神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

バウとバーザムがつながった

発売から一ヵ月経過したが、モデルグラフィックス2017年8月号は、バーザムファンの聖典となる一冊であった。
特に岡本英郎インタビューでは数多くの新事実が明らかになったが、今回はそのひとつ、バーザムがバウになったという話について考えてみたい。

バーザムが可変機だったという噂について尋ねられた岡本氏、「結局それがバウになったんですよ」と衝撃の告白をする。
・デザインが終わったバーザムを今度は変形させようということになり、分離合体のデザインを考えた。
・途中までやって出渕裕に渡した。
・バウの顔は最初はもっとバーザムに近い形だった。

ということで、バウの原型はバーザムだった

いろいろ前提の話が必要だろう。

バーザム可変機説について

そういう噂はあったが、これは特に根拠のある話ではなかった。ネット上で見られた俗説である。
誰が言い出したということでもなく、特定の由来はないと思う。バーザムのMA的な丸い胴体や、リアスカートの羽根っぽい形状とか、なんか変形しそうな感じはあった。
しかし決定稿のバーザム自体は、特に変形しそうな構造は残っていない。
強いて根拠を探すと、数年前に岡本さんがtwitterで可変の話を振られて、否定しない反応を残した、というのがあったのだが、これは思うに可変機としてデザインされていたわけじゃなくて、後から可変機につながったことを思い出しての反応だったのだろう。俗説はあくまで俗説だったようだ。

バウのデザインについて

バウのデザイン経緯は何度か語られているが、ラフもクリンナップも出渕裕のものであり、主にひとりのデザインだと考えられていた。ガンダムZZ出渕裕がクリンナップまでしたのはバウだけだと当時から明言している。あとガルスJの頭部だけ出渕クリンナップ。
バウがZガンダムを意識したデザインということもわかっている。『MISSION ZZ』でもZガンダムを単眼にしたイメージで描いた」と語っている。
(デザイン上はそうなのだが、設定上ではごく一部の資料を除いて、Zガンダムとのつながりを示す説明は稀である。近年RE/100でZ計画機の影響を受けた設定を採用している)
トサカがついてるMSは珍しく、バウからバーザムを作れるのではないかという話はモデグラでも以前やっていたが、デザイン段階でつながりがあるとまでは考えられていなかった。

さてバウのラフが載っているのは、『出渕裕 メカニカルデザインワークス I』(2巻は出てないっぽい)の29ページ。バウの原型「ヒリュー」のラフが掲載されているのだが、

>連邦のガンダム百式をベースに開発されたんでしょーね、やっぱし・・・
ゴッタ煮メカだねホント・・・

いやデザインしたのあなたじゃないんですか?!

この他人事みたいなコメント、つまりラフの前に誰か別の人がデザインしたものがあったということではないだろうか。その段階で百式Zガンダムっぽい要素があったと。
その原案が今まで明らかにならなかったのは、あえて出渕裕のインタビューで触れるようなものではなかったのかもしれないし、むしろ誰がデザインしたものか出渕さんにも定かでなかったのかもしれない。
モデグラの岡本インタビューでも、富野監督がいろんな人のデザインをコラージュしてデザインさせてたという証言をしている。バウもそのたぐいだったかもしれない。

だいぶ憶測が入ってしまったが、ヒリューからバウになる過程で百式要素は薄れ、ゴッタ煮ではなくZガンダムひとつに似せた機体へと集約していった様子はデザインからも見える。
ついでに憶測を重ねると、出渕裕は陣営の違いや開発系譜を比較的考えるメカデザイナーだと思うのだが、バウは敵勢力のパクリという珍しいMSである。これも系譜をあまり考慮していない原案が先にあり、たまたまZガンダムのゴッタ煮っぽかったと考えると話が合ってる気がする…
ゴッタ煮よりはZガンダムひとつに絞ってパクったほうが系譜的に納得しやすいと…

