神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

ザマス編が終わった

ドラゴンボール超の話である。
公式には「“未来”トランクス編」なんだけど、まあザマス編だよね。未来トランクスとゴクウブラックの出現に始まり、ザマスという新たな敵の前に悟空たちがあの手この手を駆使し、敵も味方も自重せずにパワーアップしていく。長く異質で、複雑で、何より盛り上がりも最高潮のエピソードだった。
それで自分的にこのシリーズを総括したいので、最後までネタバレしていきたいのだが…もしまだ見ていなかったならそれは困る。
見てない人に対してネタバレを読むなとは言わない人であり、未見の人がネタバレ読んでも興味持ってくれるならいいかな…というつもりでネタバレを書いていくのだが、結末だけは絶対にネタバレを読まないでほしいわけである。
だから最終話にあたる67話のネタバレだけはこの記事の最後に回すので、万一見てないのならそこだけ読まないようにしてほしい。
このザマス編の結末は自分の目で見なければ意味がない。おそらくゲームなどでも再現できない衝撃の結末はレンタル待ってできるだけ急いでぜってぇ見てくれよな。
※現時点でドラゴンボール超に有料配信とかはありません。

66話までのネタバレは全く自重せずに書いていますのでご注意を。

●ザマス編の敵
敵1:ゴクウブラック
突如未来世界に現れた悟空にそっくりな謎の存在。界王神と関係がありそうだったが正体はよくわからず、その秘密を探っていくことも目的となった。

敵2:ザマス
ゴクウブラックを調べてる過程で容疑者として挙がった人物で、第10宇宙の界王神見習いをやってる界王。
人間に対して抱いていた不信感がいろいろあってマックスになった結果全宇宙の人間を滅ぼそうとした。

ゴクウブラックの正体は別時空の悟空の肉体を超ドラゴンボールで奪ったザマスであり、未来時空にいた別のザマスと協力し「人間ゼロ計画」を発動したのである。
つまりゴクウブラックもザマスであり、ふたりのザマスはイチャイチャしながら戦い最終的にポタラで「合体ザマス」になる。

●敵がきもちわるい
破壊神ビルス以降、このシリーズにも新しいタイプの敵が登場してきたが、ザマス&ゴクウブラックもまた独特だ。
こいつらはドラゴンボールの敵としては異例なことに自らの正義を信じており、しかもその正義は薄っぺらだ。
ザマスの動機は、もともと争いを続ける人間への不満を抱いていたところに悟空やババリ星人のような野蛮で邪悪な存在と出会ったことでこいつらもうダメだ滅ぼそうと決めたというものであった。
特に難しい理屈はなく人類気にくわねえ滅ぼそう!なんというシンプルな敵か。

だがザマスはそんな薄っぺらさとは裏腹にとんでもなく濃いキャラである。まずナルシスト。超サイヤ人ロゼという、安易さの中に美しさを取り入れたネーミングを自ら誇ってみせ、そして外見の美しさを誇る。悟空をして気持ち悪いと言わしめる謎の敵がゴクウブラックだった。
悟空の家族を殺害した様子を壁ドンして悟空に言い聞かせ背後から自分ごとブラックに貫かせて嬉しそうなザマス。演説が聞き流されてるのを「自分に酔っているだけだ」と満足気なザマス。
理解者との邂逅に熱く抱き合うブラックとザマス。拠点のロッジで紅茶を飲みながらイチャイチャと語らうブラックとザマス。これが他人ならまだ普通のカップリングの範疇だが、中身が自分同士であることで気持ち悪さが加速する!
ゴクウブラックと合体したことで人類ゼロはできなくなったと矛盾を指摘され、それで凹むどころか罪の象徴たる悟空の肉体を自ら取り込んだ自分の行動の気高さに気づき感動のあまり涙を流す場面にはベジットでさえギャグ顔であきれてしまい、従来の悪役の概念を越えていた。
行動力も高く、人間ゼロ計画を発動するにあたって未来世界で全宇宙の神々をすでに全滅させている。気持ち悪いのに強くて働き者だ!

