神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

ゲーム攻略本が設定を創造する―、あるいはガノタは「さんせつこん」をトンファーにする

ゲームの攻略本が好きである。
楽しみ方はいろいろで、パラメータを比べたりするのはもちろん、一度クリアしたゲームでも過程を再確認したり、知らない攻略法に驚かされたり。
攻略本がなければ見つからない隠し要素なんてのもいいが、やはりゲームに出てこない裏設定が書いてあるのは良い攻略本だと思う。

名著ウィザードリィのすべて」の話をする。
著者は「隣り合わせの灰と青春」でゲームノベライズの分野を開拓したベニー松山
本書はファミコン版「ウィザードリィ」と「ウィザードリィII」の攻略と解説書であるが、ゲームの攻略本としては珍しく著者名が表記されている。
攻略本としても基本を押さえたものとなっているが、見どころは読みごたえがある解説だ。モンスター、シナリオ、アイテム、呪文、街の運営やゲームシステムの解釈に至るまで、様々な解説がなされており、読み物としての完成度が高い。
本書はアスキー協力のもとに編集されたようだが、設定のほとんどはベニ松氏のオリジナルと思われる。「隣り合わせ~」でフラックのブレスの属性を間違えてたことに言い訳も書いてある。
ウィザードリィ」はモンスターの設定がゲーム内では確認できないので、本書の解説は主にパラメータと末弥純のイラストに基づいた創作。もっとも、そのイラスト自体が他のモンスターマニュアルに元ネタがあったりするようだが。
ウィザードリィは原作に明確な設定のないゲームだから、このように独自解説を書くのも自然なことだった。
間違いもちょっとあるよ。レベル10ファイターは名に反してレベル7なんだけど(マカニトが効く)、本書はレベル10だと信じてるようで、レベル8より性能が劣ることを不思議がっている。
「ささえのたて」が8Fで入手できるというデマもこの本にある。実際は入手法はないようである。でもたまに入手報告あるんだよなあ。8Fだから出るって設定はしてないと思うが…
こういう間違いがあるのも、攻略本をメーカー提供のデータに頼らず(というか完全なデータが提供されてないのだろう)、手作りしてる裏返しであると言えようが。

ウィザードリィで密かにおすすめなのが、ローカスのウィザードリィ リルガミン サーガ 公式ガイドブック」。「ウィザードリィのすべて」と対照的に、設定面の掘り下げはほとんどないが、こちらはデータ面が充実している。ACが命中率に与える影響や罠解除の成功率など、ファミコン版では公にされていなかった具体的な計算が載っている珍しい本だ。まあPS版とファミコン版で計算違うものもあるが、かなり概要は通じるだろう。
敵が落とすお金とか、侍のHPの計算法(1レベルぶん多くダイスを振る)とかこの本で初めて知った。クリーピングコインはお金を持っていないと言われていたが、実は落とす金額が同ランクの敵より多いらしいぞ!
あと単純にPC版マップのダイヤモンドの騎士の攻略本は貴重。
また、移植スタッフのインタビューだけでなく、珍しいことに末弥純羽田健太郎のインタビューが載っている。これもポイント高い。
この本の弱点をあげるなら、何を思ったか地図をポリゴンで描画していて読みにくいことだ。データもかなりレアな情報が載ってるのはいいが、戦闘の計算がコラムとして飛び飛びのページにあったり、#1から#3の三作のデータが変な順番で載ってて散り散りである。読みやすくない。

ゲーム中に出てこない設定が攻略本に書かれるというのは「ウィザードリィのすべて」に限った話ではない。FFの攻略本も大好きですよ。
NTT出版ファイナルファンタジーIII 第1巻 基礎知識編」
本書は本格的な攻略に踏み込む前の、ジョブ、魔法、さらに世界観の詳細な設定解説書だ。あと石井浩一さん、時田貴司さんと、スクウェア社員の人のイラストがちょっとだけ載ってる。
この「基礎知識編」には大きなバックストーリーがあり、過去にサロニアとサスーンの間で起きた黒魔道士と白魔道士の戦争というのを記述している。その脇でファルガバードを興した魔剣士レオンハルトの話や、街の人口とか面積とか、ゲームを進めるうえで何の役にも立たない情報が山ほど載ってるぞ。アムルの人口598人とか何を数えたんだ。
いやこれは面白いんだけどこれ公式設定?って不安になる。

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でもオフィシャルガイドブックって書いてあるし…
しかし本書以外でサロニアとサスーンの戦争なんて聞いたことねえしDS版でも全く出てこなかった。本書の内容はその後別の公式本やDS版に反映された様子はない。

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ジョブチェンジで少年たちにヒゲが生える理由は個人的にこれで納得している。性別もか。

NTT出版のFF3攻略本は全3冊。「第2巻 完全攻略編 上」「第3巻 完全攻略編 下」がある。2巻以降はストーリーを追った攻略と、アイテム、モンスターの解説だ。こっちも見どころは多い。
この記事で注目したいのは没モンスター。ファミコン版FF3には「グラフィックとパラメータが設定されているがどうやっても出現しない」というモンスターが数種類存在する。ところがそのうち何体か、「さまようきんか」「フリアイ」などが間違って?攻略本に載ってる。
この攻略本に載っていた没モンスターは、DS版では正式に出現するようになった。
だが全部ではない。データ内に存在していて攻略本には載っていなかった他の没モンスター、「フェニックス」「テリブルドラゴン」などはDS版にも登場しない。

