神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

世界樹の迷宮1

5月くらいから初代「世界樹の迷宮」をやりなおしてた。そして気が付けば世界樹Xの発売まで一週間切った。
そしてつい先ほどのニコ生で、次の「SQ」も何らかの構想があることが発表された…

・あえて一作目からやる必要はあるのか
いまやシリーズがナンバリングで5作、新とXで通算8本目とかになろうという世界樹の迷宮だが、物語は全て独立しており、作品ごとの連続性は乏しいため、あえて発売順にやる必要はあまりない。
だから「どれからやればいい?」という質問に対し「一作目からやれ」という意見は少ないわけである。
だいたいドラクエだってFFだって間違いなく途中からやってる人や、全部やってない人のが多いでしょう。
まあ新納一哉さんは世界樹ポッドキャストでまずドラクエ1をやれとは言ってましたが。あれたぶんファミコン版のつもりで言ってたな…

当たり前だが「世界樹の迷宮」シリーズもグラフィック・操作性、音質等、ゲームの遊びやすさに関わる部分は大半の要素で3DS以降のほうがレベルアップしているし、DS時代で比べても2の時点で既にクオリティが上がってるところもあり…
あとはゲームシステムの好み、キャラクターの好みなどの問題になってくるが、あえて一作目からやることを推奨する感じではない。
逆に2から1に戻ると操作感落ちるぞという後ろ向きな意見があるくらい。

ストーリー面での連続性はないものの、世界観そのものは4までは共通しており、前の作品の話題が部分的にある。特に一作目は世界観の根底にある重要な説明があるため、その意味では一作目からやる意義はある。既に公式の配信等でネタバレ許されてるけど。
だがこの設定を知ってると3とか4の理解度が深まるかというとそうとも言えないので、やっぱりいらないのかもしれない。

しかしながら、今さら一作目から入るのがおすすめではないということもなく、2以降と比べてつくりの荒いところは多々見られるが、十分今でも遊べる完成度はある。極端に操作性が悪いとか、進行に問題あるようなバグがあるとかもない。
1からやることを選択肢として否定するものでもない。やはり初代から発売順にやってみるのもいいだろう。

ちなみにグラフィックは3DSの4以降で一気に向上したが、動作速度の向上に関しては新1からである。速度に限って言うなら4はまだそれほどでもない。

・初代特有の仕様群
世界樹の迷宮」シリーズは、キャラメイクやマッピング、スキル制という根幹のゲームシステムは維持しながらも、具体的な計算、ゲームの進行についての仕様の変動は激しいシリーズである。二作目以降に受け継がれなかった初代特有の仕様というのもかなりある。
そして初代はどっちかというと「作りが荒い」と思える仕様が多い。発売後のポッドキャストでも話題に上がった難点もあり、そういったものは素直に修正・改善されていっている。
しかし中にはディレクターの交代による作風の違いかな?と思える変化も確かにある。

foeの位置づけが違う
初見でほぼ勝てない鹿とカマキリの印象で薄れがちなのだが、この初代については1層後半以降のfoeの脅威度が低く、2層以降に出るものは初見でもあっさり勝てたりする。
性能的にも単純に攻撃力と耐久力で力押ししてくるタイプのものが多い。後のシリーズのように工夫しだいで勝てるというよりは、レベルにより単純に戦力が足りていれば勝てるタイプのものが大半である。発売後のポッドキャストでも言及していたが、5層あたりはザコのほうが恐ろしいんじゃないかという組み合わせさえある。
現在のfoeは終盤でも回避前提のものが主流であり、鹿カマキリのノリのほうが支持されたことがよくわかる。
それにしても「うごめく毒樹」はちょっと弱すぎである。なんであんなのがギルド長の…

性能を抑える一方で、回避がほとんど不可能のfoeもかなりいる。進路上にいきなり出現するものや完全に通せんぼしてくるものなど、回避ではなく倒すほうが適切な対応となってくる(逃走時の怪しい挙動でスルーできることもある)。
またfoeの移動パターンが種族で決まっていない。後のシリーズなら、鹿なら必ず一定ルートを巡回して追跡してこない、という感じで動きによる役割分担があるが、この初代は同じ鹿でも無から突然現れて即追跡してくる個体もいる。動きで種族が判別できず、実際に戦闘しないと中身はわからない。

