神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

2020年だからセブンスドラゴン2020の話

前作「セブンスドラゴン」の記事の続き

2011年発売のPSPソフト『セブンスドラゴン2020』は近未来の日本を舞台にしたRPGだ。舞台は近未来である2020年の東京。
前作の舞台「エデン」とはまったく違う世界であり、前作の知識はあまり要求されない。前作を知っていると少々展開の予想がつくところがあるくらいかと思われる。
この『2020』は単体での完成度も高く、シリーズ全部やるつもりがなくても最初にこれだけ手を出してみるのも良いと思う。実際、1作目より売れてるらしい。
ただ主要スタッフを続投しながらもグラフィックの雰囲気を一新した『2020』が前作とまったく別のゲームかというとそういうわけでもない。ゲームを構成する要素は前作を受け継いだものや、前作の問題点を改善したものが多く見られる。
やはり間違いなくセブンスドラゴンの続編なのだ。

前作同様に、このゲームもキャラクターメイクから始まる。
ただし主人公は最初から「S級」の才能を見込まれて、謎の組織「ムラクモ機関」にスカウトされたという設定になっており、生まれついての勇者的な立場が明確になっている。ムラクモのもとには同じような才能を持つメンバーが集まり、ドラゴンとの戦いに突っ込んでいく。
選べる職業は5つで、パーティは最大3人と、前作よりコンパクトになっている。そのぶん職業の機能は洗練され、個性は強い。
またこのゲームは回復アイテムが非常に強くなっており、アイテムの所持数にも余裕ができたため、3人パーティにヒーラーを必要としない。フロワロのダメージもなくなった。
必須職というのはないので、わずか5つの職業ながら編成の自由度は高くなっている。

声優によるキャラ付けがかなり濃いところは、前作や初期世界樹の路線から方向性が変化していることを感じる。
ちびキャラが基本なのはそのまま。

2020と前作との決定的な違いは、ドラクエ3のようなオープンなゲーム設計をやめ、ストーリーも一本道化したことにある。東京に現れた7体の帝竜はそれぞれが東京の実在の各地にダンジョンを作っており、ストーリーを進めると行けるダンジョンが増える。攻略順を変えることはできない。
プレイヤーの拠点となるのは都庁ひとつのみで、商店やサブクエストなどの機能はここに集中している。
ワールドマップの移動もなくなり、ダンジョンを直接指定して移動する。そのぶんひとつひとつのダンジョンは作り込まれており、拠点とダンジョンを行き来するダンジョンRPGのようなプレイスタイルとなっている。

一本道になった影響でシナリオはドラマ性を増す。休む間もなく次々に立ち塞がる敵のドラゴンに、人間同士の対立。様々な問題を主人公のチーム「ムラクモ13班」は解決していく。
『2020』の特徴として見逃せないのは無名の住民たちの作りこみにある。都庁に避難してきた全ての住民は固定の面々で、シナリオの進行に応じて応援してくれたり、悩みを相談してきたり、現在敵対しているドラゴンへの不安を語ったりと、様々な方向から物語に関わってくる。
このようにモブのセリフがシナリオの進行で変わるのは前作から引き継いだ要素なのだが、シナリオの分岐がなくなり拠点がひとつになったことにより質感は前作と大きく変わっている。物語の進行によって考えを変えていく彼らもまたドラゴンに立ち向かう仲間なのだという意識が強まり、都庁に閉じ込められた彼らの姿に今が人類の危機だという意識も強まる。
そんなわけで住民から依頼されるサブクエストもシリアスなものが大半である。前作のようなギャグ的なものはかなり少ない。人類の危機にそんなことやってられんという立場は一貫したものとなった。
都庁に閉じ込められた住民たちの空気は2020年現在の状況と重なることもあり、かなり重い…
本作が発売されたのは震災の年でもあり、現実の避難所を意識した部分もあると思う。それほど遠い未来でもない現実感の強さも作品の緊張感を高めている。
そんな状況もドラゴンを倒すうちにやがて改善して、終盤はちょっとしたデートみたいなのできるくらいの余裕も出てくるわけである。

ゲームバランス自体は前作よりもやや厳しい。ボス級は2回攻撃を基本とし、ときには全滅確定レベルの大技も使ってくる。そのかわり行動がかなり固定されており、大技は初見殺しの傾向がある。
セーブポイントも多めに設置されており、全滅してもその戦闘から復活できるので、全体的にそれほど苦しくはない。前作のように混乱で理不尽に全滅ということもないし、もしあってもその戦闘で再戦できる。
難易度は前作より高いのに親切と言える。
特定の職業が必要なボスもおらず、よほど極端な組み合わせにしない限り突破できないということはないと思われる。
ただし、SPの仕様変更によりメンバーの入れ替えのハードルは高め。2020は前作と違いスキルの習得に必要なSPも敵を倒して稼ぐ方式に変わった。これにより全スキルを習得したキャラクターを作成することも可能である、が。
新人を加入させた場合、レベル差による経験値補正があり、レベル自体はすぐ追いつくが、SPには一切レベル補正がつかない。レベルだけ追いついて重要なスキルをまるで使えない新人の出来上がりである。
新人育成したくない場合は「転身」があり、育っているメンバーのSPを維持したまま転職することができる。ただしレベルは半減。新人育成するよりは簡単だがメインパーティを一度崩壊させることになる。ついでに外見も変更されない。
そんなわけで、最初に作った3人から入れ替えないまま最後まで行くことが多いかと思われる。
(なおゲームの難易度は2段階から選べるが途中変更できない。どのくらい簡単になるのか知らない)

残念な点は、ポリゴン化したちびキャラの戦闘で、演出の大幅強化に伴い前作ほどテンポが良くない。大技を使えば個性の強い声優のセリフとともに、画面いっぱいに派手に動き回るが、そこにスピード感は損なわれている。
また好みの分かれるところだが演技にも気合いを入れすぎている感がある。主人公たちは汎用キャラにもかかわらず、全職業の全技ごとに、全声優で違うセリフが用意されており、同じ職でも声優ごとの性格の差も激しい。
さらに一度しか戦えないボスを倒したときの専用のセリフまで…
新人を育てるのも大変なこのゲームで、全部聞くにはどれだけ時間をかければいいことか。これは褒めるべき要素なのだが、作り込みすぎとも思える。シナリオ上は無言主人公なのにやたら声のキャラが強いのも特徴で、自分で作ってからこいつこんなキャラだったのか?!と困惑することもあると思われる。
いや好みの分かれる点だと思ってるが、このくらいキャラが濃いほうがけっきょく多くのプレイヤーは入り込みやすい気もする。個人的に不満ではない。

ところで、ここからはストーリー部分のネタバレになるのだが、

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一見して前作『セブンスドラゴン』のファンタジー世界と関連がない『2020』だが、まあ前作を知ってればだいたいどういうことかは予想がつく。おかげでラスボスがだいたい予想ができるという弊害も生じており、また重いエピソードが多い中で、原因となるボスキャラの動機がショボい感じはちょっと残念な感じはする。
というかこれは前作の問題なのだが…2020がどういう話から割とはっきり構想されていたようで、2020で回収しなかったら何だこりゃで終わっていたかもしれない。

この記事などに書いてあるが、セブンスドラゴンは当初からこの東京編を含めた5部作を構想しており、この2020は発売順が先になったものの外伝的作品となる予定だったが、あくまでも当初から構想されていた内容に沿ったものとなっている。しかしこの『2020』のヒットと、作者の新納一哉の離脱によってこの構想は変化していった。直接の続編『セブンスドラゴン2020-II』に続く。