神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

「3DダンジョンRPG」というジャンル名について

昨年くらいから考えていたが「3DダンジョンRPG」というジャンル名がしっくりこない。というより、この分類を使うメディアやネット記事に違和感を感じることが度々あった。

・3DダンジョンRPGとは何か

「3Dダンジョン」が舞台の「RPG」であれば、それは3DダンジョンRPGである。
他の条件はない。

違和感のひとつを言えば、このジャンルについて解説している側の人が「ウィザードリィみたいなゲーム」をイメージしていることが多すぎる。3DダンジョンでRPGである以上の条件はないのに、それに3Dダンジョンではなく「ウィザードリィ」固有の条件を含めて語りたがる人があまりに多い。
ひどい例になると、昨年の主だった3DダンジョンRPGを全部!「WIZライク」と乱暴に分類したものまであった。
確かにある時期、ウィザードリィ以外のダンジョンRPGをほとんど見かけなかったこともあるのだが、この10年は新しいシリーズがいくつも立ち上がり、ウィザードリィ型からの脱却はとっくに終えている。なおも「ウィザードリィっぽいこと」が3DダンジョンRPGの条件であるかのように書くのは実情に反しているし、何者かにそのような定義がされたこともない。
ウィザードリィの影響が強く残っているゲーム自体は多い。だがウィザードリィを忠実に受け継いだもの、典型的にウィザードリィライクと呼べるものは限られるはずだ。それは3Dダンジョン全体の中の一部にすぎず、3DダンジョンRPGの定義は「ウィザードリィらしいこと」ではない。
3Dダンジョンの条件にキャラメイクもアイテム収集もレベル上げも何もいらないし、難易度もどれだけ簡単でもいい。舞台が現代だろうとアニメパートが1時間あろうと戦闘がレースゲームであろうと迷宮内でエロゲーが始まろうと、3DダンジョンのRPGであれば3DダンジョンRPGだ。

以前2作目について書いた「ピクダン」は非ウィザードリィ型の3DダンジョンRPGだ。3Dダンジョンだが戦闘はタッチペンのアクション。キャラメイク要素なし。アイテムは固定宝箱。拠点の町もない。謎解きは複雑で独特なもの。
全滅時の画面で墓石が並ぶところにモロなウィザードリィのオマージュがあるが、それだけである。3Dダンジョンを探索する楽しさだけを受け継ぎながらも、それ以外はウィザードリィから遠く離れたRPGの姿がここにあった。
その「探索する楽しさ」こそが紛れもなくウィザードリィの血筋にあるが、全体的に見ると、これはどう見たってウィザードリィではない。

本作の発売元インテンスは、さらにRPGですらない3Dダンジョン作品をリリースしている。
「謎解きメイズからの脱出」はジャンル「謎解きゲーム」とされており、正しいRPGとして作られていない。
「ピックダン」に至っては3Dダンジョンでドットイートアクション(パックマンみたいなやつ)という奇妙な作品で、これらのようにRPGでないものは「3DダンジョンRPG」ではない。当然だった。

戦闘シーンみたいなのもある「謎解きメイズからの脱出」が本当にRPGと言えないのかは難しい問題なのだが、RPGとは何かはここでは深く考えないことにする。
3Dダンジョンのほうを気にする。移動がアクションのピックダンでも3Dダンジョンだと思われてるくらいで、この名前には何らかの共有の認識があるように見えるのだが、しかしそれを文章化した明確な定義を過去に見た記憶もない。
何があれば3Dダンジョンなのか。3DダンジョンRPGの本当の定義とは何なのだろう?

