神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

バーザムとガンダムMk-IIの関係ができるまで 2017

2017年5月、HGUCバーザム発売に伴い、デザイナーの岡本英郎氏のインタビューがWEB上で公開された。バーザムのデザイン裏話から岡本さんの歴史までいろんなことが明らかになったのである。
『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』 バーザムの真実に迫る&岡本英郎全仕事史インタビュー前編 後編
※このインタビューは6月前半に何らかの問題で一時読めなくなったりしたが、現在は復帰している。前編の内容が一部修正されたようだ。
そして6月24日発売のモデルグラフィックス8月号では別のインタビューが掲載され、先のWEBのインタビューでは不明だった部分も込みでバーザム関係についての多数の事実が明らかになった。

この2度のインタビューで判明した新事実はかなり多いが、今回このブログで重視するポイントは、デザイン段階でガンダムMk-IIの量産機という設定を岡本氏が知らなかったことだ。
おおかた予想できていたことではあったが、ついに初めて明言された。

バーザムのデザインがMk-IIと似てないことはわかっていた。わかっていたが、決定的な証拠は一度も見つかることなく、どうしても後付けだと断言できない状況で長いこと膠着していた。当事者でない僕にデザイナーの意図を勝手に決めることはできないからだ。だから状況証拠の掘り下げばっかり進んで、いつまで経っても調査は終わることはなかった。
それが、たぶん史上初めて、デザインした本人によって明言された。
やっぱりその意義は大きいのです。スッキリしました。
ちなみにインタビュー中でこの事実はものすごく簡単に流されており、読者も聞き手もデザイナー当人もあまり重要視していなかったことがよくわかったのであるが、いいんだ。僕にとっては重要だったんだ。

だから今回まとめるのは、僕以外にはあまり重要ではないかもしれないこと、このMk-IIとの関係が後付けだったことについてである。
実際その他の新事実のほうが興味深い内容が多かったのだが、それはいずれ別の機会にやるだろうから今回はパスで、「どうしてバーザムはガンダムMk-IIになっていったのか」ということに論点を絞る。
まあ、前から言ってる通り、僕自身これが問題のある後付けだとは全く思ってなかったんですが、今回はその話をすると決めたのだ。今までも多くの記事にばらけて書いてきたが、今回はひとつにまとめて、最新情報も追加し、今までより読みやすい形にしておきたい。
一部は以前の記事と重複する内容があることをご了承ください。

デザイナーの発言から考えても、バーザムがガンダムMk-IIと関連付けられたのは後付けだと思われる。その設定の定着にはガンダム・センチネルも大きく寄与している。
だがこの設定を作ったのはセンチネルではない。センチネルよりかなり前、バーザムが初登場した直後にはこの後付けはされていた。
時系列順にまとめると以下のようになる。

1.デザイン段階でガンダムMk-IIとの関係は意識されていない。
2.最初にMk-IIの量産機のように描写したのは近藤和久の漫画版『機動戦士Zガンダム』らしい。
3.文章で初めて明記したのはムック『PROJECT Z』らしい。
4.『ガンダムZZ』放送時点で、制作側にこの認識は持たれていたらしい(?)
5.『ガンダム・センチネル』で、この設定に基づいてリファインされる。数年後にはテレビ版バーザムにも反映されていった。
6.95年以降に、ゲームでこの設定が使われるようになる。

これら経緯はいろんな記事に分散して書いてきたけど、今回新事実として判明したのは1.の本来のデザイン意図だ。
そして、これと別に調査したのが6。ゲームでの使用。
この設定を生みだしたのは近藤漫画かもしれないが、この設定が広まった真の理由は別にある。それを本記事で明らかにしたいと思う。

1.岡本英郎の証言

岡本氏のWEBのインタビューでは、バーザム以外にも特撮関係の仕事やUMAについて大変興味深い話があったのだが、バーザム周りに関してはモデグラのほうがWEBのインタビューより詳しかったため、以下そちらに準拠で書く。
岡本氏から明かされた新事実のうち、Mk-II設定に関わると僕が考えた部分は以下の通り。
・岡本氏は発注された段階で原型のラフを一度は見ているが、どうもデザインにあたってほとんど意識されていない。
・Mk-IIとの関連は知らないでデザインした。後から勝手にできた設定である。
・バルカン・ポッドをデザインした理由は覚えていない。
・バーザムの色を決めたのは岡本氏ではない。

