神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

カカフリが熱い

テレ朝のアレで仮面ライダービルドの裏番組にされてしまったドラゴンボール超は宇宙サバイバル編が始まって既に半年以上。力の大会開幕からでも4ヶ月が過ぎた。48分あった試合時間も残り19分…まるでナメック星で戦っているような進行速度だが、このシリーズで注目されるのはフリーザである。
ドラゴンボールは一度は敵だったものが仲間になるパターンを繰り返してきた漫画だが、他の漫画と少し違うのは悪人が悪人のまま仲間になることがあることだ。ピッコロは仕方なく共闘した後で改心していった。ベジータは改心しきれなくて悪人に戻るために裏切った。
それがドラゴンボールという漫画であり、ついに原作中で仲間にならなかったフリーザもその対象となる日が来た。

フリーザと悟空の関係はそんなに長くはない。フリーザにしてみればしぶといベジータを倒したら急に出てきた知らないサイヤ人で、2度目に自分を殺した相手ではあるが戦ったのは正味2回だけ。
悟空にしてみても惑星ベジータの記憶はないし、クリリンも生きてるので仇としてはそれほどこだわってない。
これまでのフリーザは単純な強敵であり、正しいライバルの位置に立ったことはなかった。
復活のFまでのフリーザの扱いもライバル的ではなかった。アニオリの地獄でセルと一緒に出てきて適当に倒される。復活のフュージョンで適当に生き返ってインフレについていけず瞬殺。
「復活のF」の功績は、インフレを解消してフリーザを一線級の戦士として生き返らせたことだ。

フリーザのスカウトを思いついたのは悟空だ。だいたい悟空自体そんなにすごくいいヤツじゃないので、そういう仲間を許容する男で、ベジータさんですら反対なのに、なんか嬉しそうにやたらフリーザを推す悟空。いやおそらく本当に嬉しいのだ。悟空は合法的にフリーザを味方にできることを喜んでいた
そしていざ会えばそんな浮かれた様子を全く見せずに、まるで何ヶ月も戦い続けた宿敵のように険悪な空気を演出しながら、お互いなぜかお互いのことを理解してて妥協点の探り合いをやる。
あのフリーザが悟空をよく理解してるのだ。ベジータの思考は大して読めてなかったフリーザが悟空のことはよくわかってる。自分と戦いたいのだろう、自分の強さを見たいのだろうと煽ってくる。その通りなのでちょっと苛立ちながらも認めてしまう悟空。
この関係、完全にキている。
サイヤ人嫌い、特にソンゴクウのこと大嫌いなフリーザ様、嫌いすぎて生き返る予定もないのに死んでる間もずっと悟空の倒し方考えててイメージだけでパワーアップしちゃうほど嫌いなので、誰よりも悟空の煽り方を知ってる。だけど煽るだけじゃつまらないからつい挨拶ついでに殴っちゃうくらい嫌い。
実際会ってみたら悟空もフリーザのことやっぱり嫌いなので思わず殴り返しちゃう。いくら悟空さでも意味のない暴力を気軽に振るえる相手など今までいなかった。これは…すごいぞ。カカフリの危険性はもはやただのパパ友と化したカカベジを越えている
フリーザカカロットと呼ばないけど響きがいいのはカカフリだな。

さっさと行きたい悟空に「あなたも付き合いなさい」って命令系で言うところはもう最高。
こいつら本当に嫌い合ってるはずなのに、なんでこんなやつと組まなきゃならないんだとイヤになることは全くない。お互いを理解してる。この関係が成り立つのも、どちらかと言えばフリーザのほうが悟空を信頼しているからだ。
フリーザは長年死んでる間に勝手に理想の上司とか勝手に言われたりしたけど、実際はギニュー隊長以外の部下には優しくない人である。
そのフリーザが悟空を助けることに抵抗はないのか?
ない。かつてナメック星で助けたのと逆の立場で、助けられた悟空もあまり気持ちよくないからな。フリーザは悟空をちょっと扱いにくい部下と同じレベルで制御できるし、悟空を助けるだけで悟空を苦しめることもできるので気分は最高である。でも見られたら恥ずかしいので見えないところでバレないように助けるのは忘れない。宇宙の帝王がデレるところを見せていい相手は悟空だけ。

余裕の態度のフリーザはジレンの相手をするのは悟空だと言う。悟空ならばジレンを倒せるという本心からの信頼なのか、それとも実はフリーザも悟空と同じレベルのパワーアップができる自信があるのか。
やっぱりフリーザは第7宇宙の存亡もどうでもよくて、最高のタイミングで裏切るつもりなのか?
この味方なのにちっとも油断できない危険性こそ、フリーザに求められていたものではないだろうか。

「復活のF」の功績は、インフレを解消してフリーザを一線級の戦士として生き返らせたことだった。理想の上司などという原作にそぐわない虚像を否定する悪くて強いフリーザの復活。
しかし…それだけの話なら予告編だけで終わっておけば良かったのだ。普通に悪くて強いフリーザを普通に倒して終わる話で盛り上がれというのは厳しいものがあって、それだけでも厳しいのにパワー切れ狙いなどというつまらない勝ち方。やろうと思えば理想の上司という虚像を実体化させることさえできただろうに、ただの悪い奴である。ライバルとも言えない。この先のフリーザの扱いに暗雲が立ち込めたと言っても良かった。
だがその不安を解消するように、悪くて強いフリーザの完全復活だ。悪くて強いのに仲間。仲間なのに全く安心感がない。なのに助けてくれるし頼りになっちゃう。
これは復活のFの不遇を経たからできる展開だ。映画とテレビで2度も同じことをやったのは無駄ではなかった。決して相いれないフリーザと悟空の、ベジータとは全く違う位置でのライバル関係。連載終了から長い年月を経て、強いだけではない、安易に理想的なキャラ付けでもない、本当に悪いフリーザ像はついに完成に至ったのである。

まあ…
たぶん今のフリーザの活躍ってほとんど原作者の案じゃなくてアニメのスタッフのオリジナルでさ…アニメのスタッフはよくやってると思うんだけど…
フリーザの活躍はいいけど宇宙サバイバル編ってストーリーものしてどうかと思う展開で…バトルロイヤルなのに戦いが同時進行してる感じが全然ないし、何ヶ月もやるバトルロイヤルに48分って時間を与えてしまうのは構成レベルでどうかしてる。で、今までのパターンからして原作者の原案によるろくでもないオチ、たとえばフリーザが消滅する的な…が待ってる予感が既にあるわけである。

ドラゴンボール超だっていつかは終わるし、宇宙サバイバル編かその次くらいで終わるのかもしれないが、今のフリーザと悟空の関係は先につながるものであってほしい。