神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

メトロイド サムスリターンズの感想

きんきゅうしれい

わくせいSR388の「メトロイド」をぜんぶやっつけろ。

 

ちょっとプレイから時間が開いてしまったが、昨年発売された「メトロイド サムスリターンズ」は久しぶりにメトロイドだと思うゲームだった。なにしろ2Dメトロイドはゼロミッションから13年ものブランクがある。アザーMからでも7年も経っているのだ。
まあフェデレーションフォースからならそんなに経ってないが。とにかく久しぶりのメトロイドで間違いない。僕にとっても僕以外にとっても。

もとより「メトロイド」はシリーズの出ていない期間が長く、初代からIIでも6年近く開いている。スーパーからフュージョンまでは9年ものブランクだ。
それでも北米を中心に根強い人気のあったメトロイドスマブラにも参戦し、21世紀になってシリーズが復活する。ここでメトロイドは2Dアクションのメインシリーズと、3DのFPSとして生まれ変わった「メトロイドプライム」のふたつのシリーズに分岐した。
メトロイドプライム」3部作はレトロスタジオ製であり、任天堂開発の2Dシリーズとは一線を画していた。

この本シリーズとプライムの分裂にまずいところがあって…
何人かにケンカを売るかもしれないつもりでぶっちゃけるけど、海外開発のプライムのほうが「メトロイドらしいメトロイド」をやってたんですよね。
無口なサムス、自由な探索(次に行く場所がよくわかんないという意味)、そしてサムスに力を与えるチョウゾたち異星人の文明。
プライム3作で無言を貫くサムスだが、時に手を振り、時に拳をにぎりしめ、その身振り、アクションで心情を語る。プライム3部作では孤独で強くて、でもちょっと弱くて優しいサムス像は完成に近づいていった。

フュージョンはちょっと言葉でのストーリーに寄りすぎた、というかサムスの独白が長すぎた。クリア直前まで行ける範囲を制限されるストーリーのため、探索の自由度もあまり高くない。
しかしそれはささいな不満である。たまにはそういうメトロイドがあってもいいと考えられた。
初代のリメイクであるゼロミッションではストーリーも初代同様最小限になり、探索順も自由になっている。
だが良くなかったのがこの次のアザーMで、フュージョンでストーリーに走りすぎたところがそのままより悪化してしまっていて、サムスの独白が長い…。
またサムスの性格面でもプライムとズレてしまっていて、フュージョンと比べてもさらに弱い部分ばかり目立ってしまっている。
いや、このサムスの性格は先に漫画版(現在入手困難)で語られたものと一致してるんだけど、あの漫画を絶対的な公式設定だと思って読んでた人そんなにいないだろ…。プライムで見られた異星文明の掘り下げも、アザーMは舞台が宇宙ステーションなのでほぼない。
ゼロミッション良かったじゃない。なんでアザーMはああだったのさ。

「サムスリターンズ」は、そんなアザーMでのもやもやが浄化されることなく7年経って、ようやくリターンしてきたサムスの物語である。
本当に久しぶりになる、完璧な2D作品である。グラフィックは3D化されているが、サムスの動きは二次元世界にあり、奥への移動のような概念はない。
演出面では3Dを完全に生かし。奥側に配置された遺跡やボスキャラが臨場感を高める。いわゆる2.5Dアクションだ。

そして本作はメトロイドIIのリメイクなので当然なのだが、初代のリメイクであるゼロミッションの正式な続編でもある。ゼロミッションデザインのスペースシップとマザーブレインも冒頭でチラっと登場。もはやゼロミッション自体がリメイクされてもおかしくないくらいの時間が流れてしまったが、ちゃんと前のリメイクのことを忘れていない。
だがそれだけではない。本作はプライムを経た作品でもあり、2D作品であるにも関わらず、ゲームの雰囲気からしてプライムからのフィードバックが強く感じられるのだ。
今回海外開発だしね。
乏しいヒントでメトロイドを淡々と探していくストーリー。未知なる力を授けるチョウゾの遺跡。アイスとノーマルのビームを使い分け、フリーエイムで正確に狙いをつけるバトルシステム。モーフボールやスパイダーボールまで駆使するボス戦。
グラップリングビームの移動以外の利用はプライム3の後だからこそ導入できたものだろう。
そして無言のサムスである。本作にサムスのセリフはひとつもない。
ゼロミッションですらモノローグが少しはあった。アザーMやフュージョンほど饒舌でなくても、スーパー以降の2Dメトロイドのサムスはしゃべってきてるのである。
それを選ばず、本作は無言で語る、言葉でなく動きの演技で語る、プライム三部作のスタイルを忠実に受け継いでいる。
原作に忠実であるとも言えるが、その動きの演技は饒舌だ。本作にはサムスがキレてる!と一発でわかるシーンもある。そうした感情をあえてセリフとして発しないスタイルが今回選ばれた最新のサムス像である。