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さらに、この「シードラゴン」は他の没モンスターと違い、ファミコン版のデータ上も存在しないそうだ。攻略本のパラメータはネプト竜と大部分一致しているとのことで、データごと改名されたと推測される。そのシードラゴンだが、DS版ではかなりレアなモンスターだが出現する。
すなわちDS版は、ROMの中に埋もれていたデータだけではなく、攻略本も参考にして没モンスターを復活させたと考えられる。そういうこともあるわけ。

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アイテムのほうも。有名なページだがトンファーはサイで三節棍はトンファー
ライターは「さんせつこん」が何だかわからなかったのだろうか…でもゲームのグラフィックはどっちもヌンチャクといっしょだしサイってことはないよなあ…
イラストが間に合わない事情があって仕方なく別のものを転用したんだろうか。
逆にサイに対応する武器はFF3にないんだけど、何のために描いたイラストだ?

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モーニングスターもこんなイラストだけどゲーム内ではちゃんとモーニングスターだからな!しかもこのゲームにメイスなんて分類ないから!
ただでさえバイキング使わないので知ってる人ほとんどいないと思うけど、FF3のモーニングスターは戦闘では固有グラフィックの鎖鉄球で、ヌンチャクの色違いで済ませているトンファーと違ってちゃんとモーニングスターの名にふさわしいグラフィックがある。攻略本のイラストは完全な間違い。

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説明文はあってる…

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だいたいこれはFF2のミスリルアクスのイラストだ。これは徳間書店ファイナルファンタジーII完全攻略本 上巻」(公式という表記のない本)。違う出版社でイラストの使いまわしがあるということは、これら武器イラストはどうもスクウェア側から提供されたものではないかと思うが、謎である。
実在の武器に対する間違った解説。そういうこともあるだろう。当時の最大手レベルのRPGでさえも、攻略本に正しいことが書かれないというのはありえる話だった。それはそれで記憶されるべき話ではないだろうか。
ウィザードリィのすべて」にも、フレイルが何か知らないように感じられる記述があった。

あと「あくまのためいき」

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それっぽい解説がついてるが、実際の効果はエスナではなくキルだ。攻略本が間違い。
だがなぜかDS版ではエスナの効果の「てんしのためいき」に変更されている。スクエニ的に攻略本の解説が正しくてゲームのほうが間違ってるって判断でもあったんだろうか?
どうせ影の薄いアイテムだから、あえて古い攻略本の誤記に合わせてみた?これも不思議な話であるね。

NTT出版のFF攻略本というと、FF4以降の点描イラストも馴染み深い。「SFC時代の攻略本版エクスカリバー」のデザインは、ゲームの印象とはだいぶ違うのだが、FF12のトウルヌソルの元ネタとして使用された(正確には5のエクスカリパーのイラストとのことだが5の攻略本は持ってないの)。リメイクや続編で過去の攻略本からネタを拾う事例は探せばそこそこあるのだ。

プレミアがつく攻略本も増えてきて、まあレーシングラグーンファンブックみたいな珍しい本ならそれもわかるんだけど、正直とても貴重なようには思えない攻略本も高値がついてたりする。古いハードの本をなぜかブックオフが扱わないせいもあるんかなあ。
ラグーン以外で僕が持ってるやつで言うなら、スーパーメトロイドの攻略本がかなり値上がりしてるようだ。
任天堂公式ガイドブック スーパーメトロイド サムス・アランの2時間59分」。あの複雑なマップの惑星ゼーベスを、ベストエンドの時間内でアイテム全回収できる攻略ルートで完全解説する攻略本だ。序盤にボム取った直後に遠回りすれば取れるアイテムも、わざと後回しにして最短ルートで進めていく熱い攻略。
さらにスタッフインタビューや占星術師アリアドーネ・ユウコさんによるサムスの夢診断コーナーもあるぞ。
この本も設定書として価値がある。
メトロイドには北米のNintendo Power誌に載ったスーパーメトロイドの漫画というのがあって、それが21世紀以降のメトロイドの設定の基礎になってるんだけど、当時の日本版では、その漫画の一部カットや解説が、この小学館の攻略本に断片的に載ったくらいしか情報源がなかった。
サムス自身が鳥人族の後継者であることと、キートン議長の名前は、日本版ではおそらくこの攻略本が最初に出したものだ。
もっとも、北米版の漫画にあったサムスの育ちも惑星ゼーベスであることや、リドリーとの因縁などはこの本にも書いてなく、日本版では長年明かされてなかった(はず)

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攻略ページにあった惑星ゼーベスのえらく細かい設定。これは北米版にはない設定のようだ。今回確認してないがマガジンZ漫画版に一部反映されてる模様。

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こっちにはアイスビームのものすごい設定が書いてあるが、これはなかったことになっており、現在も普通に冷気として説明される。

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あと白黒ページにクリーチャーの名前、説明書に載ってないやつもこの本で一通り明らかになるが、フーネのパワーアップ版ナミヘ。ネーミングひどすぎるだろ。
このスーパーメトロイドに限らず、アクションゲームは攻略本がないと名前わからない敵がかなり多い。コンボイの謎の攻略本もザコ敵の名前全部載ってるやつ持ってたんだけど、どこかにしまい込んでしまった。

