神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

ガンダムNTのオカルト描写は正しい、が、

ガンダムNTのオカルト描写について、まとまりのない走り書き

宇宙世紀はオカルト時空である

今回「ガンダムNT」脚本となっている福井先生もインタビューでこの件について踏み込んでいるが、これについて言ってることはおおむね合っているようには見える。
このインタビューとか
オカルト以外のところで幾つか引っかかる点はあるが、ニュータイプが霊界と接続してるという指摘は正しい。

Zガンダムから逆襲のシャアにかけてはサイコミュの時代であり、サイコ・マシーンの時代である。あいつらはよくわかんないパワーで幽霊を召喚したり巨大なビームサーベルを出したりする。
このことは割と公式サイドでも忘れてる人が多かった印象である。90年代以降の機動戦士ガンダムはだんだんそういうもんから遠ざかっていたから。
(前から書いてきてるが、僕は一部設定サイドの人間がZZちゃんと覚えてない疑惑を抱いている)

サイコフレーム信仰

ガンダムUC』のオカルト描写でおかしいと思っていたのが福井先生が何かサイコ・フレームの存在を過大に評価していたことだ。
確かにサイコフレーム×アムロの組み合わせはベストマッチでアクシズを迎撃してシャアの野望を粉砕したが…
その前からカミーユジュドーも光ってたじゃない。
ヤクトドーガだってサイコフレームだが、ギュネイではファンネル飛ばす以上の現象など起こせなかった。
光ったり幽霊になるのはニュータイプであって、サイコフレームもすごいが、根本的な原因は人間のほうにあるはずだ。
サイコ・フレームは、ニュータイプの能力をアップする強化パーツとしては宇宙世紀90年代最強だと考えられるが、それより前のバイオセンサーだかと革命的に違う要素もなく、もちろんこれが完成形という保証もない。サイコフレームはただの機械であり、これ自体はネオジオンから技術が流された時点ですぐに再現できたのだ。その気になれば製造が難しいものでもなかった、逆襲のシャアの時点では。

そろそろ「ガンダムNT」のネタバレを少しだけ書いていくと、今回作品内でもZガンダムからの怪現象を振り返っており、「サイコフレームだけが特別」という見方からはむしろ後退したのかと思った。つまり福井先生はオカルト描写を無駄に押し進めているようで、その実は適度な距離感をつかんできて、適切なファンタジー描写に戻してきてるのかもしれないと。
だから封印されたという建前だったはずのサイコフレームのアレもまだ存在しているのだろう。もしアレの目的がすべてのサイコ・マシーンを破壊することだとすれば、破壊対象はサイコフレームだけでは終わらない。サイコマシーンでありながらそれを手伝う立場にあるユニコーンガンダムはまだ解体するときではないのだ。
ユニコーンを誰にもバレずに再建造するのは難しいかもしれないが…本当かな…、オカルト時代を終わらせるには貴重な味方側ユニコーンを封印しても根本的な解決にはならない。もうちょっと頑張ってくれたほうがララァも喜ぶ。

・何でもミノフスのせいにした話

過去のオカルト描写についてはUCより前から解釈が存在する。νガンダムはどうやってアクシズを押し返せたのか、過去の設定者はどのように解釈したのか。

>周辺に大量に散布されていたミノフスキー粒子の立体格子状構造が、サイコ・フレームから発振するアムロとシャアの感応波によって振動、導電性物質であるアクシズの破片に対して反発力として働いたためともいわれている。これは、ミノフスキー力場共鳴仮説と呼ばれ、偶発的にミノフスキー・クラフトに似た現象が大規模に起こったものと推測される。(総解説ガンダムver1.5 116ページ)

これが、当ブログでもバーザム関連などで言及したことのある旭屋フィルムブック出典の設定らしい(初出本自体は未確認)。
うん、既存の設定を組み合わせればそういう説明はできそうだね。