・レベル補正が大きい
世界樹の迷宮は成長にランダム要素がないため、シリーズ通して戦闘力はレベルへの依存が高い設計を取っている。しかし初代はそれだけでなく、敵とのレベル差そのものもダメージ計算に使われており、傾向が極端に強くなっている。
レベル差が大きいとパラメータ以上の差が出て、食らうダメージは大きくなり与えるダメージは極小になる。この補正はかなり大きく、偏ったスキルや強い装備でもごまかしきれなくなっている。
逆にこの仕様のためか、レベルさえ適正なら多少適当なパーティーでも間に合う程度のバランスに抑えられているのが初代だ。これは良し悪しであるが、2作目で補正が撤廃され復活することはなかった。
ちなみにこれがガバいのが旧2で、レベル関係なく激大ダメージを出すスキルが若干数あり中盤まで猛威をふるった。
現在のシリーズでは補正こそないが、パラメータにランダム成長がない仕様は一貫しており、戦力がレベルに大きく依存する設計そのものは残っていると言える。

・新人育成がやりにくい
レベル補正の影響が如実に出るのが中途採用の新規キャラクターで、前線に出してもレベルが追いつくまでずっと弱い。前衛はもちろん、後衛に置いても流れ弾で瞬殺される。
3層で加入するブシドーなら頑張って使えば何とか追いつけるが、6層で急にバードが欲しいとか思うと大変で、レベル40とかまで育てても全然足りない。前線で使えるレベルまで上げる手間がシリーズでも特にかかると言える。
新納さんの最初のインタビュー「稼ぎポイントを見つけるとやたらと稼げるようになるんです。」という発言があるが、正直どれのことなのかわからない。終盤の階層にも回復所が用意されてる件だろうか…
最終フロアで地道に戦う方法で実戦レベルまで数時間かかる程度で、無理ではないが楽な道のりでもない。
まあ育成に関しては、シリーズ通しても特に上げやすい方法がないタイトルのほうが多いかもしれない。

休養もこの初代だけ10レベルダウンと、非常に重い。スキルの振り直しは最後の手段と心得たい。しかし罠スキルが比較的多いのも初代である…

・難易度
この初代から難易度は高いと言われていたが、シリーズ全体から見るとかなり低いほうだと思う。
foeの強さもそうだし、ザコはもう少し控え目。強力なザコとしては全体睡眠を使う花びら系、単純に強いアーマービースト、雷以外効かないメタルシザースあたりが挙げられるが、この中でも逃げる間もない本当の初見殺しと言えるのは花びら系くらいで、それ以外のザコ戦でいきなり半壊させらたりすることはめったにない、この初代は。もし勝てなくても逃げる程度の余裕はある。
後のシリーズのように「レベルが足りていても無対策だと死ぬ」というタイプのザコはいないと言っていい。
レベルが足りなければ負けるが、足りれば勝てる。シンプルである。
レベル上げ作業自体もクリアまでの範囲ではあまり要求されない。

ダンジョンの構造も6層以外は比較的シンプルで、特別難しい謎解きはない。マッピング機能の低さもあるので、このくらいでないと厳しいというか。
ただし後のシリーズより隠れた抜け道が少なく、ボスまでの道のりが遠めである(こういうところがドラクエ1的)。途中のfoeをつぶしておいたり、消耗を抑えられる実力を得ることが大事になってくる。
6層のワープ地獄は例外的にシリーズでもしんどいほうである。(なおリメイクの新世界樹の6層はこのオリジナルと比べてもかなりつらい)

・サブクエストがそこそこ理不尽
戦闘や迷宮の難易度とは別に、サブクエストは面倒なものがあり、4層あたりからほとんどノーヒントのものもちらほら。
ダンジョンRPGというジャンルの特徴で、すべてのマスを埋める想定の迷宮自体は普通だが、この初代は既に埋めたマップをクエスト受注後に再度ノーヒントで歩きまわらないと攻略できないようなものがある。
4層の隠しエリアにいるボスもそうである。通れない壁までは簡単に見つかるが(それもヒント自体はない)、それを開ける方法については何らヒントがない(何気ない壁にあるので全マス埋めても見逃す可能性あり)。
後のシリーズでは「全マス埋める」以上を要求するノーヒント系のものは極力なくなっている認識。ヒント自体が難しい謎解きは後のシリーズにも幾つかあるが。