もひとつ、モデグラのインタビューとは別の岡本インタビュー
このインタビューに岡本氏がバウの原型の画稿を持ち込んでいる。「あ、バウだ!」という反応から岡本氏が「バウだとすぐわかるMS」の画稿を持っていたことは確かなようだ。
(このインタビュー、掲載順が前後しているがモデグラのインタビューより後にやってるように思える)間違いでした。モデグラのインタビューはHGUC発売後です。
この最近の情報で、バーザム自体がZガンダムに寄せていることもわかってきており、可変化する過程でZガンダム化していくのは意外に納得しやすい流れにある。

……以上、「バウ=バーザム説」を憶測まじりで周辺資料と照らし合わせた理由についても触れておく。
失礼な言い方をしますが、出渕裕、岡本英郎、両名とも何十年も前のことを正確に記憶しているとは限らない、というのは念頭に置く必要があります。特にバーザムの話はこの30年全く出てこなかった話だった。
Zガンダムからデザインされたバウ」と「バウの原型はバーザム」、この矛盾しているようにも見える説明は、どちらかの記憶違いや誤認によるものかもしれません。そのため、むしろ疑う立場で文献を確認し、結果、両者の説明に矛盾はないと僕は結論づけ、その確認も含めて記事としました。
今後この岡本証言が補強されるかもしれませんし、逆に反証も出てこないとは言えませんが、2017年の時点では「バウはバーザム」はある程度確認されたものと考えています。

真面目な話はここまでにして、あとは適当な話をする。

憶測重ね

気付いてる人は気付いている話なのだが、センチネルのリファイン版バーザムにはZガンダム百式の要素が入ってる…
モデグラ8月号の作例でもガンダムMk-IIとバーザムだけじゃなく、頭部と足首にZプラス、スカートに百式を使用している。
Mk-IIの量産機としての「こうなる筈」のバーザムとしては不自然に思える。

岡本原案バウがどんなデザインだったか結局わからないのだが、バーザムを分離可変機にしてZガンダム百式の要素が混ざったものだとすると…
センチネルバーザムはバーザムをMk-IIにしてZガンダム百式の要素を混ぜて、最終的にネオジオンに合流したかもしれない機体…そのムーバブルフレームはネオジオンで生かされた…?

バウのラフを見たのが出渕裕だけとは限らない。明貴美加あさのまさひこカトキハジメも見ていたかもしれないし、見てなくても出渕裕から話を聞いていたかも…

これは真面目な話でもあるのだけど、バーザム改にどうしてZや百式の要素が入っているのかは個人的な謎だった。カトキ氏がエゥーゴ側の機体に似た意匠を持ってくる理由、何もないということはないと思う。
と言ってもトサカがついててZガンダムに似てる機体なんてバウくらいしかないし、まさかそのミッシングリンクを意図してるのか…?と僕が考えたこともないではないのだ。
これを「カトキはバウの原案を知っててそれに近づけた」という設定にすれば個人的な謎が説明できる気がする。
ええ、ほぼ妄想の憶測ですよ!

ザム→バウの系譜を設定に組み込めるか

もちろんAOZの出番である。現シリーズがエゥーゴ編まで話が続けばエゥーゴ仕様バーザムも出てくる可能性があるし、ジェガンのスカートの話が設定に反映されたようにバウとバーザムのつながりも可能なら組み込もうとするに違いない。
現AOZはバーザムを「可変構造を省略した機体」と結論づけ、俗説を設定で肯定する形になっている。しかし建機バーザム自体は可変機ではない。
…可変構造戻しちゃってもいいんじゃないかな。
バーザムはTR-6につながる機体であり、特にハイゼンスレイII・ラーなど分離可変機であり、ほぼバーザム族である。バーザムだって頑張れば変形できるはずだ。
上位機であるTR-6とは別に、可変機構を戻したRX-155とかRX-169あたりが対Zガンダムを意識した次世代・分離可変バーザムであり、それが量産前にネオジオンに回収されてバウになる、という筋書きでなんとか行けそうな気がしてきた。
とりあえずこのミッシングリンクはAOZ設定なしでも創造できるくらいまでは来てる気がするが。

最近わかってきたが、バーザムに引っかかりを感じている業界人は想像よりもかなり多いようで、数年内にはハイザックを上回るくらいにバリエーション増えてるかもしれない。
そこからバウか…
出たら楽しいけど期待まではしてない。