そう、今回の記事で書こうと思ってたんだけど発掘できなかった攻略本がひとつあるんです。双葉社の「メトロイドII必勝攻略法」。
「公式」とつかない薄い攻略本で、攻略も手作りで不完全で、載ってないミサイルタンクがいっぱいあるという、あまり優秀とは言えない本だ。ただしメトロイドIIの紙の攻略本はこれしかない。間違いでした。勁文社からも出てたようです。
メトロイドIIスーパーメトロイドと違い、クリーチャー名が一通り説明書に載ってるので、この本で明らかになる情報はラスボスの名前(説明書には載ってないが、公式サイトには載ってる。おそらくゲーム誌などで公開されたのだろう)くらいなんだけど、ひとつだけ気になる情報がある。メトロイドIIには序盤から出てくる「上から落ちてくるスクリーみたいな敵」がいるんだけど、全ザコの中でこいつだけ説明書に掲載されていない。
海外でも「Yodare」という非公式の通称があるのみだった(誰のネーミングかは知らん)。
双葉社の攻略本もこの敵だけ紹介をスルーして、名前は掲載していないんだけど、しかし攻略ページのどこかに「通路の上から落ちてくる岩つららに気をつけよう」みたいなことが書いてあったはずなんですよ。こいつ特につららのようなクリーチャーではないんだけど。
時は流れ、サムスリターンズにこいつも登場した。そして、その北米版の攻略本でこいつの名前が「Rock Icicle(=岩つらら)」になってたんだと…
公式じゃない攻略本由来の情報が26年後に海外で反映されたということ?そこまで読み込んだマニアがいたんだろうか。
興味深い話だ。
ここまでわかってるのに、この攻略本を発掘できず、記憶のみで書いてるのは非常に残念な感じなので、もし発掘できたら更新したいと思っています…
なおサムスリターンズは日本で攻略本が出ておらず、クリーチャーの日本版公式名は全部不明である。

攻略本は公式かどうか関係なく、たまにゲームに存在しない設定を発生させることがある。それが時を越えて、ゲームのほうに反映されるということさえあるのだ。そのパターンはおおむね以下の3通り考えられるだろう。

1.もともとゲームの製作側にそういう設定があって、たまたま攻略本で発表された。
これは普通。

2.攻略本のライターが独自に設定を作った。
これもありうる。

もうひとつのパターンとして、
3.攻略本のために制作側が新しく設定を作った
というのも考えられる。FF3基礎知識編はライターが作ったパターンのような気がするが、「あくまのためいき」の件とかを見ると、一部公式が作ったものも入っているのではないかと思う。

誤解してはならないが、仮にライターの創作設定であったとしても、それが間違ってるとは限らないことだ。オフィシャルを名乗る以上、公式サイドは一定のチェックをしてお墨付きを与えているはずである。イラストは公式側の提供っぽいし。そこに公式性がないわけではない、公式の名に信頼はあるのだ。

そういうチェックしたうえで、さんせつこんを通してしまったスクウェアは甘いというのは、そうだが。
ウィザードリィのすべて」の場合なら、これは良書だし突飛な解釈をしてるわけでもないけど、たぶんチェックしてるのはアスキーだけで原作メーカーのサーテックはほとんどチェックしてないだろうということも言える。ほぼ独自解釈本だろうと判断できる。

実在の武器やモンスターに対して間違った解説をしてしまうのを責められはしないこともあるし、独自解釈することもあるだろう。ゲームに出てない部分の設定に解釈を与えるのも攻略本の仕事だと考えられる。
もっとも、ゲームの大容量化で、そういう解説がゲーム自体に付属することも多くなった。
攻略本に解説が必ずしも求められなくなっていくのは、もう20年前のリルガミンサーガの攻略本でも既にそういう傾向が見える。
でもそういう解説があるのとないのでは、やっぱりあったほうが嬉しいと思うのである。

ところで、実在の武器や既知のモンスターではなく、既存のロボットアニメの設定で、攻略本のライターによる創作が行われていたらどう思う?
うん、またなんだ。
長い前フリだったが、これはガンダムゲーの攻略本についてのお話なんです…
以下はある程度ガノタじゃないと面白くないです…
むしろガノタでもちっとも面白くない、不愉快に思えるかもしれません…書いてる僕がそんなに面白くないです…

本来はガンダムだから攻略本の事情が変わるということはなくてですね。
ガンダムゲーの場合、中にはゲームオリジナルメカが出たりします。その設定画が攻略本で初めて載ることもあって、それはまさしく公式な資料として価値のあるものになってくる(実際、ゲーム以上の高値で取引されてるものもあるようだ)。
しかしどちらかというと多いのは既に設定のあるアニメやMSVのメカであり、攻略本も主にそちらを解説することになる。それは既存の設定の再解説であって、実在する武器や既知のモンスターの解説と根本的には同じようなもんである。
でもこれは慎重にしなきゃならない、というのは古いスパロボの攻略本でキースや五飛がボコボコに書かれてるのは有名な話ですね。あのへんの扱いが現在のごひのイメージに全く影響してないとは言えない…。
あれはゲーム内の扱いの話であって、実際にゲーム内では弱いのだからそう書くしかない気もするし、別に原作の五飛が弱くなるわけじゃないが、それでも禍根は残したと言えよう。
この他にも原作のロボットアニメについて、ゲーム内の話題にとどまらず、中には原作に対するライターの独自解釈・個人の感想みたいなのもあったりもした。とはいえ、これらは個人の意見だとわかるような書き方を普通はしていた。
攻略本はたとえ公式ガイドブックと書いてあろうと、全てが原作アニメに対する公式資料として扱われるものではない。言うまでもない話である。普通はね。

それでこちら

機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威V 公式コンプリートガイドhttp://bneb.qbist.co.jp/bngb/gga
>全キャラクター、全MSなどに設定解説をも用意!
>特製の宇宙世紀年表とあわせて読めば、誰でもガンダムにくわしくなれる!