どことなくMk-IIっぽい色を決めたのも岡本氏ではなかった。これは何となく予想はできたことであった。
そしてMk-IIを思わせるバルカンポッドをつけた理由もモデグラのインタビュアーは当然尋ねているが、これは岡本氏も覚えていなかった。今回のインタビューで、岡本氏は独特なビームライフルのデザイン意図やビームサーベルの収納位置、さらにはデザインされなかった追加装備の案や、足の内側の黄色いのがスラスターじゃないこと、バーザムの運用思想に至るまで細かく覚えていたが、バルカン・ポッドの理由は全く覚えていなかった
覚えてない程度のことだから、大した理由はないのかもしれない…
岡本氏は「味方になるみたいな予定もあったのかなあ。」と引っかかりのあることをつぶやいたのみで、ここだけはかえって謎が深まってしまう結果となった。

なお、モデルグラフィックス2017年8月号は、他にも多数のデザイン裏話が載っているほか、かつてない規模のバーザム模型作例の数々、さらにはガンプラが設計・開発・生産される工程まで追っているものすごい特集になっているので、実際バーザムが大して好きでない人も間違いなく読むべきです。
どんな人がバーザムをプラモにしようと思って、どうしてバーザムがこんなふうにプラモになったのかが全てわかります。おすすめです。

2.近藤和久機動戦士Zガンダム』でデザインがアレンジされる。

コミックボンボンで、アニメと同時進行で連載されていたコミカライズ版Zガンダムで、3巻にバーザムは普通に量産機として登場する。ビームライフルマラサイ型になりMk-II型シールドを持つ。デュアルアイ。
まさに番組に出るか出ないかくらいのタイミングで、既にガンダムMk-IIの要素が入ったアレンジがされていた。

近藤ザムB

このようにMk-IIの系譜であることを文章化した設定も存在するが、これはバンダイから90年に復刊された版で追加されたものである。
最初のボンボンコミックスの時点ではMk-IIとの関係性を文章では記述していない。見た目だけである。出番自体もあまり多くはない。

近藤ザムA

ボンボンコミックス版は、カバー折り返しに胴体がテレビ版寄りになった別タイプ近藤ザムのイラストが載ってるので、作者の思い入れはそこそこ強いように感じる。けど他の近藤漫画には出てこないんだよなー

また、この機体については、グレートメカニック22(2006年)に載った近藤和久のインタビューで言及があった。建機ザム登場より前という古いインタビューだ。

漫画オリジナルMS「グリフォン」について聞かれて、
>近藤:あれは、まずバーザムをガンダムMk-IIの量産機みたいな設定にして、バーザムとマラサイの混血みたいなモビルスーツにしたかった。でも、バーザムがMk-IIの量産機って今や公式設定っぽくなってない? カトキハジメくんのデザイン(ガンダム・フィックス・フィギュレーション)では、思いっきりそういう設定になってるよね。
グリフォンありきでMk-IIと結び付けたとも取れる言い方をしているようであるな。

近藤和久にMk-II設定が伝えられていなかったことは確実であり、普通に考えればその設定はまだ存在しなかった(同インタビューでも答えているが、チャイカにされるディジェがジオン機でないことはちゃんと伝わっていたようだ)。そして近藤先生はこの設定は自分の影響で広まったとまでは言わないものの、自分の独自設定だったという意識もある。

この後のセンチネル版はデザインの共通点から考えて、近藤版の影響下にある可能性は高いと思われるが、はっきりはわからない。

3.モデルグラフィックスのムック『PROJECT Z』で明文化される。

『PROJECT Z』は番組終了直後に発刊されたムックである。
97ページに、
>設計はRX-178をベースにしておりニューギニア基地で開発が行われた。
このようにはっきり書かれている。

ただし、このムックは設定資料集ではない。これは模型作例の紹介記事に添えられた設定で、一見するとちゃんとした設定に沿ったような書き方だが、独自設定かもしれないものだ。
しかもこの本はZレイピアやハーピュレイなどの独自MSも載せている。これらの設定は完全に本書独自のものである。

