神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

ウィザードリィと顔グラ

世界樹とWizの話を考えてたら思いついた話で、ウィザードリィRPGが衰退した理由に顔グラの存在が少なからず関わってるんじゃないかということだ。
いや、別に顔グラがないほうがいいという話ではないんだが…

ウィザードリィ」は完全な主観視点で、自キャラのグラフィックを持たないゲームだった。文字と数字だけでキャラクターを表現しきっている。

主人公の姿が見えないゲームというのは、少しはある。
麻雀とかを別にすれば、ファミコンだと「ポートピア連続殺人事件」がそうだ。
プレイヤーは「ボス」という人物で、その姿は全く描写されていない。画面に映るのは部下のヤス。
昔持ってた攻略本では「ボス」はステレオタイプな探偵の姿で描かれていた。ボスって刑事じゃなかったっけ…
駿河屋に画像ある。
ポートピア連続殺人事件 完全攻略本
というか高いなこの本!

ファミカセだと「スターラスター」も自機らしいものが描かれてるけど画面ではコクピットしか見えない。

このへんのゲームが比較として適切かはともかく、「ウィザードリィ」のように自分のキャラクターの姿が見えないというゲーム設計は存在する。
しかしファミコン時代にも多くもなかったと思う。
だがPS時代でも国産ウィザードリィはこの方式を続けていた。様式美だからではない。顔がないことの恩恵が多かったからだ。

キャラメイクできるRPGは何もウィザードリィだけではない。

ファイナルファンタジー方式
キャラメイク型ファミコンRPGの代表はこれだ。
「恐怖のエクソダス」のほうが早いがそんなの知らん。
FF1はプレイヤーは6つの職業から選んで4人のキャラクターを作れる。決められるのは名前と職業だけで、選べる要素はまだ少ないが、グラフィックの質は十分高い。
キャラクターの性別は設定されていないが、基本的には男性的な姿をしていて、白魔術師だけ女性寄りの姿をしている。

キャラメイクではないがジョブチェンジを採用したFF3では、主人公たちは「少年」とされた。中性的なの外見が多いのは1と同じだが、シーフに転職するとヒゲが生える。
このシステムについて「過去の勇者と同じ姿になっている」とNTT出版の攻略本に書いてあった。性別も変わるかもしれん。
さらに延長にあるFF5では4人の主人公が同じジョブでもそれぞれ違う姿になるという方式で、ものすごい量のグラフィックが存在する。
こういうのはキャラメイク型ではできないことである。

ドラクエ3方式
もうひとつのファミコンの代表作はこれだろう。
職業は勇者を含めて8つ。各職業男女2種類から選べて、勇者だけ外見が男女共通。だから外見は全15パターン存在する。
正直「外見つきのキャラメイク」はこれで十分な気がするのだが、このドラクエ3ではわかりやすい問題もある。魔法使い男が爺さんしか選べない
まだスッパマンみたいな顔の男戦士はドットじゃ気にならないし、別にスッパマンでも構わなかったが、この爺さんはいろいろ思うところがありすぎる。
プレーンなイメージとも言えたFF1とは逆で、ドラクエ3はキャラの主張が強かった。けど転職すると外見が変わる適当さ。

この時点でもう既に「ウィザードリィ型+顔」の抱えてる問題はもうこの時点ではっきりしてる。
「顔があること」が気に入らないのではなく、ただ「気に入った顔がある確率が低い」ことが問題だった。
まして「これ描いてる人ドワーフのこと好きじゃないのでは」みたいに思えてしまったらもうダメじゃないかと。

実際ドラクエ3のキャラメイクはそんなに文句を言われたわけではないが、キャラメイクは自由度が高くあるべしという風潮はだんだん強まってくる。
だがどんなに自由にしても限界がある。ヘタにグラフィックを用意されるくらいならないほうがマシということもある。

ウィザードリィは厄介なことに種族の概念があって、初期ウィザードリィは5種族・8職業である。
単純に計算すると5×8=40パターンのキャラクターが存在する。ドラクエ3みたいに男女差をつければ80種類だ。
さらにウィザードリィ6では11種族・14職業で、バルキリー以外男女差があるので11×14×2-11=297通りか。
常識的に考えてそんな描けるわけねえ。
しかもここまでやっても「人間の戦士男」は1パターンしか存在しない想定だ。その外見はフルフェイスなのか軽装備なのか?武器は剣なのか斧なのか槍なのか。

現実的には「ホビットのサムライ」使う人なんかたぶん1%もいないし、そんなグラフィックいらんわけである。汎用ホビットで我慢してもらおう。
そのへんを省くアイデアはあるはずだった。
日本版Wizで主流(らしい)のが、種族依存にするもの。男女差ありなら種族数×2あれば最低限なんとかなる。
しかしこれでも「キャラクターデザインが鳥山明」というくらいのインパクトがないと許されない気がする。
同じ人間の男でもビショップとサムライとロードと忍者の顔は全部違うイメージがあるはずだ。