・3Dダンジョンと呼ばれるもの、呼ばれないもの

3Dダンジョンというとだいたいこんな画面が思い浮かぶわけだが、

ウィザードリィである。別にこの画面構成はウィザードリィが始祖ではなく、70年代にはもうあったようであるが、その歴史事情はネットで調べてもどこまで正確な知識かよくわからんので迂闊なことは言わない。

迂闊ではない範囲のネット情報を言うと、この画面構成のゲームで82年イギリスに「3D Monster Maze」ってゲームがあるらしい。かなり早い時期に、この一点透視のグラフィックに3Dって表現がされていたことがわかる。もっと後の年代だとウルフェンシュタイン3Dとか、windows95スクリーンセーバー「3D Maze」などがある。
日本語の3Dダンジョンなる表現がいつから存在するのか不明だが、英語でも82年から95年くらいまでは3Dという呼称が確実にあったようなので、3Dダンジョンってのも英語表現に由来するものなのかもしれない。

だけど実際のところ、この画面構成に「高さ」の概念がない。3Dではない。
ウィザードリィの場合、立体的な絵を二次元の画面上に表示してはいるが、壁の高さについての情報はなく、横と奥行きの二次元しかない。いやデータとして高さについての情報を持っていなくても、視界に見た目だけ高さがあればそれは3Dだと言ってもいいのかもしれないが。
視覚上で三次元であることが重要だとすれば、FF2やドラクエ3だって壁の高さくらい表現できている。なぜあれらを3Dと呼ばぬ?
いやFF2はまだ平面的画面だ。だけどFF12以降は完全に3D空間を歩き回るゲームだが、3Dダンジョンと呼ばれることはない。なぜだろう?
主人公が画面に映っているから?移動がグリッド単位じゃないから?

とにかく「こういう画面のもの」が「3Dダンジョン」であるとしか言いようがない。
このテンプレから外れたものは3Dダンジョンではない。
おそらく、80年代の時点では「3D」で「ダンジョン」であるから3Dダンジョンと呼ばれたのだろうが、ゲームが当たり前に3D表現されるようになった90年代後半以降、「3Dのゲーム」で「ダンジョンが舞台」であるものは3Dダンジョンとは呼ばれない。
現在の「3Dダンジョン」は、「80年代に3Dダンジョンと呼ばれたもの」と一切変化しておらず、慣用句のようなものになっていると考えられる。
描画はポリゴンであってもいいが、ポリゴンを使わずとも表現できるものが3Dダンジョン。その条件には当然のようにグリッド型(マス目タイプ)である必要がある。
あるいはポリゴンでマップのデザインがグリッド型・プレイヤーの移動は非グリッドのウルフェンシュタイン3D型でも、たまに3Dダンジョンと呼ぶ人はいるようだが、マップがグリッドでなくなったDOOMだと3Dダンジョンとは呼ばれなくなる。世代が新しくなると3Dダンジョンとは呼ばれなくなっていくわけである。

・高さ表現が苦手

壁の高さの概念がない「3Dダンジョン」は二次元の方眼紙でマッピングできるわけで、

こんな画面でも表現しているものは同じということになる。こんなんやりたくないけどさ。

昨年発売の『世界樹の迷宮X』では、段差を用いたマップが登場した。
本作の段差は「高い・低い」の二段だけで、立体交差はなく、あくまでも二次元的な情報で処理されている。ただし段差を乗り越えるfoe、足場になる仕掛けなどがあり、二次元マップで立体をちゃんと表現できていた。
せいぜいSFC時代のドラクエやFF程度の3次元表現であるが、世界樹が高性能なハードで高度なポリゴンを使っているから表現できる仕掛けだ。線画ベースの昔の3Dダンジョンで段差表現するのは難しい。高低差のあるグリッド型3Dダンジョンは他にもたまにあるようだが、非ポリゴンではおそらく「だんだんダンジョン」(後述)を除いて皆無だろう。
上のフロアはまだ何とかなるが、下のフロアを見下ろす図というのが線画ベースの3D表現では難しい。せめてポリゴンを使いたい。