だが一応、このバーザムの設定が公式設定に「基づかない」という確たる証拠もないことに留意しておく必要がある。
たとえば、いまだ世に出ていないアニメの制作資料にバーザムの設定が書いてあり、それを読んだ人がこの『PROJECT Z』のバーザム設定を書いた可能性、ないとは言い切れないと、今も思っている。
とはいえ、同時期のニュータイプ100%コレクションにこの設定がないことから、かなりの確度でPROJECT Zの独自設定であろうと考える。
ただし独自設定だったとして、これが近藤漫画の影響なのかは、これまた不明。
ともかく設定が文章として登場した瞬間はここだったようだ。たぶん…。
近藤漫画から『PROJECT Z』までの期間に、同様の記述がどこかにあったという噂は聞いたことがない。
いや本当にないのか…?
当時のアニメ誌をくまなく全部読めばどこかに同様の記述、絶対にないと確認されたのだろうか…
僕はそういう噂すら聞いたことがないので、たぶん無いのだと思っているが、当時を知らない僕には確かめようがない。

ちなみに、バーザムの開発がニューギニア基地という設定を作ったのもこの記事のように見える。

4.早い段階で制作側に認識されていたらしい。

『PROJECT Z』の続編ムック『MISSION ZZ』85ページ、ジムIIIのデザイン経緯について以下の記述。
>機体の発達はガンダムMk.-II→バーザム→GMIIIと考え、部分的にガンダムMk-IIのパーツを使用している。

ジムIIIのデザインにあたってこの設定を考慮していたと言う…
このページを書いたのが誰なのかわからないのだが、この時点でこの設定を基本に考えていた人間が、少なくとも一人は制作側にいるのだろう。モデグラ周辺でZZに直接参加した誰かが。
かといって制作関係者全員に共有されていたかはわからない。
こういう証言が出てくることから、ジムIIIの原案に関わった人間、小田雅弘、カトキハジメ(かときすなを)などはこの認識だった可能性は高いように思えてくるが、実際のところ当時のバーザムと原案段階のジムIIIは何も似ていない…
この書き手の証言は果たして信用できるものなのかというレベルの話にまでなってくるのだが。

同時期からセンチネルまでの期間に出た設定資料も見ておく。

古いアニメ資料として有力なニュータイプ100%コレクション 機動戦士Zガンダムカニカル編2』(持ってるのは復刻版だが原書は1986年11月刊とのこと。PROJECT Zより後)
Mk-IIの影響を受けた機体という記述はないのだが、83ページでバルカン・ポッドについてはガンダムMK-IIと同じもの」と書いてあるのはいいんだが、「火力も機動性もガンダムMK-IIに劣らない」という変な比較記述がある。こんなふうに、ガンダムMk-IIを意識した記述はあるんだよな…。
だから僕は「Mk-IIの量産機」って設定がPROJECT Zの独自設定とまだ言い切ることができないでいる。原型になる何かが化けてニュータイプ100%コレクションの設定になっている説は否定しきれない。

『ENTERTAINMENT BIBLE 機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.2 グリプス戦争編』(1989年3月刊)
番組放送よりかなり後の時代になってきた。機体設定ページにバーザムとMk-IIの関係を示す記述はない。
しかし36ページの系譜図をよく見たらRX-178とRMS-154が線でつながってたんで、一応意識はあったのかもしれない。重視はされてないが。他につなぐ場所がないからバルカン関係でつないだだけみたいな。

5.『ガンダム・センチネル』でリファインされる。

ガンダム・センチネルで行われたのは、ガンダムMk-IIの量産機なのに全然似てない変なMSバーザムを「こうなる筈」の姿にするリファインだった。センチネル自身の認識ではそうだったはずである。
だが本来の設定に沿った姿にリファインしたものと思われたその実態は「本来の設定」ではなく、「それまでの間に非公式に浸透しつつあった設定を正式に採用したうえで行ったリファイン」だったのではないだろうか。ここまでにバーザムとMk-IIを結び付けたものはごくわずかで、公式性も怪しい。
『PROJECT Z』の記述を抜きにすると、設定としてちゃんと書かれたMk-IIベース説は、実は「センチネルが最初」で合ってたのか…?
設定を考えたのはセンチネルではないが、正しい経緯で設定として初めて採用したのはセンチネルである。そういう言い方をしても間違ってない可能性がある。

ただし、これは現在の視点をセンチネルを見返し、勝手に公式を線引きする考えに基づく言い方になる。
センチネル視点で見れば『PROJECT Z』は前提となる正式な資料だ。一部設定を整理・加筆してこそいるものの、非公式なものという意識はなかったはずである。
センチネルは「既に存在した設定(数年後に見直すと非公式扱いになる本)に沿った姿にリファインした」というふうにも言える。センチネル当時は別におかしいことをやってないわけである。センチネルだけが公式レベルのものに格上げされた現在が不思議なのだとも言える。
だからこのリファインはほとんど無意識に行われている。