SDガンダム ジージェネレーション ウォーズ 公式コンプリートガイドhttp://bneb.qbist.co.jp/bngb/ggw
>原作での活躍を紹介するコメントもついているので読み応え十分!

SDガンダム ジージェネレーション ワールド 公式コンプリートガイドhttp://bneb.qbist.co.jp/bngb/ggwo
>すべてのキャラクター、ユニット、戦艦について、
>データはもちろん、原作の設定も解説

今回扱うのはこの3冊だ。すべてバンダイナムコゲームス公式攻略本である。一見して不審な点はない、珍しくもないガンダムゲーの攻略本だ。
この3冊はいずれもキャラクターとメカのデータページに「設定では」コーナーがある。こんなふうに。

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ゲームしかやってない人に原作の設定を伝えるありがたいコーナーのように見えるでしょう?

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こんなふうにアニメ版のアムロさんにいきなりセンチネル固有設定の18TFASが入ってきてたが、センチネルはこのゲームにも参戦しているし実質公式で原作。このくらいでどうこう言うこともなかろう。

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だがこれは北爪漫画の設定らしい。あれは…公式?
ティターンズ加入前エマさんの話題なんてないのはわかるが、このゲームに北爪漫画が参戦してないことも確かだ。

このように、数ページ読むだけで小説版だったり北爪漫画だったり当時の裏設定扱いのものだったり、公式設定かどうか微妙な記述がときどき混ざってくるのがこの攻略本だ。ゲームの原作としてクレジットされていない媒体も含めてだ。
パイロットですらこうなんだからメカはどうかというと、

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もちろん安定のスウィネン社である。
しかもスウィネン社自体がジオニック系だったという勝手な解釈を追加し、設定の整合性を勝手に取っている。

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模型作例機も収録。ドーガシリーズに影響を与えたとする情報源不明の記述も添えてバランスもいい。
ガルスGは大昔のホビージャパンのムックに載った単発の模型作例。ガルスDはB-CLUBの作例らしいが知らんぞ…
追記:ドーガとの関係はダブルフェイクのザクIII後期型の当時設定にある記述だろうとの情報をもらいました。

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ピクシーを陸軍のG-4計画と断定しちゃってるが、ないですよそんな設定は!
※「G-4計画」とは!連邦の各軍で新型ガンダムを開発していたという、漫画「MSジェネレーション」の設定で、そこに陸軍が作ったガンダムについての明確な設定はないのだが、それはピクシーに違いないという俺考察を公式設定のように語る人が後を絶たず長年混乱のもとになっている件。まさにこの本のように。

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キリマンジャロガンダムMk-IIIは定番ですね。
キリマンジャロ基地で開発したガンダムMk-III"イグレイ"というのが昔のモデグラの作例独自設定にあって、本来は作例発表時から非公式扱いのはずだけど、知名度が高いみたいで、たまに公式な文献でも言及されて事実上公式に近い扱いを受けている。
じゃあこれは実質公式だから問題ないのかというと、そうではなく、イグレイの存在が公式設定かどうか関係なくエゥーゴのMk-IIIと関係があるという情報はなく、この本で創作した解釈としか思えない。「いわれている」って誰が言ってるんですか?

このように、だいたい2ページに1回くらいのペースで公式か微妙、というより、もっとあからさまに非公式な記述や、非公式設定を肯定するための完全な独自設定が混ざっている。
しかも独自設定と言っても、いかにもネットや考察同人誌からそのまま持ってきたみたいな安易な解釈が目立つ。
いわゆる「全肯定」系のやつだ。
以前書いたデータガンダムの記事の冒頭で触れた件はこの本だ。本来、一部の同人誌で独自にやっていた設定遊びを、なぜか商業媒体で正史のように扱うものがいたのだ。
全部突っ込む気もないがバーザムだけ触れておこう。

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ここにあるペズンの亜種ってのはまあバーザム改のことなんだろうが、この2009年当時、まともな設定ではバーザム改は「センチネル版デザインのバーザム」という扱いを脱しておらず、設定上テレビ版とバーザムと分離してなかったんですよ。
仮にバーザム改としての分離が既になされていたとしても、ペズンに亜種があったって設定は2018年現在もないんですがね。センチネルにバーザムはニューギニアって書いてあるからね。
俺設定としては超メジャーな解釈で、データガンダムにもペズン・バーザムって謎の名前で書いてあったりしたけどさ。
この本もデータガンダムも勝手に設定作っちゃってる自覚あるんですかね。
いや百万歩譲ってこれが俺設定じゃなかったとしてだ、バーザム改はこのゲームに出ないメカなんですよ。問いたいが、ガルスGだのORX-003ドミンゴだのについて触れ回ることが、ゲームやアニメの設定を理解する助けになるんですか?ジェリド出撃命令とか知らんし。
文字通り無駄な知識を押し付けてるだけじゃないのか。それとも知識をひけらかしたいのか。

これがアクシズVの状況だ。
Gジェネウォーズもあまり変わってない。CDAも近藤漫画もマイナー文献も区別なしよ。

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影武者の記述は長谷川漫画「ゼータガンダム1/2」だな。オフィシャルではございませんぞー!