複数フロアの連動で立体的な建物を表現するものは、それほど珍しくない。ウィザードリィ4の地上マップでも、これによる段差表現をしていた。
ただこれがどんなものか図示すると、

wiz4p.png

ウィザードリィ4はだいたいこんな感じで下のフロアの表現をすっぱり諦めているというか…

wiz4.png

空と床の境界が見えないのだが?
このまま前進して空に踏み出すと、もちろんワードナは落ちて大ダメージを受ける。いくらハード性能が低くても床の色を塗るとか線を足すとか、何とかできたと思う。しなかったのだ。このWizardryの白黒線画の3Dダンジョンは段差を表現できないことを承知のうえで、わざとやりやがったとしか思えない。ゲームの表現力の穴そのものを仕掛けに使っているのである。Wiz4特有の悪質な仕掛けと言うか、ギャグと悪意と知恵比べがないまぜになった何者か。
こんなん攻略できるんかというと、上のフロアと下のフロアは同じ形をしていることから、床の境界線の推測自体は可能。そうでなくても全マス歩くしかなかったB8の地雷原よりはマシであり、仕掛けとしては大して厄介ではない。ただ悪意を感じるだけで。
もっともPS版ではさすがに青空が描画されていた(線画モードにすればちゃんと真っ暗になる)

なおWIZ6でもこのような「踏み出すと落下する(死ぬ)地形」は登場したが、床と空の境界もちゃんと描画されていたことを記しておく。

・「ダンジョンRPG」と「3DダンジョンRPG

ところで「ダンジョンRPG」という言葉は、「3DダンジョンのRPG」の意で使われてることが多い。
でも現在メーカー側やゲーム雑誌での分類は「3DダンジョンRPG」と、3Dを省略せずに称しているタイトルが多い。メーカー側からすると「(3Dでない)ダンジョンRPG」が他にあるためだ。
代表例は「ポケモン不思議のダンジョン」。任天堂が言ってるのだから間違いない。ダンジョンRPGとは不思議のダンジョンのこと。最近も「不思議の幻想郷」や「チョコボの不思議なダンジョン」が移植されてきている。

僕の知る限りでは、もともと3Dダンジョンのものが「ダンジョンRPG」と呼ばれていた。不思議のダンジョン系のものがダンジョンRPGとして定着したのは後の時代だ。
そうだと思う。この順序を少し調べてみたが、結局つかみきれていない。
「3Dダンジョン」という言葉の発祥はもっと古いようなのだが、これをジャンル区分として「ダンジョンRPG」と呼ばれるようになった時期は少し後ではないかと見ている。

昔あったファミリーコンピューターマガジン(ファミマガ)というゲーム雑誌の91年ごろの付録 「ファミコンロムカセットオールカタログ ’91」という本が手元にあるんだけど、この本ではウィザードリィ女神転生バーズテイルなどを単に「RPG」と分類していた。
区分「ダンジョンRPG」の発祥は定かでないが、このファミマガの付録は91年ごろには「ダンジョンRPG」というジャンル名が一般的ではなかった、あるいはまだ存在しなかった可能性を示している。
本書ではこれらは「3Dダンジョン」を採用した「ただのRPG」だった。しかし「3Dダンジョン」という言葉はこの本でもう確認できる。ポートピア連続殺人事件などに見られるこれを「3Dダンジョン」と人は呼んだのだ。

ファミコン時代以降では3Dダンジョンのゲーム自体少なく、その中で「ダンジョンRPG」を最初に名乗ったのがどれなのかはわからない。ファミコンより古くからやっぱりあった呼び方なのかもしれないが、自分の知る限りで明確に「ダンジョンRPG」という区分を使った一番古い作品は「ダンジョンRPGツクールだんだんダンジョン」というタイトルだった。
これの話を少しする。僕はこれを持っていたわけではないのだが、諸事情で内容はかなり覚えている。本作の情報はネット上にほとんど残っていないため、記憶による記述も無意味ではないと考えるものである。

・『ダンジョンRPGツクールだんだんダンジョン』

94年発売のPC98用ソフト。LOGiN DISK & BOOKシリーズという、書籍にフロッピーディスクを付属した形式のムック本で、現在まで続くRPGツクールの初期作品と同じシリーズに属していた。
表紙には「リアルな3Dダンジョン型RPGが簡単に作れる!」とある。だから本作は「3Dダンジョン」という言葉があることをわかった上で「3D」を省略した「ダンジョンRPG」と称している。
このジャンル名がこれより過去に存在していたのか、それとも本書が作り出したジャンル名なのかは、僕の知識ではわからない。