と思ったんだけど、実はセンチネルのムックにはバーザムのリファイン経緯は詳しく書かれていないようだ。このムックだけ読んだ場合はセンチネルで初めて作った設定とも受け取れる書き方をしていること、今あらためて読み直して気づいた。
元ネタは間違いなくそれまでにあるわけだが、初めて設定化したものという自覚はあったのかもしれないなあ
わかりませんよ。僕にもどこかに見逃してる本があるかもしれない。センチネルと『PROJECT Z』の間のどこかに、もっとはっきりとMk-IIのことを書いた資料があったかもしれない。

その後97年の『データコレクション』はたぶんセンチネルの影響下にある本なのだが、テレビ版バーザムにMk-II設定を持ち込んだのは案外この本ではないだろうかと思っている。

データコレクションもセンチネルも「ちゃんとした設定資料じゃないから公式化はしていない」と言い切る人もいるかもしれない。じゃあ最初のちゃんとした資料は新訳Zのパンフレットかファクトファイルかな…
パンフもファクトも公式じゃねーよ!ということなら、その後の掲載資料は総解説ガンダム辞典、パーフェクトファイルに、新しめのMS大全集(2013には記載を確認)、ROBOT魂、忘れちゃいけないAOZリブート、とどめにHGUC説明書だ。これら全部が、バーザムとMk-IIの関係を肯定する記述をしている。
Mk-IIとの関係が公式設定になったことはないと言い張るのは、まあ「公式設定」の定義によってはそうなのかもしれないけど、こんな死ぬほど多数の文献に書かれてる設定を無理して否定する必要はないだろう。
ブレまくりのバーザムの設定群の中で、ある時期以降ほとんどブレることなく一貫しているのがMk-II設定だ。これを全部否定できるなら、そりゃ設定資料自体に存在価値を認めていないのと同然です。

経緯が不明であろうと、この後付けは大多数の資料によって承認されているものであり、僕にそれを否定する動機は今のところない。
まあ、僕自身は設定の否定を平気でやるタイプですが。

6.ここまでの経緯は全て前座であるという話。

と、ここまで調べたものの、僕自身が違和感をぬぐえなかった問題がある。
大前提として、PROJECT Zはもちろん、センチネルもデータコレクションも近藤Zもそこまで沢山の人に読まれいる本じゃないだろうということがある。
機動戦士ガンダム』シリーズの設定資料買う人口なんてたかが知れてるという現実があるからだ。
もちろん、決して少ない数ではない。センチネルの設定を読んだ人が、雑誌などでまた語り継いでいくだろうというのはあるのだが…
バーザムの話題が雑誌に載る機会など、ぶっちゃけ数年前まではほとんどなかったぞ。

バーザムとMk-IIの関係、アニメに出てない設定にしては周知されすぎているように思えた。そのことにどうしても違和感があった。
何か爆発的に広まる原因となる、もっと決定的なものがあったんじゃないか?
それもこの数年の話ではなく、GFFバーザム改が発売されるよりも前、90年台の後半までに…

いや、実はかなり最初からその違和感には気づいており、広めた媒体の目星も僕にはついていた…おそらくジェリドの黄色いバウンドドックが広まったのと同じようなルートだろうと…
だが確認するのがすごくめんどくさかったので、今年になるまで放置していた。
今回はちゃんと確認したぞ。よく考えてみるとバーザムが出るところまで進めるの簡単だったからな。

SFC第4次スーパーロボット大戦

SFCバーザム

おわかりですね。こいつですよ真の元凶は。

95年発売『第4次スーパーロボット大戦』は、シリーズで初めてロボット大図鑑を実装したタイトルだそうである。そしてガンダムセンチネルが参戦して、権利的にちょっと怪しい事象が起きたタイトルとしても知られる。
そしてバーザムが出てるスパロボは第4次(S含む)とF、2次αだけだそうだ。

第4次当時の図鑑の精度が低いことを考慮しても、このシンプルな記述を疑うユーザーも多くなかったろうし、Zガンダムを見ていようといまいと、これが正しい設定だって思ったことだろう。
そして実際センチネル後の認識では正しい設定になっているので、この件でスパロボは何も間違ってないわけだが。
(図鑑の精度が低いのでハンブラビギャプランの描写が間違って書かれてる)