・バトル関係
ゲームクリアまでは、特定の職業を必要とするバランスではない。物理完全無効のザコなんかもゲームクリア後のものだ。
これは初代に限った話でもない。
だが楽な職業はあり、どう見ても不遇な職もある。職業格差はシリーズでも大きいほうかと思う。
またクリア後に出現する4体のボスについては一変して、明らかに特定の職が求められる設計となっている。ここで新人育成をやりにくい仕様が結構つらいことになる。

・スキルが難しくない
戦闘システムの特徴として、III以降によく見られる、複数人での連携を求めたりする難しいスキルがほとんどない。
この初代は単純に強い技を使えば強いのだ。戦闘がシンプルである
これはとっつきやすく、難易度を下げている理由でもあるのだが、単純に強いスキルを持ってれば強いということであり、これはレンジャーが単純にブシドーより強くなってる理由でもある…
比較的複雑な強さを発揮するものとしてはトラッピング型のダークハンターが挙げられる。

また、この初代はほとんどのスキルはレベル5でTP消費量が最大になり、レベル6から10では増えず単純にパワーアップする。キュアIIIのような例外も一部あるけど。
おかげで中盤以降は決まったスキルにポイントを集中させやすいのだが、ダブルショット9と10で威力が1.5倍以上に上がっているのに消費TPがそのままなのは本当によかったのか。

・ブシドーが厳しい
今回やり直したのはブシドーをちゃんと使ってみたいと思っていたのもある。
構えに1ターン使用して大火力を出す初代のブシドーは長期戦向きの職だ。しかしこの初代はソードマンでも大抵のザコは一撃、二撃で倒せるため、つまり対ザコには1ターン目から使えるソードマンのほうがだいたい有利であり、ブシドーが実力を発揮するのは強くて多数出現する一部の敵編成や、FOE以上の敵に限られる。
いや、ここまではいいんだ。ツバメがえしならば構えのロスを考慮してもソードマンを上回る火力で、対ボスには十分強いことは今回の再プレイで確認できた。6層あたりだとザコ戦でもブシドーのほうが有利な場合も珍しくはない。育てにくさを考慮しても初代ブシドーは十分実用レベルにいる。
耐久力の低さも、レベル補正によって誤解されがちだが、適正レベルならボス級相手に耐える程度はあり、ザコ戦でガードスキル必須になる後のシリーズの紙ブシドーよりマシなくらいだ。総合的には決して弱い職ではなく、リスクも考慮したバランス調整はされていたと確認できた。加入直後に運が良ければ強武器が手に入るという優遇措置もある。
実質ツバメがえし一択になってるのは気になるが…(ツバメ返しと首討ち以外は存在意義がわからない)
構えが強化スキル扱いのため、特定ボスに消されてガン不利という問題もあるが、それ以外のボス級相手ならブシドーは明らかに強い。はずだった…
レンジャーがいなければ…

・レンジャーがおかしい
初代ブシドーが厳しいのはレンジャーとの比較にある。というかレンジャーがおかしい
サポート職に見えるレンジャーだが、サジタリウスの矢とダブルショットをローテで撃つとソードマンどころかブシドーを超えてきて簡単に最上位物理アタッカーの座に立つ。
弱点はザコ戦にやや不向き(サジ矢はザコに使えず、ダブルショットはターゲットを指定できない)なのとTP効率の悪さだが、これはブシドーも似たようなものであり、構えもないので特定のボスで使えないということもない。
中盤で準最強レベルの武器が手に入るというブシドーの優遇措置に対しても、これがレンジャーも狙ったようにすぐに最強武器が出てきて打ち消される。
しかも攻撃だけでも頭おかしいのにレンジャーは超優秀なサポートスキルを複数持っている。耐久力すらレンジャーのほうが上。
もしかしてブシドーの利点は首討ちくらいしかないんじゃ…?
ブシドーも裏ボス級の最強武器や夜間限定スキルの補正をつけるなど状況を整えればレンジャーよりダメージが出る場合もあるようなのだが、普通にやるとブシドー育てるよりレンジャー増やしたほうがいいだろうなあ。
レンジャーとの比較においては、ザコ戦に向くソードマンのほうがブシドーより存在意義が感じられる。