表紙ではわからないのだが「だんだんダンジョン」で作れるのはウィザードリィ型のダンジョンRPGではなく、「ダンジョンマスター」型のリアルタイムRPGだ。だがダンジョンマスターのルールを忠実に受け継いでいるわけでもない。というか、かなり要素が足されている。
「だんだんダンジョン」のタイトルが意味するところは段差である。本作は迷宮内の石のブロックを1フロアに5段まで積める。これによりハシゴで昇り降りする地形を作ったり、低地に水場を作ったり、上の段からの落とし穴を作ったりできる。既に書いた通り、多くの3Dダンジョンではフロア内で段差が無いほうが一般的だが、本作はそれを非ポリゴンでやっているのだ。水とか炎とか環境ごとにダメージを設定したり、モンスターごとに移動可能な地形を設定したりと考えることも多い。

厄介なのはアイテムの扱いだ。元がダンジョンマスターなので重さがあるのはいいが、さらに本作独自の要素としてすべてのアイテムに「エントロピー」「温度」「かたさ」などが設定されている。
否、設定されているのではなく、作る人が設定しなければならない。
エントロピーって何だ。これは魔法によって変化する数値で、「腐った食品のエントロピーを魔法で下げて食べられるようにする」という設定ができるようになっている。温度を上げると焼けて料理になったりする。りんごの硬さを下げるとジュースになる。
また面倒なことに冒険者には「歯の強さ」というパラメータがあり、歯の弱い冒険者はリンゴも食えないが、歯の強い冒険者は石でも食える。
重要アイテムを食ってしまったらハマるので、食えない設定にしておくこともできるが、デフォルトの石は食える設定である。ムックにも獅子顔の騎士が岩を食うイラストがちゃんと載っていた。
…一時期こんな感じのリアル指向が行き過ぎてたゲームがあった気がする。だがこんな複雑なゲームをユーザーが作りきれるのか?
それでいて食料の概念に元ネタと致命的な齟齬があり、本作の食品は回復アイテムとして処理されているだけで、空腹・満腹の概念自体はない。アイテムに設定できる「栄養価」とはただのHP回復量である。加熱、エントロピー、硬さなど複数パターンの料理法をサンプルで用意してるけど違いは回復アイテムの品質のみ。
本作でダンジョンマスターはできない
もちろん加熱でキーアイテムを作れるようにしたり、柔らかくすると性能が変わる武器とか作ってもいいんだけど…
どこまで自由に作ればいいんでしょうか。ツクールでそこまで作れる必要あるのか?
まず普通のダンマスを作れるようにするべきではないか?

段差、料理、地形効果など諸要素を見るに、本作は92年に発売された「ウルティマアンダーワールド」の影響も感じられるのだが、そちらは既に256色で非グリッド型で、ポリゴンによる立体迷宮を採用していた。※16色版もあるらしい。
本作のムックでも、ダンジョンRPGの例としてウルティマアンダーワールドが紹介されていた。16色、非ポリゴン・完全グリッド型の環境で段差表現をした「だんだんダンジョン」は、ハード性能で劣る環境でもウルティマアンダーワールドっぽいものをやれるようにしたんだろうか。
いやポリゴンだから偉いわけではないぞ。グリッド型、ダンマス型にも魅力があることは近年のヒット作の存在からも裏付けられるのだが、「だんだんダンジョン」は立体以外の部分でも全体的に無茶をしている。
あと本作は戦闘用のパラメータがやけに単純で、ゲームバランスが取りにくかったことをおぼろげに記憶している。ムックに書かれているダメージ計算によると「攻撃力-防御力=ダメージ」という非常に簡素なものを使っており、それだけならいいが本作は冒険者本人の攻撃力がレベルアップで100とか200とか気軽に上昇する。成長もダンマス方式なのでどんどんレベルを上げられる。
作り手側として武器の性能を控え目にするのは簡単だが、冒険者の成長曲線はソフト側に決められたものから選ぶ方式なので抑制が効かない。そうするとインフレに対応したゲームにするべきなのか冒険者全員を才能なしに設定してぜんぜん上がらないようにするべきか敵も冒険者と等速でインフレしていくようにするか…
さまざまな無理をした影響で、基本的なことができなくなってるように見えたのが僕の記憶の中の話であった。
本作には付属のサンプルゲーム「サイキュリー」と、雑誌で発表された続編「サイキュリーII」というのがあったらしいが、読者投稿作品が話題になったところは見たことがない。存在しないのかもしれない。
※なお、本記事を書く前に某図書館に存在した本作のムックを読むことに成功しており、記憶頼りではあるがかなり正確な記述になっていると思う。