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スウィネン社について書かなければならない病気。

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「ジオンの再興」のオリジナルのB型とか知らんし…このゲームと関係ねえし…
アクシズVから記述が変わってて、以前書ききれなかった設定を足してやろうという気概を感じる。
しかもバージムもティターンズの仕業みたいな書き方ですね。

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パーフェクトガンダムはプラモ世界の話じゃないのか?と思われる人もいるかもしれないが、これはGジェネも「宇宙世紀内に実在するかは不明だが情報が存在する」という立場をとっている。だがこの「別の開発チーム」「コア・ブースター並」という設定はGジェネのものではない。
これはどうもフルアーマーガンダム旧キットの説明書で言及されてる別の計画の設定をパーフェクトガンダムのことだと強引に解釈してるみたいね、このライターは。。。
ひどくね?
その「一説」は誰が言ってるという設定で書いたの?

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ザンスパとF99レコードブレイカー(当時未参戦)をつなげる俺設定。いかにもありがちな解釈ですね。
ザンスパはこのGジェネシリーズが原作そのものなのに、そこに存在しない設定をこうして書き足す勇気、ちょっとびっくりしますね。
スーパーサイコ研究所製って設定もいかにもありそうだけどゲームにはない。あるとすりゃF当時の電撃ホビーの設定だけど、ないような気がする。
※手元に持ってないが、GジェネFのオリジナル機は電撃ホビーにゲーム以上に詳細な設定が載ったことが一度だけある。

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デスティニーインパルスもこのゲームに参戦してないんだから書かなくてもいい。その経緯省いてデスティニー自体の解説をするべきだ。
デスティニーガンダムの解説をしろと言われて、聞かれてもいないのに早口で「まずデスティニーインパルスって機体があって…」ってガノタが言いだす姿を想像してみなさい。

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シャイニングガンダムですらボンボンの外伝(模型のフォトストーリーらしい)に出てきたニンジャーとかいうやつ書いてあるし…
知らねえよそんなの…繰り返すけどそれ書く必要あんの?

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厳密な話をしますと、このバージムって機体の設定は空っぽで、「ジムとパーツを共有化した」みたいな設定はこの本くらいにしかないです。まあ大した設定じゃないので、「バージムについてお前が何か設定を考えろ」って言われたらこういう創作するしかないと思うけど、誰もそんなこと頼んでないし、ゲームに出てこないバージムについて書く必要がそもそもないですね。
バーザムはウィザードリィのモンスターじゃないので。この本は「ガンダムのすべて」ではないんだから。

もう全部ツッコむ気はないぞ。公式かどうか怪しい本の設定と、全くの創作の捏造設定を、公式と区別不能な形で混入しているのがこの攻略本だ。ただ混入してるだけじゃない、どうせならマイナーな設定を書いてやろうという歪んだ意思も感じられる。
けど僕もマイナー本の設定全部知ってるわけじゃないから、どこまでがマイナー本の設定かなんて想像はできても判断しきれないんです。
もちろんそれを全て特定する価値もないが。捏造入ってるのは確実だし、元ネタが特定できたところで別に意味はなあ…

Gジェネワールド。
さすがに3冊目になると前回と同じ記述が増えてきてツッコみにくくなってる。中身は大して変わってないという意味です。近藤漫画由来の記述が出てくるくらいもう何も感じない。
ザンスパとレコードブレイカーとつなげる勝手な解釈やニンジャーとかもそのままだ。

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宇宙世紀内視点でのザク50の評価は初めて見た(この本で初めて書かれた設定だろうという意味)

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はいついに来ましたよルナツー製バーザム。
僕が最も嫌いな俺考察を公式に書いた本が存在したんですよ。

ルナツー・バーザム
このありがちな俺設定、本当に嫌いなんですよ。もはやゲーム攻略本の話ではないが今ここで詳しく書きたいと思う。
まず前提をはっきりさせておくが、ルナツー製のバーザムという設定は過去のどのような資料にも存在しないものである。
元ネタはわかってて、これもメジャーな俺考察である。近藤和久の漫画版「機動戦士Zガンダム」の電撃コミックス版3巻の164ページ

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近藤バーザムの型番が間違ってRMS-115って書いてある。間違って?
そう本来バーザムはRMS-154だ。

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この3巻の別のページだとRMS-154になってるもんね。
近藤ゼータは当時のボンボンコミックスとバンダイ出版のものと電撃の3つのバージョンが存在するが、この164ページの型番RMS-115は電撃版にしかない。
3巻の巻末の解説はバンダイ版にもあって、そこから特に改訂されてない。

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だいたいボンボンコミックス版でも154だし(このページの表示は復刻版ではなくなってる)。
誤植だよ。電撃版で急に設定変えるわけないし、もし変えるなら巻末解説だって書き換えてるでしょうよ。

普通に考えたら誤植だが、この115が正しいと断定すると、ティターンズ製MSの型番の法則(説明割愛)により、この164ページのバーザムはルナツー製ということになる。
この考察はそこからさらに飛躍する。この近藤版バーザムはルナツー製の亜種で、バーザムに複数のデザインが存在するのはペズン製・ニューギニア製と生産拠点による亜種があるからではないかということである!