●敵の強さ
ベジットまで出てきてインフレも過去最大に極まった。

ゴクウブラックの肉体は既に神の気を得ていた悟空のものだ。セル編より大幅にパワーアップしていた未来トランクスよりもずっと強いが、登場直後の時点では変身することはできず、現在の悟空ほど強くはなかったようだ。
しかしこのゴクウブラック、サイヤ人の肉体の特性か戦うたびにどんどんパワーを増していく。悟空と戦いの経験から「超サイヤ人ロゼ」に覚醒、そこからは完全に手をつけられなくなって悟空ベジータトランクスの3人を圧倒する。

ザマス自身の戦闘力は現在の超サイヤ人2の悟空に負ける程度。インフレの進行した現在はそれほどの強さではなく、単体ならトランクスでも動きを止めるくらいはできた。しかし不死身の肉体を得たことと、ゴクウブラックとの完璧な連携により超サイヤ人ブルーとも戦ってみせた。
この強さはかなり絶妙で、不死身ではあるがどうにもならない相手ではないと感じさせるくらいになっている。
そしてザマスとブラックは、過去に悟空たちが使ってきた反則技を多用する敵でもあった。超ドラゴンボールの使用。歴史への干渉。よくわからない理屈でのパワーアップと超サイヤ人への変身、怒りによるパワーアップまで発動し、挙句にポタラまで使い最強形態「合体ザマス」へと進化した。
合体ザマスについては片方の素材のザマスがそれほどでもないせいだろうか、合体前ではブラック一人に苦戦していたカカベジであるが、合体後のベジットであればかなり有利だった。でもベジットを持ち出すほどの相手なのも確かで、おそらくこれまでの敵の中でも最大規模の災厄であった。結局時間制限のついたベジットでは倒しきることはできなかったのである。

このシリーズは間違いなく「ザマス編」だった。

●数多くのファン向け描写
未来トランクスといえば魔人ブウがどうなったのかであるが、当然のように現れたバビディダーブラを既に撃退していたことが説明される。トランクスも期待通り超サイヤ人2にパワーアップ済みだ。18号や悟飯と会うシーンもしっかり用意されてる。
また未来にも過去の仲間が登場する。原作で特に言及されていない未来のヤジロベーはアニメ「ドラゴンボールZ」のオリジナルで死んでいたのだが、このドラゴンボール超では死んだと思われていたヤジロベーが人知れず生き残っていたことになった。マイナーなアニオリ描写をあえて拾った上で否定!
読者もほとんど覚えていなかったであろうセルのタイムマシンも再利用。ウミガメが登場し魔封波まで飛び出す。
まだ邪悪だった頃の人造人間編ベジータさんの描写。ベジータを挑発するためだけにムキンクスを使用するファンサービス。ブロリーの映画で一回使っただけのトランクス魔閃光の再登場。原作とほとんど同じセリフで再登場するベジットはゲームオリジナル技のファイナルかめはめ波まで使用。
ゲームの影響も強く感じられた。ギャリック砲ファイナルフラッシュも原作で一回しか使ってないのに長年ゲームでベジータの定番技として君臨し、近年はギャリック砲が究極技に格上げされたりしていたが、今回はトランクスもこれらを使用。かつて地球を破壊しようとしたベジータと地球を守る親子ギャリック砲はこれから出るゲームでどんどん使ってもらうぞという意気込みを感じる。ザマスの技も場違いながら2000年代以降のRPGっぽさがあったし、スタッフはゲームが好きなのかもしれない。
剣を持つトランクスという原点回帰も良かった。最終技は元気玉のごとく仲間の気を集めた光の剣だ。トランクス自身も超サイヤ人3やブルーではなく、ムキンクスのような形態を経てパワーアップした独自の超サイヤ人へと変身してみせている。超サイヤ人3はみんな同じ顔になっちゃうし
まあ悟空のキスというアニオリをすっかり忘れていたりもしたが。

●神の新しい設定
界王神が死ぬと破壊神も死ぬ。界王神だけが使える時の指輪。世界が増えるたびに増えていく緑の時の指輪。神々にまつわるさまざまな新設定が飛び出し、破壊神も界王神もそれぞれ役割のあることがわかってきた。そういえば転送技のカイカイという呪文もアニオリだったか、あれはキビトの技なのだが界王神はカイカイで全王界にワープできるという新たな役目が与えられた。
第10宇宙の界王神ゴワス様も登場。よくいるドラゴンボールの神とは違い威厳を持った人物だ。神チューブで悟空の戦いを視聴し神チューバーになるとか言い出すユーモアもある。
またポタラでの合体には制限があることがわかった。ゴワス様によると界王神でないものが使っても1時間で合体は解けてしまうのだ。急に後付けされた!
おかげで今後は気軽にポタラ合体をゲームで出せそうだがフュージョンとほとんど変わらないじゃないか。

パラレルワールドわけわかめ
ザマスは現在の悟空に近い悟空の身体を奪っている。ザマスが悟空を知ったきっかけは悟空が押しかけてきて戦いを挑んで来たからだ。悟空が押しかけていった原因はゴクウブラックである。あれ?
ゴクウブラックがいたからゴクウブラックが生まれたことになってない?
細かいことは忘れよう。それを言い出すとセルとかの出自も怪しい。
悟空に直接負けたザマスだからこそ怒りを深めたという話でもあるし、神の世界の話だしそういうこともあるのでしょう。