だんだんダンジョンがどういうもんだったかはさておき、これが「ダンジョンRPG」というジャンル名だったのは間違いない。僕は3Dダンジョンのものを「ダンジョンRPG」と呼ぶのだという認識を持った。

不思議のダンジョンRPG

THE ダンジョンRPGというタイトルがある。
SIMPLE1500シリーズでRPGを冠した最初の作品で、発売日は2000年4月27日。
いわゆるローグライク、または不思議のダンジョンだが、これをダンジョンRPGと称した。このジャンルが何時から「ダンジョンRPG」と呼ばれていたのかは不明だが、僕が最初に見たのがこれだったのは間違いない。本作に関しては「THE 不思議のダンジョン」と名乗るつもりはなかっただろうし、ローグライクってジャンル名もローグって固有タイトルが入っちゃってるし、一般性がないものだった。SIMPLEシリーズとして「ダンジョンRPG」というジャンル名を選ぶのは自然な流れだ。
この年代には3DダンジョンのRPGすごい減ってたしな…
※かつてチュンソフトは「サウンドノベル」や「不思議のダンジョン」を他社が作ることについてゆるい立場を表明しており、頼んだら名乗れた気がする。
※個人的に「ローグライク」をジャンル名として使うのも怪しいと思ってるがそれはさておく。

また調べたら2001年ごろのチュンソフト公式サイトでトルネコの大冒険2(99年発売)がダンジョンRPGを称していたことがわかった。99年からそうだったのだかもしれない。
93年にトルネコの大冒険が発売したころには、まだ不思議のダンジョンにジャンル名をつけた人はいなかったと思う。だから94年の「だんだんダンジョン」のほうが先行であろうと僕は考えているのだが、実際わからん。

いつごろから不思議のダンジョン系は「ダンジョンRPG」を名乗りはじめたのか。
経緯はよくわからんが、
「ダンジョンRPG」は「3D」をつけるとウィザードリィになり、つけないとトルネコになる。そんなジャンル名ある?

だが実情を見るとユーザー側は3Dをつけないものも圧倒的に「3Dダンジョン」の意で使っている。
なんでメーカー側が不思議のダンジョンにジャンル名を譲る必要があるのだ?
エクスペリエンス作品が3DダンジョンRPGではなく「DRPG」などと称していたのは、この実情を意識してのことではないだろうか。エクスペリエンスの他のタイトルも「学園ダンジョンRPG」など、ジャンル表記に3Dを使わないようにしているようだ。
また商業でもローグライクを名乗るゲームも出てきている。「ダンジョンRPG」の名は不思議のダンジョンから奪還されつつあるのかもしれない。

・ジャンル名は自由

ユーザー側とメーカー側のそれぞれでジャンル名をつけるってこともあるよね。フォーメーションRPGとかハイスピードドライヴィングRPGとかスクロールRPGとか。
メーカー側はゲームの内容と関係なくどんな適当なジャンル名をつけてもいい。ただの「RPG」でもいいし、「君が生まれ変わるRPG」でもいい。
ただユーザー側がそれを支持するかは別で、「Racing Poem Game」とか「君と殴り合うRPG」とか勝手に分類を作ることもある。オタクはジャンル分類のようなことをしたがる。
テイルズオブリバースの終盤の熱すぎるシーン見た後だと「君と殴り合うRPG」だとしか思えないもんね。