……こんな既存の設定を拡大解釈したつまらん説明を、逆襲のシャアの公開から8年も経った時代に作り出して何かいいことあるのか?
だいたいミノフスキークラフトってそんな強い力じゃないだろ、アクシズミノフスキークラフトで浮かせることができるとマジで言ってるのか?
偶然でそんな怪現象が起きるなら、それはもうオカルト兵器よりずっと危険なんじゃないのか
カミーユジュドーはどう説明するんだ?
こんな説明がSFか。リアリティか。
これなら、サイコフレームっちゅうもんであの世から元気をもらったアムロが萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)的な技でアクシズをシャアもろとも押し飛ばした!と堂々と説明されたほうがまだ整合性が取れていると言い切ろう。

念のため言うが、このひどい解釈「ミノフスキー力場共鳴仮説」はごく一部の資料にしか書いてない設定であるが、だがこれを再記述した皆川ゆかの著書はかなりの信頼度がある資料として扱われている…
ネット上でさも正しい設定であるように書かれるのも無理はない…
そしてひどい解釈だと僕は言うが、これを整合性の取れた正しい説として評価する人間もいるのである…

ミノフスキー粒子とリアル

宇宙世紀の技術はミノフスキー粒子に支えられている。電波妨害だけではなく、核融合炉もビーム兵器もミノフスキークラフトもすべてミノフスキー粒子の産物だ。
もちろんミノフスキー粒子は架空の素粒子である。機動戦士ガンダムニュータイプの有無と関係なく、根っこが完全なファンタジー世界なんである。
もっとも電波妨害以外の効果は全て後付けだが…

さっきのミノフスキー力場共鳴仮説の部分と関わるが、実はサイコミュにもミノフスキー粒子が使われている。ニュータイプが発する「感応波」とは、ミノフスキー粒子を振動させることで伝播するものであり、この振動によって通信を行うのがミノフスキー通信であり、サイコミュである。
だからサイコミュミノフスキー粒子の下でも遠隔通信ができるのである。
という設定が書いてある本もあるのだが、これは注意を要する。この設定の通りだとすると、逆にミノフスキー粒子が存在しないとサイコミュが機能しないとも解釈できるからだ。
この設定はかの「ガンダムセンチュリー」をはじめ複数の文献に書いてあるのだが、僕はこれが制作サイドに共有されているか割と怪しんでるので(わざわざミノフスキー粒子散布してからファンネル使いだす敵とかいないし)、あまり重視しないことにしている。
それはともかく、この設定でも「感応波」なるものはESP的なものだろうと思われる。超能力である。

サイコミュの衰退

逆襲のシャア』の映像中で実際ニュータイプをどう扱ってるかというと、この時代は超能力(サイコミュ操作)を使うパイロットがいること自体は既に驚かれておらず、強化人間も過去のものとは性質が異なり、サイコフレームもその実力を発揮するための装置のひとつである。ラストの巨大な怪現象とは別に、超能力を既に普通のものとして受け入れ、その制御をしていく時代も描写されていた。
超能力という異常な要素を科学的に制御する発想こそSF的ではなかろうか。

福井先生の言うようなサイコミュが廃れた理由を設定上考える必要があるかはわからない。では設定ではなく映像上でなぜサイコミュが衰退したのかといえば、それは演出家がファンネルに飽きたって話もあるんだが、作品の制作年代も大きい理由だと考えられる。単純に言うと80年代は今よりはオカルトがブームだった。
光戦隊マスクマンが87年だと。矢追純一のUFO特番が作られたのは92年までかあ
どのへんの時期までがブームなのか正しい感覚がないのでよくわからない(正しく調べる気もない)が、今よりは流行っていたことは確かである。時代の流れで、人間がニュータイプに進化するという感覚が古くなってしまったのは確かであろう。
Vガンダムにはまだ超能力者が登場するが、それらは「サイキッカー」というありきたりな表現に後退していた。

21世紀の今となると超能力のほとんどは陳腐化したが、逆に脳波コントロールくらいはできるほうがリアルになってきている。僕の実感としても10年もしないうちにサイコミュ的なもの…つまり脳波に限らないが人間の意識・感情を読み取るような機械は実用レベルで出現してくると思える。それはニュータイプというわけじゃないが、モビルスーツくらいの兵器ならそのくらいの機能は持っているほうがリアルじゃなかろうか。
あれらはパイロットの腕ではなく感性で動いてるのかもしれない。
※AOZ2に登場する「シャーマン・フレーム」と呼ばれる装置は、感応波だけでなくパイロットの肉体を科学的にモニタリングして機体制御を補助する。これは何も超未来のものでなく、旧世紀から存在する技術の延長である旨がはっきり書かれている。