だがおかしいのはレンジャーであってブシドーが弱いわけじゃないんだ!というか実際のところソードマンも相当厳しいぞ!
医術防御を縛れというなら今すぐレンジャーも縛ってみせろ!
3ターン後に降ってくるって説明のサジ矢が2ターン後に降ってくるの普通におかしいからね。

・メディックと医術防御
世界樹シリーズ通して回復アイテムは強いが、さらに初代は最高ランクのもの以外は品切れもしないし、バステ回復に至ってはアイテムでも全体に効果があるためメディックに頼る必要はない。
だから回復だけならメディックなしでも問題なかったりするのだが、初代は資金繰りが厳しい。メディックは回復アイテムに使う金を節約するための職業だと解釈できる。

それ以上にメディックを使う大きな理由となるのが「医術防御」だ。初代のゲームバランスを象徴するスキルで、物理を含む全ての属性の攻撃を割合で大幅に軽減する。
FF5のマイティガードみたいなもんであるが効果はさらに大きく、消費TPも少なく、ザコ相手でも使っていける。
これが強すぎることに関してはポッドキャストでも言及しているが、完全に想定外というわけでもないようで、まず仕様を実装した担当は絶対気づいてただろう。ラスボスまではともかく、裏ボスについては医術防御なしで撃破するのはかなり困難だ。
この強さは仕様ミス疑惑もある。本来の意図は属性攻撃を防ぐスキルではないのか、つまりマイティガードじゃなくシェルだけかけるやつのつもりだったんじゃないかと…。(これは新世界樹でこの仕様になっていて、数値自体は強力だが使いどころの限られるスキルになった)
ただプロテスはともかく全体シェルについては意図した仕様のはずである。想定外の効果が含まれていたと仮定しても、このスキル自体を縛る想定はしてないと思う。
やはり強く設定してあるから強いのが医術防御なんだろう。
ただブーストかけた医術防御に関してはちょっと異常な防御率で、単純にやっぱり調整不足なのかとも思える。

余談だが「医術防御II」はあるが「医術防御I」はない。ただの医術防御。

・ブーストの効果が控えめ
世界樹シリーズには毎回戦闘中にゲージを溜めて発動するコマンドがあるが、この初代の場合はBOOSTというコマンドが設定されている。発動したターンのスキルがレベル+5相当の効果になる。レベル10の技なら限界を超えたレベル15になる。
この効果はそこまで大きくなく、ダメージ技ならだいたい1.2倍くらいに上がるが、倍増するような劇的な差は出ない。
後のシリーズのゲージ技には全体攻撃や完全防御など一発逆転級のものもあるが、初代のブーストは1ターンだけ技の威力が上がってちょっとお得程度のものになっている。派手な逆転技よりも堅実に戦えという初代特有の思想が感じられる。
例外は裏ボスの攻撃を1ケタにまで落とす医術防御15であるが…

なお多数の仕様変更がされたリメイクの新世界樹1だが、ブーストについては同じ控えめの仕様を維持していた。

パラディンの存在意義
世界樹シリーズに必ず登場する盾職の多くはタンクというより「ガードスキルを持った防御力の高い職業」である。
初代パラディンも本人の防御力は高いが、しかしガードスキルの使用において本人の防御力は関係ない。後衛でも特に問題なく使える。
(後のシリーズには前衛で本来のタンクとして機能するペットやフォートレスがいる)
そして初代は挑発もあまり優秀ではない(全く効いてないという報告もあったが、近年の再検証で効果自体はあることが確かめられている)。
挑発以前にHPが高いだけで狙われる傾向はあるらしく、パラディンは配置するだけでも一定量タンク役として機能もするが、際立って攻撃を引き付けるような正しいタンクではないと言える。というか防御が高いと言っても圧倒的でもないので引きつけすぎるとパラディンも死ぬのだが。
この初代パラディンはタンク役を全くできていないわけではないが、あくまでもタンクを一部請負えるくらいの防御職である。