「3DダンジョンRPG」については、メーカー側の自称とユーザー側の独自分類の両パターンが存在する。そのジャンル分類が適切かということは評価する公的な機関は存在しない。

・ダンジョンとは

ところでDungeonという言葉は城の地下通路、牢のような意味があるらしい。
どうも自然洞窟はダンジョンではない。迷路はmazeだし洞窟はcave。ダンジョンは迷路でも洞窟でもなく、城のような人工物の地下でなければならない。
あなたがドラクエやFFでなにげなくダンジョンと呼んでいるもの、本当にDungeonですか?
もっともこれは英語でも厳密に適用されているのか知らない。

そんなわけで3Dダンジョンは

・3Dでなくてもいい(むしろ正しい3Dであってはならない)
・ダンジョンである必要はない(森や自然洞窟でもいい)
・グリッドでなければならない
・ただし明確に定義したものはなく、あやふやである。

慣用句としての側面が強いと考える。

これをもう少し短い表現に言い換えるならウィザードリィみたいな画面のやつ」のことを「3Dダンジョン」と呼ぶのであり、その他の条件は重視されない。
なぜ3DダンジョンRPGかくあるべきという偏見が強いのか。なぜウィザードリィみたいなゲームでなければならないと思われているのか。
冒頭の違和感を回収するときが来た。思うに「3Dダンジョン」自体が慣用句であり、その定義を文章化する段階でウィザードリィと直結した概念と認識されても仕方ないんじゃないだろうか。
だからダンジョン以外のゲーム内容もウィザードリィであるべきだと思われているのだ。
いや代表例はポートピアでもディープダンジョンでもいいはずなんだけど、やっぱり一つ選ぶとウィザードリィということになるのか。

……3Dダンジョンにはキャラメイクがあるもんだと、僕のほうがウィザードリィを知らない前提で絡まれたりすると機嫌も悪くなる。結局それは彼らが3Dダンジョンはマイナージャンルであると信じたいだけではないのか。だがそんな時代はとっくに終わっている。
勝手にジャンルの定型を決め付けて可能性を狭めようとするのは、あまりに軽率である。3Dダンジョンが存在するものは3Dダンジョンであり、それ以上の条件はありようがない。

もっと言えば、グリッド型じゃないものを3Dダンジョンと呼ぶのも別に間違ってはいないと考える。
ただ、現にグリッド型のイメージが強いということもまた事実であり、これを再定義し否定する必要もない。
当分は「3DダンジョンRPG」のあやふやな定義が崩れることはないと思われる。

・first personである必要はない?

近年英語圏でもすっかり復権してるらしい3Dダンジョンだが、あちらでは3DダンジョンRPGと呼ばれていないことが多く、ジャンル名はいろいろ表現がある。
たとえばGrid-based first-person RPG(マス目型一人称RPG)とか称されていることがあるが、first personは必要なのだろうか。

仮にこのような画面構成、主人公が画面内に見えているthird-personのものがあっても、たぶん日本では3Dダンジョンと呼ばれる。ていうか、現にメガドライブの「アイル・ロード」ってゲームが主人公が画面内にいるタイプらしい。
極めて珍しいタイプなので考慮しなくても良さそうだが、兎に角first personではないダンジョンRPGは存在しうると言える。

輸出作品の英語ジャンル表記をいくつか見てみると、

Dungeon-crawling RPGDEMON GAZE

First-Person RPGEtrian Odyssey

Dungeon RPGEtrian Odyssey II

またLabyrinth of Refrain
(ルフランの地下迷宮と魔女の旅団)なんかでも3D Dungeonという表現が出てきている。
国産のものが増えてそのまま英語でも同じ表現で通じるようになってるのかもしれないが、過去の3D Maze系タイトルからの経緯を見ると、もともと3D Dungeonという言葉が向こうでも通用するものだったのか。
海外でのジャンル名の不安定さにも考えるところがあり、日本も3Dダンジョンだったばかりに雑にウィザードリィに分類されるくらいなら、ファミマガ時代のようにただの「RPG」のほうがいいのでは?と思ったりもするのである。