逆襲のシャアの少し後の話

話題を90年代前半に戻していきなりゲッターロボ號」(漫画版)の話をするが、これに出てくる真ゲッターロボってやつがだいたいフェネクスというか、異常な直線軌道で動くフェネクス真ゲッターそのものがモチーフなんじゃないのか?
なんかパイロットと同化してるし。ストナーサンシャインみたいなの出すし。大いなる意思の戦いだし。
福井先生はゲッターロボ號を読んだことがあるのだろうか。ないと思う。漫画「ゲッターロボ號」はリアルロボット的なものもオカルト的なものも衰退しつつあった時期に両方の要素を持ったロボット作品で、連合軍に運用される各国のスーパーロボットが超かっこいい。むちゃくちゃなディテールなのにリアル。これこそが90年代の「スーパーロボット」だ。
その最後に出てくる「真ゲッターロボ」が時代性を反映した機体だとしたら、…逆シャアの数年後のフェネクス真ゲッターみたいになるのは年代的に正確な計算だな…
いやそれでいいのか…?いいのかも…
サイコミュがあの世に接続した結果ゲッター線と化していく収斂進化を、20年以上経った今やっているというふうに取ることにしよう。
だがそれはいくらなんでも遅すぎるようにも見える…石川賢が90年代にとっくにたどり着いてた境地に、ゲッターロボより4年後輩のガンダムはようやく追いついたのかと。周回遅れだ。

逆襲のシャアは89年の時点ではリアルだったかもしれないのが、今見るとそれがただのオカルトにも見えてしまうのかも。いや89年でもオカルトだったのだろうか。
子供の頃ビデオで見た逆襲のシャアは、戦闘シーン以外早送りで見てたのでよく覚えてない。
UCとNTが逆シャアの延長であることは確かだが、それはリアルでの89年から数年後の延長であり、現実の2018年とは大きなズレがある。その時代遅れな感じが、アクシズをミノクラで浮かせようとするしょうもない時代への反発として成功した…書いててよくわかんなくなってきた。

スーパー系かリアル系か

まあさっきもスーパーロボットって書いたけど、この線引きがよろしくないところは沢山あることはご存じであろうと思うが、ちょっとばかりファンタジー要素に振ったところでいきなりスーパー系に変わったという言い方をする人も嫌いである。
そんな一要素だけを見た雑な分類こそ過去のロボットアニメを貶めるものである。ガンダムは最初っからサイコミュが乱用されてるのに誰かがリアル系に分類した過去があったように、真ゲッターロボのようなスーパーロボット(としか言いようのない超存在)が出てこようとゲッターロボ號の現実目線で重苦しい作風が変わるものではない。

・虚無の向こうへ

ゲッター線はその危険性ゆえに一度は封印されることになったが、けっきょく戦いは続き封印も解かれるという流れがガンダムNTと恐ろしいほど符合している。
初期の真ゲッター程度でおさまっている今のところは、まだガンダムガンダムでいられると思うが、次は漫画「真ゲッターロボ」のようにエネルギーの研究に閉じこもる方向が考えられ、そうかサイコミュとは…宇宙とは…
この果てにあるのは虚無エンドしかないぞ。

ガンダムUC・NTのオカルト描写は間違ってはいないが、この方向に見える危ない予感も確かなものである。
それが杞憂であるのか、それとももっと危ない方向へ行ったほうが楽しいのか。

ガンダムNTの感想

ep7を見たときの僕はオードリー・バーンがバナージくんと一緒に未来へ踏み出すような続きを見たいと思ったものであるが、実際出てきたのは引きこもってサイコマシーン退治を仕事にしてるつまらないミネバ・ザビの姿であった。
サイコミュ描写の不自然さをいちいち糾弾したりするほどではないんだけど、納得しきったかというとそうでもなかった。