こちらのザマスをビルス様が破壊したおかげで、もうこちらでゴクウブラックは出現しなくなり、別時空のザマスにもおそらく影響するはずとビルス様は思っていたが、実際は時の指輪をすでに持っていたザマスは破壊されなかった。これにより緑の指輪が増えたらしい。
そもそも時の指輪とタイムマシンで何で同じ未来や違う未来に行けたりするんだ。
時の指輪関係のルールはあやふやなところがあり、かなり勢いで押し切った感がある。でもその勢いはドラゴンボールらしくもあった。

さて…最終話の67話のネタバレは最後にすると書いた。
仲間の力を集めたトランクスの光の剣により合体ザマスは両断された。それが66話である。

 

これから見せるのが67話のネタバレだ。まだ見てない人は読まないでほしい。

●第67話 新たなHOPE!!を胸に さらばトランクス
トランクスの光の剣によりザマスは両断されて消滅したかに見えたが、なんかザマスの煙みたいなのが地球を覆いだす。地球がザマスの顔になってしまい惑星ザマスが爆誕。空からビームが降ってきて生き残った地球人は全滅した
宇宙がザマスになっていく。仙豆でも残ってないかと懐をあさる悟空さ。全王様を召喚するスイッチを発見。押した。未来の全王様登場。
こいつを消しちゃおうって言う悟空さ。全王様「こんな世界…」と。
不穏な発言に危険を察知して逃げる判断を下す悟空は仲間とともにタイムマシンで逃走!
ザマスごと世界は消滅した

超バッドエンドじゃねえか!

ウイスが力を貸してくれることになってゴクウブラック出現前にザマスを何とかするという方向で決着。消えた世界の全王様はタイムマシンで回収してこっちの世界の全王様の友達になった。トランクスとマイは元の時代に帰っていった。そこにはまだ平和だった頃のもう一人のトランクスとマイがいるわけだが…

このネタバレ、本当は最初に書きたかった。逃走を決断する悟空の手際の良さはまるでブロリーMADのクズロットのようだった。いやクズじゃないよ悟空さは。地球人全滅しちゃったし全王様に消してもらうくらいしかできることないし、ちゃんと仲間も逃がしたし。でも「おめえの出番だ!」→「やべっ逃げろ」→デデーンの流れはもう完全にクズロットのアレだ。
正直めちゃくちゃな展開だと思ったがひどすぎて笑えてしまったので許さざるを得ない。

思い返せばこのザマス編は結末ありきで作られた盛り上げられていた。ブルマがかなり最初に死んでいるところでおかしいと思うべきだったのかもしれない。この世界のキャラクターは最初から救えないことが決まっており、逆に言うと効果的に殺していっても大丈夫だったから、ブルマを最初に殺したのだろう。
もちろん仲間の希望を詰め込んだ親子かめはめ波も光の剣もヤジロベー生存も、全部無に帰すエンドありきで出されたものである。できるだけ盛り上げてから落とす!

そして…このエンドの主犯はたぶん鳥山明だ。全王様が二人になるというエンドをアニメスタッフの一存で追加することができるわけないからである。
ていうか、けっきょく世界がパーになってウイスが何とかしてくれるエンドって復活のFとまったく同じ構図じゃないか!
こう気軽に世界を滅ぼす感覚を持っているのは鳥山明しかおらん。証拠はないが確実だ!

当然これがグッドエンドでないことはスタッフはわかっている。わかってるからあまり悲壮感のない感じで現代に戻ってきて、なんとか別の未来に行くということで納得したものの、結局もとの世界は守れてない。守れてない証拠として残った滅んだ世界のトランクス、悟飯が出てきてこらえきれずに泣き出すのは「これは全然ハッピーエンドじゃないよ」ということを示している。だが悟飯はトランクスにとっては希望でもあり、トランクスは送り出され未来へと向かっていった。あとは漫画版のオチ待ちである。

結果だけを言うなら、救えない世界がひとつ増えて、そこでトランクスとマイだけが救えたということになる。
悟飯の後を継いだトランクスが守った世界自体はまだ存在している。そこに別のトランクスがもう一人行くことになった。
これまでも救えなかった世界はたくさんある。悟空がザマスに殺された世界もそうだし、トランクスがセル殺されてそのままになった世界もあった。観測されていないだけでフリーザが勝利した世界とか、もっとひどいのもあったのかもしれない(ゲームのIF的な)。
ドラゴンボールって神様が仲間になったりして都合のいい話をやってるけど、その裏ではけっこうひどいことをやってきたし、たまにはこういうしっぺ返しみたいなものも来ますよという戒めのような意味を持ったエンドだったのかもしれない。
何も考えてないだけかもしれない。

ザマス編は楽しかった。それだけは確かだ。