神殿岸2

2と言っても実質1.5みたいなもの

アルカードとロードオブシャドウの話など

悪魔城ドラキュラ ロードオブシャドウ2

日本ではいまいちパッとしなかった『ロードオブシャドウ』シリーズ3部作を今年になってプレイしていた。特に『2』の話を書く。
感想としてはコナミはこれをよく日本で売ってくれた。
最終作ロードオブシャドウ2は3人称視点ながらメトロイドプライムを想起させる探索型3Dアクションとなっており、主人公のドラキュラがクソ人間どもを蹴散らしつつドラキュラ城跡地の「キャッスルヴァニア市」の危機を救おうとするという冒険活劇だ。迷路のような広大な市内を走り回りつつ、一作目で頻出したやたら頑丈な敵、めんどくさいミッション、細かいステージ分割が解消され、テンポも非常に良くなっている。
そんな痛快なノリに反し、ドラキュラが死を求め街を徘徊する後ろ向きな物語。そこで過去と向き合うドラキュラが見つける未来。完結編として申し分ない内容であり、ゲームとしても3作で一番よくできていたと思う。
PS3版の初回盤は2021年でも入手できた(360版は高騰している)。この特典「錬金のルーン」は非常に強力なので、これからやろうとする人は何とか入手していただきたい。
こんなふうにかっこいい解説もついてくる。

はっきり言って、日本で売られなくてもおかしくなかった。『ロードオブシャドウ2』について国内でのレビューは極めて少なく、内容もあまり聞こえてこない。
ゴッドモードの存在も日本語のサイトで解説してるところないしな。

『ロードオブシャドウ』は1作目の時点で小島プロダクションを前面に押し出してプロモーションを打ったものの大して売れず、DLCの日本版が売られず終わる(絶対取れないDLC用のトロフィーだけ翻訳されている)という悲惨な状態だった。
2作目『宿命の魔鏡』からは小島プロダクションも関わっておらず、小島秀夫監修の日本語吹替もなくなったが、ローカライズは字幕で継続、

そして最終作『ロードオブシャドウ2』。
日本版は公式サイトも説明書も最低限しか作られていない簡素なものだが、字幕のローカライズはしっかりしており、最後まで違和感なくプレイすることができた。
アルカードが主人公のDLCもちゃんと日本語で配信されている。

そう、本シリーズにはアルカードが出る。『月下の夜想曲』のアルカードとは異なる、ロードオブシャドウ独自のキャラクターである。

すっかり人気キャラとなったアルカード、もとは『悪魔城伝説』で初登場したキャラクターだったが、出世作である『月下の夜想曲』とは内容の食い違いが複数ある。
代表的なのが彼の出自についてである。外見ではなく。
悪魔城伝説の説明書で語られた物語だと、アルカード(本名アドリアン・ファーレンハイツ・ツェペシュ)は悪魔と契約した父に反発していたが、自分も契約を強制され人間ではなくなったことで反乱を決意した、となっている。
つまりアルカードは人間時代のドラキュラの人間の息子であり、ハーフではなく親父に合わせて純粋なヴァンパイアにされたものなのだ。
なぜハーフとしなかったのか。悪魔城伝説の設定ではドラキュラが吸血鬼になったのが物語開始直前だから、ハーフの子供がいたらおかしいのである。そういうことだと思うが…
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このアルカードの出自は説明書に書かれていたもので、ゲーム内では語られていない。
名前を捨てたアドリアンの怒りは強く、自分からドラキュラの息子だと名乗るのも抵抗があったのだろう。地下ルートでラルフを試す目的で襲い掛かってくるが、こいつ倒されると素性を明かさないまま仲間になろうとする。
これが悪魔城伝説のストーリーの巧みなところで、説明書のストーリーと合わせて最小限のセリフで彼らのキャラ付けに成功しているわけだが、このためゲーム本体だとアルカードとドラキュラの関係はエンディングまで明かされない。
それどころかアルカードが吸血鬼であることすら説明がない。これは説明書にも「アルカードは吸血鬼だ」と厳密に書かれてない。
完全な説明書はバーチャルコンソールにもアニバーサリーコレクションにも未収録であり、悪魔城伝説の設定は半ば失われている状態だ。
しかし、もう存在しないパチスロ悪魔城ドラキュラ3の公式サイトでは旧設定を採用していたらしい。