このように解釈することに問題が山ほどある。
うん、第一に誤植の可能性が圧倒的に高い設定を論じるのがどうかしてるというのがひとつだ。
どうかしてる。

ふたつめ。百万歩譲ってこれが誤植ではないとして、近藤和久の「機動戦士Zガンダム」はアニメと完全にパラレルな作品です。それをアニメといっしょくたに扱うっておかしいでしょう。ストーリーがパラレルでもメカはパラレルじゃないとみなしていいルールがそちらにはあるんですか?
それ以前にティターンズ製MSの型番の法則(説明割愛)は近藤漫画でも有効な設定なんですか?同じ漫画に出てくるチャイカのMS-110をアクシズ型番の法則と照らすとメチャクチャですけど。

近藤漫画もパラレルではなく、ここに書いてある設定に間違いなどないのだ!という俺ルールを持ち出した場合に、三つ目の問題が立ち上がる…近藤漫画のバーザムは全部このデザインなんだけど、近藤漫画の記述を全部肯定するなら

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ここに154の近藤バーザムもあるんですよ。
なんで近藤バーザムは115と154の2種類あるんですか?工廠ごとの亜種だったら154の近藤バーザムがあるのはおかしいと思わないんですか?
このRMS-154の記述に限っては無視していいルールがあるんですか?それとも別の俺ルールで2種類の型番があることにするんですか?

型番の法則に基づく問題自体もある。RMS-115は「ルナツーで5番目に開発された」の意であるが、10番目に開発されたRX-110ガブスレイのほうが時期的に先に登場している。
なんで近藤バーザムの型番はそんなに若いんですか?何か理由考えてます?

そしてこの本でもそうだが、「ルナツー工廠製」という俺解釈には「ペズン製」があるという解釈がセットになっている。
ところがペズンにいたセンチネルバーザムのほうは154しかないんですよ。法則に基づくならバーザム改はRMS-14Xじゃないの?
もちろんバーザム改にペズン製という設定はないわけですが。

メチャクチャである。
「誤植の可能性を捨て」「近藤設定はパラレルでないものとして」「ガブスレイより番号が若いことは気にせず」「154と書いてあるほうは都合が悪いので無視して」「しかもルナツーだと型番が変わるがペズンの場合は変わらない」という多数のバーザム専用ルールを持ち出すことで初めて「バーザムにはルナツー製とペズン製の亜種がある」という俺設定は通用する。全肯定するために一部否定さえもする気概が求められる。
この俺設定考えた人はそこまで考えてやってますか?それを考えて本に載せましたか?
あと、この本は近藤先生に許可取ってますか?
「先生の漫画の独自設定(そんな設定ないけど)を公式な本に使わせていただきます」ということを伝えましたか?
そこまでやって肯定したものが僕を不愉快にする以外にどういう価値を持つんですか?

いや、わざわざ近藤先生に許可取らなくてもいいんですよ。だってこの本は公式なんですから、過去に存在しない設定をパッと作る権利はあります。FF3基礎知識編と同じことをやってるだけです。
ここに書いてある「ルナツーのバーザム」が近藤漫画の設定だというのも、僕が勝手に連想しただけですしね。
ルナツーにバーザムはあったという設定を、経緯はともかくこの本は作り出したんです。公式なんですから自由です。公式扱いされてない近藤先生より偉いんです。
公式には、非公式設定を横取りする権利も、さんせつこんをトンファーにする自由もあるんです。

あるわけがない。
攻略本がなんと書こうと三節棍は三節棍だし、トンファートンファーだし、バーザムはバーザムだ。
この点においては、現実の武器と、既に設定の存在する架空のモビルスーツに違いがあるとは思えない。
原作にない設定をゲームの攻略本が無断で作り出すなんてことが許されると思うか?
同人誌や自分のサイトで創作するのはいいんですよ。それにしてもちょっと自由すぎるだろとは思うけど、俺ルールを幾つ持ち出す人がいても僕には関係ない話です。さんせつこんがトンファーになってる世界を創造する人がいてもいいんです。
筋を通していればね…

以前データガンダムの記事で書いた、全肯定系の人たちの動きについての不信感というのは、こういうことでした。
こんなメチャクチャな設定を商業誌でたくさんの人に…

でも攻略本ライターによる創作設定、類似事例が思い当たらないわけではない。探せば似たような本はどこかにあるかもしれない…
かの超大学者モリスとか…

「超大学者モリス」の話
97年のことである。ドラクエの話題を扱っていたある個人サイトに、ドラクエ6の公式ガイドブックなどに関わったと称する「超大学者モリス」という人物が現れる。
彼はそのサイトに攻略本に反映されなかった設定をもたらしていった。ドラクエ6を含むシリーズの時系列の話であるとか、攻略本のイラストがスケジュールの都合で間違っているとか、アイテム物語とモンスター物語の内容は矛盾が多いから信用しないようにお達しが来てたとか。
そういうことを、自分は公式のスタッフであり自分の発言は公式設定であるという上から目線を交えつつ拡散しようとしていたのである。