防御アビリティを持つジョブ自体は過去のゲームにもあったが、このように防御を主目的とした前衛をオフラインのRPGに持ち込んだのは当時は珍しかったと思う。前年のDS版FF3やFF12では、FF11から影響を受けたタンク的な要素が登場しているので、そのような流行りもあったかもしれない(世界樹自体FF11の影響がかなりあるという話だ)
だがこの頃はまだ防御職の概念が珍しいと思われていたのか、序盤のパラディンは純粋な防御職ではなく、普通の前衛職としても戦えるようになっている。何しろ初代パラディンはSTRがソードマンより高いため通常攻撃は普通に強く、序盤必須レベルで役に立つ。
2層後半くらい、ソードマンの攻撃スキルが充実してくる段階になると、パラディンの威力は物足りなくなってくる。シールドスマイトを使えば単体火力は追いつくが、これはメインで使うには前提やTPが厳しめの技である。
このあたりから本格的に防御職として運用することになるのだが…この初代のバランス、ブシドーでもレベルが足りてれば数発は耐えられるというのがひとつ。
もうひとつは主力技のフロントガードの仕様の問題で、これが1ターンに1回しか機能しない。全体攻撃を使うボスに対しては有効だが、ザコの集団には不向きな技である。ザコ戦でパラディンにフロントガードさせる必要性は皆無ではないが、薄い。
ザコ相手にも防御陣形を使っていってもいいが、どちらかというと対ボス向きの職として育成することになる…対ボスで役立つはずの防御スキルは医術防御のほうが優秀だったりするが…医術防御を使わないつもりならパラディンを活用するのがいいだろう。

クリア後ボスに関しては医術防御でも耐えられない超威力の属性攻撃を使ってくるので、3属性のガードスキルを使えるパラディンがほとんど必須となる。もちろんフロントガードも活用の余地がある。
ただボスはともかくザコ戦においては、タンク的な役を十分こなせているとは言えなかった。

・クリア後ボス
ラスボス打倒後に出現するボスキャラとして、各層に配置された通称三竜と呼ばれるものと、迷宮の最後の裏ボスがいる。これらは超威力の属性攻撃を使うので、ほぼパラディンが必須となる。
また三竜についてはバードもかなり必要になる(他職でも代用できるがバードだけが三体とも対応している)。ラスボスまではいい加減な編成でもクリアできるのだが、クリア後のパーティ編成はそれなりに制限を受ける。
ちなみに裏ボスはバードの相性があまりよくない。
そんなふうだから対ボス特化でいろんなキャラを育てなきゃならないが、これは初代に限った話でもない。しかし初代はここで新人育成がめんどい仕様にひっかかるわけである…
ところでこちらの強化に反応してほとんど行動が固定される雷竜のAIはひどすぎると思う。条件が簡単すぎるので想定してない攻略とは思えないのだが、やはりここも調整が甘い部分だろう。

裏ボスは超威力の属性攻撃を決まったターンに撃つ。属性ガードは決める必要があるものの、属性攻撃を撃たないランダムのターンは戦術を詰めるというより、軽度の運ゲーという感じ。医術防御がないとつらい&あっても運次第でどうにもならないが、ガチガチの行動制限されるタイプでもない。
運ゲーを制するために、できるだけ少ないターンで倒せるパーティを組むことが有効な対策となり、やはりこれもレンジャーの出番である。

・アイテム収集要素が違う
このゲームの裏エンディングを見る条件は裏ボスを倒すことではない。裏ボスの落とすアイテムを含めた図鑑を完成させることである。
初代名物の逆鱗マラソンである。
特定の条件で落とすアイテムの枠に、初代は無条件・低確率の「単なるレアアイテム」が入っており、それをよりによって三竜が持っている。倒すだけでも面倒なのに道中がやたら長い。面白くねえ。

なお初代は条件を満たしてもドロップ確率が低いアイテムが結構ある。違う種類の敵が同じアイテムを落とすことも比較的多い。これらは初代以外にも見られる要素だが、こういう部分にもゲーム設計の違いが感じられる。