月下の夜想曲』では悪魔城伝説の設定と異なり、アルカードは吸血鬼のドラキュラと人間の妻リサの間に生まれたハーフということになった。説明書によると推定400歳。
1797年時点でドラキュラは推定800歳とされており、アルカードとは倍くらいの年齢差がある。アルカードはドラキュラ400歳の頃に生まれた息子であり、人間ドラキュラの子ではありえない。
この設定だと15世紀の悪魔城伝説よりずっと前からドラキュラは吸血鬼だったことになるのだが、これは前作『血の輪廻』で800歳とされていたのをそのまま採用したものである。これによりアルカードのハーフ設定も導入できたが、年齢差開きすぎな感じもする。
(この月下の年齢設定ものちの『キャッスルヴァニア』とズレがあるのだが、それはまた別の話とする)
また月下のセリフだと両親とも彼をアルカードと呼んでいることがわかり、反抗の意思から改名したわけじゃないようだ。

『月下』設定により、悪魔城伝説の説明書設定のほうは否定されたように見えたのだが、こちらの設定で考えたいことがある。
ドラキュラが反抗的な息子を吸血鬼にするというストーリーはわかるが、それで洗脳などせず逆に反発を強めているという流れ、ちょっと不可解な感じがする。
だからハーフへの設定改変は妥当だったと思うのだが、もしかしたら旧設定には語りきれていないドラマがあったのかもしれない。

そこで原典と完全なパラレルワールドとして再構成された『ロードオブシャドウ』(LoS)のアルカードだ。
しかし、このアルカードについて何か話そうとすると『宿命の魔鏡』、そして1作目ロードオブシャドウの完全なネタバレが必要になってしまう。以下はそれを書いていかざるを得ない。
このシリーズ、『ロードオブシャドウ』『宿命の魔鏡』『ロードオブシャドウ2』と順番にやっていたほうが明らかにストーリーに入りやすい。重要な部分はほとんど全部ロードオブシャドウ2の冒頭で説明される(公式サイトにも一部書いてある)し、いきなり2から始めてもついていけるとは思うが、できるのなら1作目から順番にやったほうがいいのは確かである。ただゲームとして一番面白いのは2であり、1作目はそれほどおすすめでもないという事情もある…
だから以下は『宿命の魔鏡』までのネタバレを書いていくことにするが、必要最小限とするようにした。
ついでに先に書いた『漆黒たる前奏曲』のネタバレも含む。

LoSアルカード初登場作品となる『宿命の魔鏡』(さだめのまきょう)だが、冒頭で語られるのは前作の主人公ガブリエル・ベルモンドが旅立ったのち、トレバー・ベルモンド(『悪魔城伝説』のラルフの英語名)が生まれるところだ。しかしガブリエルはトレバーが生まれたことを知らないままだった。

ここで1作目の重大なネタバレを書くが…これは既に宿命の魔鏡の公式サイトにも書いてあるのでネタバレでもないのだが…ガブリエル・ベルモンド自身が後のドラキュラである。
LoSシリーズ、このネタバレがないと話ができん。

そして『宿命の魔鏡』の最初の主人公はトレバーの息子のシモン。トレバーの時代は既に過ぎ去っている。
やがてゲームを進めると第2の主人公である吸血鬼アルカードが現れる。
このアルカードとは誰で、ドラキュラとの関係は…?