ちなみにこのバーザムの全備重量62.2tはENTERTAINMENT BIBLEの51ページや、後のデータコレクションで採用している数値であり、現在主流の設定は62.3t。センチネルは62.34t。
よって、スパロボはセンチネルの影響はおそらくあるが、直接参考にしているのはたぶんENTERTAINMENT BIBLEのほうだ。

一応、第4次スーパーロボット大戦S(96年)

4次Sバーザム

全く同じだった。ハンブラビのミスも直ってない。

SDガンダムGジェネレーション(98年)

Gジェネバーザム

「互換性」と同じ趣旨の設定はちょくちょく書かれているが、この当時では比較的珍しい記述だったはず。ニュータイプ100%コレクションとセンチネルにあり。データコレクションには無し。

GジェネレーションF(IFで確認)

GジェネFバーザム

内容が増加。後述するがFの内容はデータコレクションの設定に似ている。

もしかしなくても、これらゲームをやった人間はセンチネル本体の読者よりも多いだろう。
特にスパロボはデータコレクション(97年)よりも先なのだ。スパロボの攻略本にも詳しい設定が載っていたかもしれない。
データコレクションを読んで初めて知った人間よりも、スパロボで知ってデータコレクションで再確認した人間のほうが多いかもしれない。

※なお、今回はGジェネZEROを確認していない。Fと同じか初代と同じかどっちとも違うのかだが、まあ大した問題ではないと思って…。

スパロボFについては、この記事を書き終わるまで出てないと勘違いしてたので(死)、未調査である。

※ゲーム関連だとSFCの「機動戦士Zガンダム」の攻略本という線も考えたが、バーザムが出てるかどうか知らんというのと、第4次スーパーロボット大戦のほうが先に発売してるのであまり考慮する必要はないと判断した。

まとめへ…

・デザインはMk-IIと関係なかったと断定できる。
・設定化されていなかった段階で、近藤和久が最初に結び付けた。
・しかし、どのような理由でPROJECT Zにこの設定が書かれたのか、正確な発生経緯は今も不明である。
・センチネル以前に定着しつつあったことは確かである。
・しかしながら、きちんとした資料としてはセンチネルが最初にもたらした可能性もある。
・近藤漫画、PROJECT Z、センチネル、そしてデータコレクション以降の順に影響しているように見えるが、これらの因果関係を示す情報は確認されていない。
・設定が広く伝播したのはセンチネル以降で、特にセンチネルの影響下にあるゲーム等での二次的な影響が強いと思われる。
・現状は公式設定レベルであり、否定する動きも存在しない。

……ほとんど謎は解けたと思うが、これで終わりではない。
まだ最後の詰めが残っている。

「ゲームの影響がいちばんでかい」という結論を出したいところだが、それでは説明のつかない部分がまだあるのだ。Gジェネでは「ちゃんと量産されてない設定」がよく書かれている。

GジェネFバーザム2

これがF(IF)の記述。初代Gジェネにはない。
元になっているのは『データコレクション 機動戦士Zガンダム 上巻』34ページにある「逆にこれといった特徴もなかったためか、本格的な量産機とはならなかった。」ではないかと思う。

この記述はシリーズ通して受け継がれていく。
最新作Gジェネジェネシスはこうだ。

ジェネシスバーザム

びみょーに表現の変化があるが、基本Fとほとんど同じ設定になっている。
オーバーワールドとジェネシスではプロフィール加筆された機体がかなりあるのだが、バーザムはされてないほうに属する。GジェネはAOZ優遇してる割にバーザムとヘイズルをつなぐ最新設定は反映していない。

スパロボにも同様の記述があるぞ。第2次α。

ニルファバーザム

デザインはカトキザムのほうだけど、重量はENTERTAINMENT BIBLEやデータコレクションの本体重量40.4tを採用してる。現在の主流は40.1t、センチネルでも40.10tだ。
だいいちカトキザムに「生産台数は多くない」なんて設定はない。これはセンチネルを参考にした記述ではなく、データコレクションをもとにしているのだろう。

この「ちゃんと量産されてない設定」は、「Mk-IIベース」と同じくゲームで高確率で書かれてきただけでなく、書籍でもそこそこ見かける。ファクトファイルにもパーフェクトファイルにもしっかり書かれており、公式レベルは高いとみなせるのだが、あまり知名度はない、と、僕は感じている。
AOZリブートの設定で「暫定量産機」ということにして逆手に取って拾ったくらいで、しかしそれが「あの設定をあえて拾ったのか!」と話題になったわけでなく、HGUCの説明書に至っては無視、ではなく真っ向から否定してる感じすらあるが、その否定すらも誰も気づいてない。
この設定が定着してない理由はそりゃあ…クソ設定だから?
まあいかにも「ZZ以降に出てこない事情を後付けで説明してやったぜ!」みたいな適当な感じがクソですわな。
言い換えると、Mk-II設定は受け手からクソだと思われてない…?