マッピングできない度が高い
本作の売りであった手描きマップ機能自体に難あり。基本的なアイコンが足りない。

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初代のみアイコンの用途がわざわざゲーム内に書いてあるが、これでは滑る床はもちろん、抜け道に対応できるアイコンすらない。採取系が1種類しかないのも厳しい。
新シリーズ以降だと特定フロアでしか使わない専用のアイコンなんかもあったが、この初代で言うならピットがあるフロアはほとんどなく、そのうち一つのフロアはピット地獄なのでアイコンなど使えない(置ける数の限界がある)。
アイコン数の問題でダメージ床もマッピングできたものではない。このため、「ダメージ床の色を塗らない」という制作時点で想定されていない方法がよく使われた。
これもポッドキャストで言及しており、機能を作ってからマップを後から作ったのが原因だそうである。
制限された仕様内でいかに書き込むかもこのシリーズの遊び方の一部だが、それにしてもちょっと足りない。なんとかしてくれ。
おかげで床塗りという珍しい機能が提案されることになり、2作目から実装されている。

しかし6層のワープ地獄に関しては、この程度の機能でも手描きマップだからこそ攻略可能なものだった。オートマップでは正解ワープ・ハズレワープという区分けが難しいので。マッピングの楽しさはこの初代の時点でもうあった。
…でも、やっぱりもっと高機能なマッピングがしたい!

カニ歩きできない
移動中に敵が見えたり、壁に仕掛けが隠されていることの多い世界樹は「ダンジョンマスター」の影響が比較的あるように見えるのだが、ダンジョンマスターにもあったカニ歩き機能が世界樹にはない。
これは新納一哉さんがカニ歩きという概念そのものを知らなかったため。他のスタッフは知ってたのに教えてくれなかったと新納さん自身が語っているが、新納さんほどの人が仕様から外していたなら、それは知らないのじゃなく意図的に外してるのだと思われても仕方ない気がする。
つまりみんなが悪いのだ。
言い訳としてカニ歩きを入れると雰囲気が変わるとか作業的になっただろうということを新納さんは述べているが、実際壁を調べまくるこのゲームではカニ歩きがないことで不便を感じる場面はかなり多い。次作ですぐに実装されて、その後ずっとカニ歩きがあるのが答えであろう。

・シナリオの寂しいところ
世界樹の迷宮というと、木の実を食べたり物を売りつけられたりといったミニイベントがちらほら挟まるが、一作目はそれがごく序盤に集中しており、街で受けられるサブクエスト以外のイベントは極めて少ない。開発時間が足りなかったのか、作ってる途中であまり重要でないと思われたのか。
これは2作目から増量されているので需要があったことが伺える。たとえ大した実入りがなかったとしてもだ…

街の住人のセリフも今のシリーズより変化に乏しく、一生バランスしか言わないギルド長は公式にもネタにされた。
酒場の客会話もまだない(これは3からである)

・キタザキ先生
初代には施薬院という施設があった。他のRPGの教会に相当する施設だが、治すのは戦闘不能と、石化のみであり、どっちも他の手段で治るので、ネクタルもテリアカも品切れしない本作ではごく序盤以外頼る必要もない。
ただし初代は回復アイテムを商店ではなくここで買う設計とすることで、施薬院の存在意義を保っている。…単に売り場が分かれてるだけで不便だよなあ。
異世界人の院長とお話できるのが最大の存在意義である。
2の薬泉院では回復アイテムを扱わなくなってますます存在意義がなくなり、3以降は治療も宿屋に統合され医院的な設備は消滅してしまった。
そして新世界樹でも医院は戻らずキタザキ先生は帰ってこなかったが、これは不便でも残してほしかった気もする。しかしどう見ても不便だしな…

・セーブデータがひとつ
セーブはひとつしかできず、2週目もない。もう一度遊びたければデータを消すしかなく、書いたマップで楽に2週目をプレイするということはできない。
いやこれは初代だけの問題ではない。シリーズで引継ぎ要素が登場したのは3からだ。しかし3はサブイベントの進行がリセットされない中途半端な2週目で、ちゃんとしたリセットがされるのは4から。
セーブデータに至っては新1までひとつである。新2で初めてSDカードにセーブを増やせるようになったが、この問題は本当にずっと抱えていた。

他の細かいアラとか余談
・預り所がない
珍しいアイテムの保存がめんどい。ただクエスト用アイテムがアイテム欄を圧迫するのは意図した仕様な気もする。2で宿屋に預り所が実装。