そしてエンディングで青いスーツになってるサムス!
ベストエンドの画像じゃないから貼っちゃうぞ。

サムス

サムスには「グラビティスーツのせいでいいシーンでピンク色になってる問題」というのがあり、アザーMのときはバリアスーツにオーラを重ねる演出とすることで対応していたが、今回はそんなこざかしいことしない!
今回のグラビティはプライム1と同じく青で、エンディングでもわざわざバリアに戻ったりしないぞ。
プライム3の最終スーツみたく、バリアスーツからデザインも変わっている。

もちろんそんなプライムとの共通点探しをしなくても、2Dアクションとしての出来も素晴らしい。多彩な攻撃を繰り出すボスにメレーカウンターがいいアクセントとなり、ボスに有効な攻撃を探す謎解き要素まであるのだ。
広大なマップはおそらくシリーズ最大規模で、あらゆるところにアイテムが隠されていて、攻略順を探るのも楽しい。そして難しい。
サムスリターンズの難易度はマジ高い。
はっきり言ってノーマルでもゼロミッションハードモードくらい食らう。適当にやってるとボスどころかザコ相手に普通に殺されたりするので、もう命を賭けるしかない。
ハードとかフュージョンはどうなるんだって言うと誇張なしに一撃で死んだりするぞ!
そういう意味ではシリーズ経験者以外にはおすすめしにくい。こりゃ長年2Dメトロイドに飢えてる連中のために作られたゲームだ。
けどコンティニューがボス直前からできるので死にまくって倒すことはできる。

少しは不満もある。不満というか心配に近い。
確かにメトロイド2は似たような性能のクリーチャーが無駄に多かったが、リターンズはザコ敵の種類がオリジナルよりも減っており、序盤から最後までグルグやナードの相手をさせられる。こいつら自体はオリジナルよりも多彩な攻撃を繰り出すようになっているが、色違いパワーアップ版を出してまで長期間出すような敵ではないと思う。
やはりこういうところに開発コストが高騰してる影響が出るんだろうか。

またメトロイドには欠かせないアイテム収集要素だが、これが惜しい。
これは原作に忠実なリメイクなせいだが、本作は新しい装備を探しに前のエリアに戻るということが基本的にない。通常は各エリアでタンク以外のアイテムは全て取る必要があり、メトロイドも各エリアで全て倒さないと先に進めない。
一部アイテムは無理すれば回避できるようだが、まともなプレイの範囲ではスプリングボールすら進行に必要な設計になっており、故に取り損なうこともない。進行はフュージョンのように一本道になっている。
前のエリアに戻って取れるのはミサイルやエネルギーのタンクのみである。
そして本作のゲームバランスの特徴で、たとえ前のエリアに戻ってタンクを取ってもあまり有利に働かないというのがある。
全体的に敵の攻撃力がメチャクチャ高い(エネルギーでゴリ押しにくい)のと、回復アイテムを集めやすい(ミサイル切れの心配が少ない)、そしてリスタートが容易(プレイヤーの上達を強制する)という三大要素があるためだ。

すなわち、過去エリアを巡れば多少パワーアップはできるが、スーパーメトロイドみたいに過去エリアにエネルギータンクがぼろぼろ出てきて難易度がだいぶ下がるみたいなことはないので気休め程度だ。SR388のサムスに前に進む以外の選択肢はない。
最後に全部の装備が揃った時点で、パワーアップ目的というより、アイテム回収率を高めるためだけに戻ることになる。
難易度が高いのはいいが、このへんはゴリ押せる余地がもう少し欲しかった。

あと、今回フュージョンとゼロミッションで好評だったコドモむきモードがないじゃないか!
あのほのぼのとしたひらがなサムスを返してくれ!

そんな感じで多少不満はあるんだけど、でも久しぶりに2Dメトロイドだと思える一本だった。この先に続くことを願う。

今後の展望がある。
メトロイドIIと同様、本作のアイテム回収率はエンディングに影響しない。ベストエンドが4時間以内100%とかだったら死ねたな…
代わりにアイテム回収率に応じて「チョウゾメモリー」という連作イラストが開示されていくようになっている。
ここで語られるのは、メトロイドを生み出したチョウゾたちの物語で、途中までは他のメディアで過去に語られた内容と同じようなものである。

メトロイドはXを倒すことを主な目的としチョウゾが生み出したらしい。
だがチョウゾはメトロイドを制御できず封印することになった。現在この情報を確認できるメディアはゼロミッション公式サイトのQ&Aである。
本当はこのへんの事情を漫画などで明かしていたのだが、このメディア展開は完全に失敗した印象だ。漫画はさして話題にならないまま無駄にプレミアだけがついてしまい読むこともできなくなり、設定も公式なのかどうかあやふやなのがQ&Aという媒体で公式なものとして肯定されているが、ゲーム内では語られないままになっていた。
これが本作のチョウゾメモリーでようやくゲーム内で語られるようになったのだが、問題はメモリーの最後に見られる謎の画像だ。
そこにあるのはこれまでになかった情報であり、答えのない不可解な出来事の記録である。…詳しくは説明しない。自力で100%到達して確かめていただきたい。
この真相が語られる日は来るのだろうか。

語る気がなければこんな画像は出さないはずである。
やるんだな!

まずはメトロイドプライム4を待つことにする。