数ヶ月活動したのち、彼は謝罪する。
彼の発言の中に、「攻略本のイラストが間違ってるのは東映動画のアニメーターが資料を見なかったせいである」というのがあったのだが、その件などで中鶴勝祥氏より事実誤認であると指摘されたのだという。それは東映動画にちゃんと資料が渡っていなかったせいなのだとか。
どこまで本当なのか定かでないが、そのことで謝罪し、彼はインターネットから消えた。
なお彼が吹聴した設定についての謝罪は特になかった。

彼が攻略本に関わっていたのは本当だったと考える向きが多いようだ。実際、彼の持ち込んだ情報には裏設定だけでなく、単なる勘違いなどもあったが、一部は後から見ても正しいものが含まれていた。たとえばブースカミルドラースに関係があるという発言があるのだが、だいぶ後になって確かに関係があったことは確認されている。
最後の謝罪もなんというか偽物っぽい謝罪ではない。偽物ならこういうピンポイントな謝罪はしない気がする。
ただ、ブースカミルドラースの話は、これはミルドラースの没デザインがブースカになったという事実に基づくようなのだが、彼は設定上で関係があると言っていた。しかも自分は関係者だから正しいという論調でそのことを主張していた。
……これも俺考察か、そうでなくても没設定ではないだろうか。たとえそういう話があったとしても、表に出てないものをむやみに肯定するべきではなく、まして公式設定であるように振る舞うのは筋を違えているとしか言えない。
表に出てない設定は出さなかった理由がそれなりにあるものだし、時が来れば正式に世に出ることがあるかもしれないから迂闊に漏らすべきでないし、後で変更されることだってありうる。

そう、実際に超大学者モリスの発言には「裏設定と呼ぶべきもの」「極めて公式に近い事実」は含まれていたのかもしれない。だが、それはちゃんと手順を踏んで公式に出てきたものではない。彼が本物であるかどうかは問題でなく、全て信用に値しない。
筋を通していないのだ。

※彼の投稿があったサイトはまだ現存しており、超大学者モリスの発言も昨年は読めたのだが、最近になって該当ページが消えたようだ。消したのか消えたのか、事情は不明。

ファイナルファンタジーIIIの攻略本はおおらかな時代に書かれたものだ。メーカー側もチェックはしただろうが、そこまで丁寧じゃなかったと思うし、ライターだってトンファーを知らなかったか、「さんせつこん」に対応するイラストがなかったから知っててあえて適当にやったかわからないが、
この「ガンダム公式コンプリートガイド三部作」はわかってる人がわざとやってる例だ。非公式設定だと知っててやってる。
ガンダムウォーで見られたアレな設定は、まだ調べたらウィキペディア(捏造設定)の丸写しだということがわかったりして、書いてる人の捏造じゃなくて知識が足りなかったのよねで済む話だった。
これは違う。ルナツーバーザムはそうではない。これはありがちな考察だとは言ったが、wiki系には載ってないネタだったのだ。ある程度独自に考察をやっている人間か、さもなきゃそういう考察をした同人誌(それなりにマニアでないとそういう本は持ってない)やウェブサイトあたりを元ネタに、それをパクって商業に持ち込んでやろうぜと意識的にやっているはずである。
公式の名を持つ本に非公式とされている設定を持ち込んでやりたい。そういうくだらない欲求だ。意図的かどうか微妙なトンファーと違って、わかっててやってることは確実である。
だけど結果やってることは20年前のトンファー以下だ。超大学者モリスの例と比べても商業で堂々とやってるぶんタチが悪い。
最悪だ。

いや勘違いしてはならない。別にこれら公式ガイドがサンライズの課したルールに違反しているわけではないのだ。
だってこういう本が堂々と3冊も出版されたってことは、機動戦士ガンダム」ってアニメは設定の使い方に対して何のルールも課していないってことでしょう?
攻略本のライターが勝手に設定作ってOK。富野小説も近藤漫画もゲームブックも正史扱いにしちゃってOK。もちろん「本書の独自解釈も含まれます」って書く義務もありません!

これ

さんせつこん

さんせつこんと同レベルで、ルナツー製バーザムは存在しているのである。
もちろんこの「公式ガイドブック」はアニメの資料集ではないけれど、公式って書いてあるし攻略本の独自設定であるとは一言も書いてないので、もはやサンライズ公式見解であると言っても過言ではない。
公式ガイドの「公式」とガンダムの公式設定は違う問題だろ?とおっしゃる方もいるかもしれませんが、何も変わりません。この本は公式という名前をつけることにゲーム会社がお墨付きを与えているのは間違いないですし、ゲームとはいえガンダムの名のつく本を出すことにアニメの版元がノーチェックなはずはありませんし。
特にGジェネワールドの場合は公式な画稿も載ってますし。

k-w.jpg

上のほうで書いた通り、ゲームオリジナルメカの設定画が攻略本で初めて載る例のひとつがこのGジェネワールドだ。「浦木 巧」さんがこれまでにデザインしてきたフェニックスガンダム系機体の公式な設定画をこの本は載せている。特にフェニックスゼロの設定画はこの本にしか載ってないんじゃないかと思う。
もしこの本が公式じゃなかったら、ハルファスガンダムやフェニックスゼロの設定画も巻き添えで公式じゃないとみなすのが「筋を通す」ということかもしれません。
そして過去の数多の「公式」の攻略本が実は何も信用ならないものだったと、ゲームの歴史そのものにケンカ売ることにもなりますね。FF3の攻略本もドラクエ6の攻略本も全部公式設定じゃなかったと。
この本がやってるのはそういうことです。「公式」ってことは、本来であればゲームメーカーや版元から責任を移譲されているのと同義だと取るのが自然です。それにふさわしい内容であろうと、少なくとも努力しなければならないし、メーカーもその中身にまで責任を負って公式の名を与えなきゃならない。与えてきたはずである。

