望(98年)でも同じようにしていた。

公式年表以外の「宇宙世紀年表」は複数あるため、年表ごとに微妙に日付や内容が違っている。当然、新しい年表なら内容も増えていくし、日付が変わることもよくある。そのあたりの比較・検証、あまり詳しくやるつもりはないのだが……
ただ、『総解説ガンダム辞典ver1.5』(2009年)の宇宙世紀年表に関してはちょっと触れておく。これも公式年表よりかなり詳しい年表だが、上位互換かというと一部相違点がある。
前回の記事でも書いた通り、この総解説年表は「アニメ以外の情報で未確定のもの(異説のあるもの)」を注釈つきで載せているという特徴があり、その中には「公式年表」に含まれているのに「未確定」扱いにしているものもある。
それ以前に公式年表から削除されている内容も一部ある。

総解説の年表では、上で触れた西暦の出来事や星一号作戦の日付については削除・修正されているほか、
・0068年のブッホとロナ家に関する記述がなくなっている。
・ガトーがデラーズフリートに合流した日付、コムサイで脱出を試みた日付がなくなっている。シナプスとウラキに下った刑罰が書かれていない。
ティターンズのホンコン襲撃の日付が5.29→6.29に変化。
・グレミーの謀反が11.14(サイド3譲渡と同日になっている。誤植?)→12.25に変化。
ロンド・ベル設立、連邦本部のラサ移行、ネオ・ジオンの攻撃示唆の3つの日付が未確定扱いになっている。
・0100年のジオン共和国自治権放棄が未確定扱いになっている。
・0104年の連邦軍の増強、マン・ハンターの記述がなくなっている。
・閃ハサ関係のうち0105年の記述に関して全て未確定扱いに。
・0112年6月のシルエット・フォーミュラ・プロジェクトが未確定扱い。
・ハウゼリー・ロナの地球保全法案提出が0112年6月(誤植くさい)→0116年6月に変化。
・0120年10月25日のコバヤシ丸襲撃が未確定扱いに。
・0122年と0123年のシルエット・フォーミュラ関係の記述が未確定扱いに。
・0153年4月19日の内容がなくなっている。
結構違うじゃないか!
総解説の年表は、公式年表のすべてが確定事項とはみなしていない。10年以上後の年表で未確定と言っているんだから、未確定なんだろう。

まとめ
宇宙世紀公式年表は2009年の時点で、既に遵守されている年表ではない。
・「公式」と冠しているが、他の年表より上位の存在である根拠も、たぶんない。
・しかしながら、ある程度は内容の選定を行った年表と考えられ、現在も通用している設定も多数ある。
・年表の存在が「閃光のハサウェイ」の現在の扱いに影響した可能性はある。

公式年表に限った話ではなく、年表自体のアップデートが近年されていないような…
UC周辺をあまり追っていないせいもあるが、ガンダムUCが載った年表は見たことない。あるのか?

「公式」年表が21世紀以降見当たらないのは、年表は映像に匹敵するほど公式なものじゃないのか、「公式」という言葉が過大評価されていることを恐れているんじゃないだろうか。
まず「公式設定を変えちゃいけないルール」は別にないと思うのだが、今のガンダムの「公式」にはそれが期待されてるように見える。
年表が無意味な設定だとは思わないが、確定事項になれば今後のシリーズ展開の障害にしかならず、あまり望ましいとは思えない。
「公式年表」が電撃コミックスの半端なものしかないのは、そのへんが理由じゃないかと思うが、実際のところはどうだか知らない。