・中断セーブがない
一度にそんな長時間冒険するゲームじゃないので、なくてもそんなに困らないけど…2から実装

・スキルツリーが見にくい
スキルの前提条件がちゃんと表示されてない。習得できない状態で決定すれば条件は表示されるので知ってればそんなに不便はないのだが、その操作は説明書(結構厚い)にも書いてない。気づかず条件を当てずっぽうで探していろんなスキルを習得させるプレイヤーもいたようだ。

・バステ
初代はバステ(バッドステータス)という変な略の独自用語が特に説明なく使われてる。アトラス製RPGで使われてたらしいが何の略よ?と戸惑う人もいた。現在は使われてない。

・「ああっと」がない
採取中にランダムで「!!ああっと!!」が出てモンスターが襲ってくる仕様が初代にはない。つまり低レベルの採集専用部隊を運用可能。お金の厳しい初代だが、自重しなければ金策は容易である。
「ああっと」の実装は2から。悪意の強い旧2を象徴する仕様のひとつだったが、珍しく2だけで終わらずその後のシリーズにも残る悪意となった。

・地図をうかつに塗れない件
初代は「実際に歩いたマス」と「色塗っただけのマス」は見た目で区別できない。foeは実際に歩いたマスにいるものしか見えない。全滅するとマップを保存できるが初代は「実際に歩いたマス」は保存されてない。全滅地図を引き継ぐと塗られただけになってしまう。
ちなみに迷宮入り口付近に最初から塗られているマスがあるが、ここを歩かないままにしておくと後半のイベントで出るfoeが見えない状態になる。
「視界に入れたマス」と「塗ったマス」の区別がつくのは4以降。

・性別が影響する要素がある
外見による差が基本的にない世界樹シリーズだが、クエスト「朝日とともに這い寄るモノ」に出現するfoeの挙動はパーティの外見上の性別で変化する。
その後のシリーズではプリンスとプリンセスの職業名くらいのはずだが、この程度の変化はいずれ復活することもあるかもしれない。

・引継ぎ用パスワードとは…
また初報の新納インタビュー
>ただ、通信ではないんですが、パスワードを発行して、つぎのゲームにキャラクターを持っていこうという試みを用意しています。それは、このゲームの『2』であるかもしれないし、まったく違うゲームでもいいんですけども、お気に入りのキャラクターを、"このゲームはクリアーしたよ"という称号といっしょに違うゲームに持って行けるのが、おもしろいかなと。
世界樹の迷宮」は初報の時点で引継ぎ要素が用意されていることを明かしていた。ウィザードリィ外伝にもあったやつ、いかにもダンジョンRPGらしい要素だ。
これは結局別のゲームではなく「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」に引き継ぐ機能となった。

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この長いパスワードには少なくともキャラクター名は含まれているらしいが、実際に引継ぎ時に参照されている情報はクリア状況とギルド名だけと思われ、メンバーのパラメータは引き継いでも一切反映されない。
ぶっちゃけクリアデータを用意するのが面倒なら他人のパスワードを引き継いでも一向に構わん(ひむかいさんも当時自パーティのパスを公開していた)。
ただし2は引き継ぐとイベントの悪意が序盤からモリモリ上がる仕様なので注意。普通にやりたい人は引き継がないほうが良いと思う…
旧2にはパスワードを引き継ぐ機能はあったが、旧2には3に引継ぐパスワードを作る機能はない。たぶん作ってるほうもこの仕様はどうかと思ってたんだろう。
その後は新1の引継ぎデータが新2のグリモアトレードに反映されたのみである。新2への引継ぎはささやかなもので、悪意アップ機能はない。

粗削りなところが目立つけど、意識してシンプルにしてる様子もうかがえるのが初代「世界樹の迷宮」だった。今でも楽しめるかどうかなら間違いなく楽しめる作品だと言えるけど、古いRPGになってしまったとも思う。
3以降の複雑化していった路線が維持されているのは、この変化が支持されているからでもあるのだろう。
と思いながら久しぶりに5やったら育て上げた自パーティの戦い方がよくわかんなくて格下ザコに全滅させられたわけであるが。
Xではもっとシンプルに使いやすいパーティを考えようと思った。