設定の意外性から来るインパクトもあるだろう。続編に出てこないメカが正式量産されてないことにする設定を後付けしてもそこに意外性はない。
似てない機体の量産機にするのは意外性がある。記憶に残りやすい。

いやいやもっと単純に「みんなMk-IIとバーザムを結び付ける設定が好きだから記憶してる」
この話はそれだけではないのだろうか。
似てない量産機だというのは、バーザムをしっかり見た場合の印象だ。細かく見なければ、むしろ似ている部類だったんじゃないか。
異常に高い定着度自体がその根拠だ。変わったデザインだけどなんだこれと思って設定を調べるとMk-IIって書いてある。そこで「ありえねー」と思うよりも「なるほど」と思う人のほうが多いと、そういうことではないか。

岡本英郎氏は、バーザムのシルエットが三角形、コンパスであり、おそらく同じシルエットのZガンダムを意識したものだったのだろうと明かしている。この発言の受け取り方によっては、バーザムにはガンダム寄りの雰囲気が最初からあったと言える。もちろんMk-IIのシルエットとは違うんだが。
仮に、ハンブラビガルスJがバルカンポッドつけてMk-IIの量産機だと言われていたらそりゃ誤植だってみんな思ったことだろうが、バーザムはそうだと言い切れない難しさが確かにあった。脚部とかじっくり見るとだいぶガンダム系だし。
だからデザイナーによって違うことが明かされたのはそれはそれで良いことで、「後からデザインに共通性を見つけた人がいたのね」って言えることになる。それって設定が生まれる過程としてすごい自然な話じゃないですか。

結論:
バーザムをガンダムMk-IIと結び付ける設定に不自然な点はなかった。
不自然と思っている僕たちがおかしかった。

かくして結論は出たが、この記事はもうちっとだけ続く。

ニューギニア基地の問題

バーザムの開発拠点が型番からわかる通りニューギニア基地であることはもはや常識であるが、実はこれもPROJECT Zが作った設定みたいなんである。
ティターンズ型番と開発拠点を結び付ける設定、放送初期はすべての拠点に決まっていたわけではないらしい。
そして『PROJECT Z』よりも後の89年の時点、『ENTERTAINMENT BIBLE グリプス戦争編』の56ページに、「17がニューギニア、15は不明」という設定が残っていたことを僕は確認している。
この「17がニューギニア」設定の初出はPROJECT Zより先にあったとのことだ(以前、当ブログのコメントでもらった情報)
だが17がグリプスじゃないのは不自然である。だからPROJECT Zはこの設定をもとに、ニューギニアを15に修正してバーザムのものとしたのか、この設定の存在と無関係に、アニメに出てきたニューギニア基地の名を拾ってみたのか…

ENTERTAINMENT BIBLEがこの設定を採用していないのは、上記で言及してきたようにPROJECT Zの設定が非公式だったことの有力な裏付けとなるだろう。だがMk-II設定をその「公式性」とかで否定する場合、同時にこっちも否定しなきゃ筋が通らねえんじゃねえかという、単純な論点を僕は持っている。
また、バーザムがニューギニアという設定を「正式な資料」レベルで採用したのもこれまたセンチネルということになるのかな…?
この15=ニューギニアの設定はデータコレクションにはまだ書いてないみたいなんだよね…完全に定着してるんだけど、どこのタイミングでセンチネル以外に採用されたんだろうか。

今となっては定着しているこの設定だが、実はMk-II設定よりも明確に問題がある。バーザムの開発時期=カラバのニューギニア攻略までの短い期間と、バーザムの投入時期に多大なズレがあるのだ。これ気にしてる人ほとんどいないけど、大問題でしょうが。
たぶんこれを採用してきた公式側で気づいてた人間は誰もいなかったと思うけどな!