……もちろん、こういうのは意地悪な言い方で、実際は版元も攻略本だからと油断して設定のチェックを怠ったんだろうなあということは想像に難くないんですけどね。
それはそれで版元の責任が問われるんだけどさ、チェックする担当にも「非公式同然のゲームブックの設定や捏造設定を持ち込むクソライターがいるかもしれないから把握しとけ」って言うのも無茶な話じゃんよ。どんだけブラックな仕事だよ。30年前のゲームブックなんて知るわけねえよ。
当然、書いた人間も版元のチェックが甘い、もしくは書いても気づかれないことを見越してこういう本を書いたんでしょうね。そこにあるのは悪意。
いや善意かもしれない。
ガンダム業界には非公式設定を埋もれさせてはならん、過去の設定を後付けでもみ消す公式は謝罪しろ!みたいな使命感を持って活動しておられる人もいるように感じています。彼らは公式を欺いてでもそういうものを公式な文献に残したいと思うことでしょう。
くだらない。
こういう破廉恥なことをガンダム以外のアニメやゲームでやったら炎上案件です。

不幸中の幸いとして、しょせんガンダムゲーの攻略本なので、こういう下品なことをやってることもあんまり広まらずに済みました。記述もマニアックに走りすぎたおかげで、版元だけじゃなく真面目に読むガノタも大していなかったでしょう。だからこそ話題が拡散せずに3冊も出たとも言えますが。
テイルズの攻略本でこの規模の設定捏造とかしてたら…すごかったかもなあ。
ファミ通さんの攻略本なんて一部の本でやらかしたくらいでも「大丈夫?」って以後の全部の攻略本に言われてるんですよ。悪いのはファミ通でもごく一部、黒本を編纂したJK-VOICEとか一部なのに(あまり研究されてないがこのJK-VOICEはタクティクスオウガの「公式」ガイドブックでもかなりやらかしてる)。
大丈夫?バンナムの攻略本だよ?QBISTの設定資料だよ?アニメの設定を捏造して公式本に書いた実績のある会社の本だよ?
本当なら、こういうことを向こう20年は言われるべきでしょうね、真面目な話ですよ。
僕もバンナムとQBISTのテイルズの攻略本を少し持ってた身であり、そこに不審点を感じたことはなかった。だからこんなこと言いたくないし、ガンダム以外でそんなことやってないと信じたいのであるが。
ガンダムではそういうことをやってたんです。人知れずこっそりと。

このシリーズの次の作品、Gジェネオーバーワールドの公式コンプリートガイドでは、この「設定では」コーナーは跡形もなく消えていた。
なくなった理由はいろいろ考えられるが、公式にバレてケジメされたとみるのが妥当だろう。無法はいつまでも許されなかった。
QBISTもこれ以降にこういうやらかしはしてないと信じたい。
だがこれが最後の公式ガイドとは思えない。いずれ第4第5の「公式ガイド」が現れて、ひそかに俺考察を広めていくことがあるかもしれない。あるいは今この時も他の媒体で行われているかもしれない…

こういうことやるやつがいるから公式側の締め付けが厳しくなるんですよ。設定というのもコンテンツであって商売の道具なんだから、筋を通して変更したり付け足したりするのはいいとして、ありもしない設定を既成事実のように広められたら迷惑だからね。
ゲームメーカーだって昔より厳しい監修しなきゃならないし、それが重たくなってメーカー側も攻略本なんか出させたくなくなるでしょうよ。
そんなのガンダムに限った話じゃないね。
「ふんどし」を許したドラクエ4コマですら越えちゃいけないラインってのはあったんだ。ギャグマンガですらあるんだよ。
この「公式ガイド」を書いた人は、そのくらいの想像力も働かない人だったのだろう。

いやガンダムの公式設定なんてものは大概やらかしてるし今更どうでもいい。この本に書いたような設定を公式化するバカが現れてもそういうことがある作品だから、そんなもんはもう何でもいいんだよ。
そうじゃなく、この「公式ガイド」は、ゲームメーカーを、過去のゲームの公式ガイドを貶めるものだ。
それを彼らが自覚したかどうかは僕は知らないが、Gジェネワールドから8年経ったここで書いておく意味はあると思った。
そういう気づきが去年あったことをここに書き記します。

最後に白状しておくけどこの記事を書いてる僕はアクシズVとGジェネウォーズは攻略本しか持ってなくて、ゲーム持ってるのはGジェネワールドだけだがこの際勘弁していただきたい。
たぶん書いてるライター自身がゲームとかどうでもいいと思ってるしな!
持ってないゲームの攻略本読むこと自体は実際好きなんですよね。