これは公式サイトでは記述を回避しているのだが、ゲームのかなり終盤で真相が明かされる。
実は第3の主人公であるトレバーがドラキュラに敗れ、吸血鬼にされたのがアルカードだ。
だからLoSアルカードは大幅な設定変更がされたが、原典と同じくドラキュラの息子なのだ。『宿命の魔鏡』は、ほとんどアルカードの素性を語る物語みたいなもんで、これを説明するとだいたい終わってしまう。

※↑だけネタバレを伏字にしておいたが、以下は伏字を全く使わない。ただしロードオブシャドウ2の冒頭で説明される範囲までしかネタバレしていません。
言いたいのはネタバレを読む読まないにかかわらずロードオブシャドウ2をやってみてくださいということです。

そんなわけで新設定のアルカード、デザイン面では『月下』をベースにしているだけでなく、『闇の呪印』デザインの長髪のトレバー(ラルフ)もベースにしている。ラルフの色違いでアルカードになるというファミコンRPG的な発想があるのだ。その一方で、設定面では『悪魔城伝説』の設定と経緯が一致していることがわかる。
つまりアルカードは人間だったが、父ドラキュラによって吸血鬼にされた。そして吸血鬼にされたことで以前より強くドラキュラを憎んでいる。ここは全く同じだ。
ただし一つ旧設定で語っていなかった部分があり、アルカードを吸血鬼にした理由が明確にある。
それはドラキュラが誤って死なせた、名前も知らない息子を生き返らせるためだ。アルカードの名は棺に書いてあったので、偽名であるがドラキュラ自らが与えたものなのだろう。
アルカードもそういう事情を理解しているので、心にあるのは憎しみだけではない。
ここには『月下』以降にたびたび語ってきた、ドラキュラの行動の根底、愛がある。ロードオブシャドウでも愛がドラキュラの人間性を取り戻す鍵となっている。

以上のネタバレもロードオブシャドウ2の序盤にナレーションで全て語られてしまっているが、アルカードの正体にもう一つ意味がある。
トレバーの息子シモンは、アルカードの息子でもあるのだ。

別の記事に書いた通り、悪魔城正史側では漆黒たる前奏曲の周辺でラルフがアルカードの息子だという説が一度発生したが、それは悪魔城伝説でのラルフとアルカードのやり取りを合わせると非常に無理があるものだった。だから否定するしかなかった。
しかしパラレルなLoSアルカードについてはその問題はない。彼とシモンの関係、まず間違いなく『漆黒たる前奏曲』を踏まえた上で設定されたものである。
吸血鬼となったアルカードは成長した息子と再会し何を思うか、そこについて漆黒たる前奏曲では無責任であったが、LoSではそこを拾う前提で話を作っている。
すなわちトレバーではなくシモンのほうが原典のラルフに対応しているのだ。『宿命の魔鏡』はアルカードとその息子シモンの物語である。
そしてシモン以降の全てのベルモンドがドラキュラの子孫であり、アルカードの子孫でもあることになる。
漆黒たる前奏曲』では無責任に作られた設定を投げ捨てることなく、リブートにより改めて解釈されなおしているのである。
ただしシモンもトレバーが人間だった頃の息子であり、ベルモンドに吸血鬼の血は関わらない。そこは過去シリーズが守ってきた通り。
ドラキュラは吸血鬼だから強いし、ベルモンドは人間だけど強い。

小島プロの話とか

1作目『ロードオブシャドウ』をやればドラキュラの正体はエンディングで判明するが、勢いでスルーされているが根本的にどうしてドラキュラが生まれたのかの説明が不足している。これはロードオブシャドウ2でも作中の文書でサラッと書いてるだけなのだが、
実はドラキュラは本編で語られた壮大な物語ではなく、続きのDLC部分で最強の吸血鬼になったのである。
だがそのDLCは日本で配信されてない。待てや。
日本ではあまり売れなかったロードオブシャドウだが、これは厳しすぎる。
ただ厳しいだけではない。あまり売れないことがわかりきっていたロードオブシャドウ2DLCは問題なく出ているのだ。何が違うのか?