まあ、ここもニューギニア基地の陥落時期があやふやだったりするのと、陥落時期を確定したAOZ2では解決できる説明も追加されていて(AOZ2の作者は生粋のバーザム屋なので当然この問題に気づいており、解決策を息するような自然さで作中にねじ込んでいる)、別に今更問題ないかなあ、なんだけどリブートでプリムローズII内蔵問題から来る開発時期問題が新たに発生して無理ゲーすぎんだろという事態になってるのは別の話。

コミックボンボン起源説について

あまり触れたくない話。
「バーザムがアニメに出るより前のボンボンに、Mk-IIを含むMSからバーザムにむかって矢印のついた図が載った」という話があるのだが、僕はこれが後に影響を与えたものだと考えていない。どうも、一部の「絶対に後付けじゃない派の人」(これは存在した)が妙に重視してたらしい(?)のだが、経験上そういう人は妙に誇張して話を伝える傾向があるので、僕は軽視しておこうかと…
その情報を伝聞と拾いもの画像でしか知らないので何とも言えんというのもあるのですが…
聞く範囲では「いろんなもんからつながってる」の意でしかなく、Mk-IIに絞って結びつけたPROJECT Z以降の設定と因果関係はない感じがします。

が、下記で提唱する最後の疑問と関わりはあるかもしれない。

・「デザイナーは知らなかったけど最初からMk-II量産機だった説」は成立する?

モデグラのインタビューによると、岡本英郎氏はバーザムの原型となる鉛筆のラフ(作者は不明)を発注段階で見ているらしいものの、ちゃんと見てもいなかったようだ。バーザムはやっぱり岡本英郎のデザインなのだ。
では、そこにチラ見くらいはしたであろうラフの面影が全く残っていないと断言はできるのだろうか。モノアイタイプであることとか、バックパックの雰囲気とか、面影くらいは残ってるんじゃないか?
わからん。

Mk-IIと関連付ける設定が出てきた理由として、その未知なるラフの段階ではMk-IIと関係があった可能性はないか?
岡本さん自身はMk-IIを意識していないが、その原案の影響で別の人が色を決めた段階でややMk-IIっぽくなり、何らかの経緯でPROJECT Zの編者に伝わった、という仮説は成立しえないだろうか。
この仮説は、ニュータイプ100%コレクションに微妙な記述が残ってることとも符合するかも……

センチネル以前の主要資料にバーザムとMk-IIと結び付ける記述がさっぱり見当たらないことから考えると、PROJECT Zの独自設定の可能性は高い、ということが言えるのであるが、それも推測の域を出るものではなく、まだ後付けと断言はできないかなあと思っている。
バルカンポッドがついてる理由は結局デザイナー本人にもわからなかったのだ。

まあ万が一、上記の仮説通り後付けでなかったとして、デザイナーが意識してない可能性は100%なんだから、デザイン時点でバーザムはMk-IIではなかった(なくなった)ということなのだ。
それは実質後付けと同じことです。気にしなくていい問題だろう。

・そして未来へ…

HGUCバーザムの登場による盛り上がりも一段落し、新情報はあらかた出揃ったと思われる。だけど普通に人気メカであることがバレてしまったバーザムの活躍はこれからもまだ続き、また機会ごとにバーザム情報は付け足されていくことだろう。
戦いはまだ終わらない。

実際Mk-IIとの関係については、後付けであることは岡本さんの証言を取るより前にとっくに確定事項として扱ってる人も多かったようであるし、だからってダメな後付けとして否定する動きも特にないと思うけど、HGUCの説明書で「後継機」という表現を選んでいるのは、精神的後継機ということで技術的にはMk-IIと切り離す、もしくはその逆にも取れるようにしてるのかもしれないとは思った。
だが現実はプラモの開発段階でMk-IIと組み換え想定、Gディフェンサー用意してのスーパーバーザム祭りである。
バーザム改ならまだしもTV版にGディフェンサー装備ってのは、今年入った時点ではありえなかった形態ですよ。モデグラすら「本来バーザムが装備するのはおかしい」って設定上のツッコミ入れておきながら作例ではガチ再現して「オレは……スーパーバーザムだ」とか言わせてる。
それ何度も地球の危機を招いた宇宙人のセリフじゃん!ティターンズ的にダメな人じゃん!最終的に地球に恭順したけどさ!
という設定上のツッコミをもって本記事の締めとしておく。