ウィザードリィ6はダンジョンマスターの影響がモロに感じられる画面構成で、顔グラも採用した。
その顔は42種類ある。
PC版の顔グラはこちらのページで紹介されてる。
グラフィックの質については言わないとして、人間については全職業を網羅し、
他の種族は(たぶん)エルフ、ドワーフ、ノーム、ホビット、そして新種族のフェアリーが男女用意されているが、獣人種については全て1種類だ。割り切っている。
リザードマンのサムライを作っても実質選べる顔はひとつ。
ただし、本作は種族と顔グラの関連付けをしていない。別にサムライの顔をホビットのシーフに使ってもいい。
ドワーフとノームとか一緒でもいいし、エルフと人間の区別なんてつかないし、なんならリザードマンに人間の顔をくっつけても良かった。
しかも顔を十分すぎるほど用意できたたと思ったのか、謎の死神顔まである。余裕かよ。

PC版ウィザードリィ6の顔グラの質はまあ言うまいが、方式としてはこれで構わなかったのではないだろうか。
人間だけ優遇、他種族はどの職でもいけそうな顔だけ用意して、気にくわなければ人間の顔にしよう。これでいいんじゃないのか。
ウィザードリィ7では顔グラの質自体も上がっている。バリエーションも増えて、フェルパーのサムライ用と思われる変な顔があったりしたが、種族の偏りはそのままで、獣人種は相変わらず1種類しかないものもいる。
ウィザードリィ8では各種族数種類という方式を取った。人間やエルフが多めなのは従来通りだが、ムークやリザードマンでも4種類ずつある。
そのかわり、特定の職業用と思しきグラフィックが忍者をのぞいてなくなった。忍者だけ種族とは別にある。なんで。
そして相変わらず種族も性別も無視したグラフィックを使える仕様はそのままだ。
まあ8のやたら濃い顔グラに満足できるかは別だが…

ウィザードリィ7か8の方式で良いと思うのだが、なぜだか比較的新しい日本版Wizでは、種族と性別で使える顔を制限する方式をとってるらしい。
別にドワーフ顔の人間がいてもいいじゃない。ダメなのか?
人間だけ優遇してもいいじゃない。

「下手に顔グラ使わせるくらいならオフにさせろ」というのは懐古主義というより、割と切実な問題だった。「前衛3人同じ顔」みたいなことになりかねないし。やっぱり職業グラフィック欲しいし。侍は侍っぽい姿をしていたほうがいい。
他のゲームを見てみるか。

バーズテイル(やったことない)
同じサイトで紹介されてた。
キャラメイクできるがグラフィックは各職業に一種類のみ。
おっさんばっかりだが、ここまで割り切られるとプレイヤーも自キャラというより職業アイコンみたいなもんだと割り切ってもいいかもしれない。

タクティクスオウガとか
転職すると外見が変わるドラクエ3型。主人公だけ転職しても姿が変わらない。
「運命の輪」ではオークやリザードマンといった亜人種にも転職が追加されたが、これらは転職でグラフィックが変わらない。種族によって差別する方式。
ところでこのゲームも魔法使いが緑色の爺さんだな。ドラクエ3オマージュなのかもしれないが、他に元ネタがあるのかな。
似たタイプのSRPGの「魔界戦記ディスガイア」だと、転職がなくて「転生」と称し、完全に別人に変化するから姿が変わるという仕組みだった。

世界樹の迷宮
ウィザードリィフォロワーながら、ビジュアル面も重視している「世界樹の迷宮」では、種族は存在しないので、各職業男女2パターンずつの計4種を基本とする。初代は9職あったから36パターン。
他職業のグラフィックを使うことはできない。ドラクエ3型と比べて2倍だが、制限はかなり厳しい。
これで何とかなってるのは、もちろん単純に絵柄が良かったからであるが、それだけでもない。世界樹のキャラクターデザインが成功している理由に、世界観をはっきりさせていることがあげられる。
アルケミストの外見に「これはアルケミストだ」という世界観レベルでの主張が含まれている。この押し付けが上手くいっていたから問題なかった。
そう考えるとドラクエ3が上手くいってるのも、根本的には「僧侶が僧侶にしか見えない姿をしてる」おかげだとも言える。
雑な表現をするなら「単純に絵柄が良かった」。

でも、これでも36も用意しなきゃならんのだよな…
初代「世界樹の迷宮」に関しては全部が日向悠二さんのデザインではなく、何人かはアトラス側でデザインしたものを日向さんが仕上げているようだ。また4パターンとはいえ、半分は構図を流用し、顔や装飾品を変更したバリエーションキャラ。作業量も少しは減っていると思う。でもやっぱり多い。

キャラメイクにグラフィックを取り入れると、際限なく要求レベルが増えていく。
モンハンみたく髪型とか色とか組み合わせて作る方式を取れればいいが、ダンジョンRPGでキャラクターをポリゴンにするというのはあまりないと思う。
2Dの場合も、ファイアーエムブレムマイユニットみたいに髪型や顔の組み合わせでやる方式は存在するが、一人ならともかく6人パーティとかでこれをやるとあっという間にバリエーションが足りなくなる。いや、これもやったダンジョンRPGがあるようだが。
職業グラが欲しい場合や、ドワーフやエルフがいることが前提だともう手が付けられん。

キャラメイクからするウィザードリィ型のダンジョンRPGが一時期衰退していた理由として、「キャラクターの顔を用意できなくなってきたから」というのは、もしかしたら割と大きな理由かもしれないと思った。
特にドワーフとサムライとニンジャが無駄にバリエーションを要求している感がある。もうこれは世界観レベルの欠陥だと言ってもいいんじゃないか。
だからって…いまどき主人公の顔のないRPGも作れないじゃない!