ロードオブシャドウ1の日本版は吹き替え(音声切り替えなし)だが、宿命の魔鏡と2はあからさまに作業量を削った英語音声だ。
つまり字幕ならできたところが、追加で吹き替え翻訳する予算やスケジュールがなかったから1のDLCを出せなかったのでは…

1は吹替を小島プロダクションが手掛けていたのだが、小島プロが抜けてからもローカライズの質自体は高く感じる。クレジットによるとBob Timbello(ボブ・テンバロー)という人が中心で手掛けてるようなのだが、どうやら日本でハドソンなどに所属し、国内でも多くのゲームに多く関わってきた実績あるゲームクリエイターらしい。

あと個人的にはメタルギア声優で固めた1作目の吹き替え、基本的には合ってたと思うが、たまに違和感を抱いたのは確かである。特に小島秀夫本人が演じているチュパカブラ。日本版はなぜか関西弁の小島秀夫ボイスチェンジャーをかけた声になっているのだが、本来はかん高い男の声であり、2の字幕では関西弁でもなくなっている。
こいつ2では割と大きめの役回りなんだけど、そもそも1の時点で小島秀夫の適当な声でやっていいキャラではなかった気がする
そして宿命の魔鏡からは小島プロダクション自体が制作から外れており、どうも予算だけが理由ではないような…
なんか1だけPSnowに対応してないのは小島プロダクション関係のしがらみがあるんだろうか。

根本的な話

リブート版ベルモンドの驚異的身体能力の根拠は開祖ガブリエルが最初から怪物だったことに由来しており、その強さの理由は結局なんなんだよ!という科学的な説明は不足している。多少血筋が特殊みたいな匂わせはあるものの。
これはリブート前のベルモンド初代の物語である『キャッスルヴァニア』も同じである。ベルモンドはベルモンドだから強いんだ。むしろ意識して同じにしている可能性が高い。
ロードオブシャドウはリブートシリーズにもかかわらず、リブート前のネタを拾いすぎて混沌の産物と化しており、原作を知っているとわかるネタがかなりある。
普通のプレイヤーはリブート前を知らなくても楽しめるはずだが、やっておいたほうがそこをリブートしたんだなというのがよくわかるようにもなっている。特に『キャッスルヴァニアPS2のオマージュは非常に多いため先にやっておいたほうが楽しめる…いやそれを言い出すとどんどんプレイするハードルが高くなっていくぞ。
でもリナルド・ガンドルフィー(日本版LoSでは「ガンドルフィ」)とヴァルター・ベルンハルトについては、本人たちは出てこないのに話の中枢に食い込みすぎなのでリナルドのファンはロードオブシャドウも頑張ってプレイしてほしい。

補足いろいろ


ゴッド・モードの詳細な出し方について。

タイトル画面後、オートセーブの説明後、ドラキュラかアルカードが本を眺めてる画面。ここでコナミコマンド
PS3なら上上下下左右左右×〇。成功すると最後の〇を押したところでドラキュラ(アルカード)がウインクしてゲームが進む。あとはエクストラにチートが追加されている。ゴッドモードは無敵になるがセーブできなくなる。
ロードオブシャドウ1のチートについては解説してるサイトもあるが(ファミ通の記事にもコマンドだけ書いてある)、2に関しては日本語で解説してるサイトがさっぱり見つからない。

ちょっと書いたPS Nowについて。
『宿命の魔鏡HD』『2』はPS Nowでも配信されているが、アルカードが主人公になる『2』のDLCが遊べないので注意。このDLCは本編と直接関係するエピソードだがクリア後のプレイ推奨となっており、やらなくても本編の理解に影響はない&セーブデータも独立しているので、PS NowでやったあとでソフトとDLCを購入しても時間的なロスはないだろうが。

初回特典コードについて。
別の記事に書いたが、PS3のストアの挙動が昨年からおかしくなっており、購入はできるが購入ボタンが見えないなど不具合が起きている。
コードの入力もおかしくなっており、錬金のルーンのコードをPS3上で入力したところ、引き換え後にダウンロードが始まらず移動不可能の画面に閉じ込められ、電源を切るしかなくなった。
コードは通っており、そこから再ダウンロードは普通にできた。でも怖い。
PS3用のコードでも有効期限がないものならまだ使えることがわかったが、PCなどから入力できるかは不明である。